LOVE'S PHILOSOPHY  お子様編 

           お父さんのお仕事

       

 

 

   「おはよー・・・・・・ッス・・・?」
   その日の朝、出勤したハボック大尉は、トレードマークの
   咥えタバコをポロリと落とした事すら、自分で気づかないくらいに、
   驚きのあまり、あんぐりと口を開けた。
   「俺、まだ夢、見てんのか・・・・?」
   ぐるりと仕事場を見回すと、何故か所狭しと軍人達が忙しく動き回っている。
   何か大事件かとも思ったが、どうも雰囲気が違う。
   そして、中でも一番信じられないのは、普段サボル事しか考えない自分の上司である、
   ロイ・マスタング中将が、率先して仕事をしている姿である。
   「わかった。それで大通りの方は?そうか。巡回を怠るな。」
   ロイは受話器を置くと、目の前を横切るヒューズ少将に、声をかける。
   「ヒューズ、その男は?」
   「ああ、この間のテロの首謀者だ。これから取り調べる。」
   ヒューズはニヤリと笑う。
   「悪い事をした人間は、絶対に許してはならん!!」
   真剣な表情のロイに、ヒューズは敬礼して応える。
   「正義の名にかけて!」
   その言葉に、満足そうに頷くと、ロイは椅子から立ち上がり、部下達に
   激を飛ばす。
   「みんな!街は事件で溢れている。出動準備をして待機せよ!」
   「イエッサー!!」
   その、本来ならばありえないくらいの、みんなのやる気に、茫然と佇む
   ことしか出来ないハボックに、ブレタ大尉が後ろから声をかける。
   「夢じゃねーよ。あれ見な。」
   こっそりと耳打ちされて、ブレタが指差す方をゆっくりと見ると、
   珍しくスカート姿のリザ・ホークアイ中佐が、大勢の子供達の前で、
   にこやかに話しかけていた。
   「みんなのお父さんは、いつもこうして、お仕事を頑張っているのよ。」
   「ふーん。」
   「あれ、もしかして、みんなのお子さん達・・・?」
   子どもの集団の中で、良く見知った顔を見つけ、ハボックは
   ブレタに聞き返す。何でここにみんなの子どもがいるのか、ホークアイの言葉に
   感心している子供達を、訳が分からず眺めているハボックに、ブレタは
   ニヤニヤと笑いながら、事の顛末を説明する。
   「大総統のご命令だ。子供達に普段の父親の様子を見せるようにとさ。
   まぁ、社会科見学って事だな。」
   「普段の様子・・・?」
   ハボックはもう一度部屋の中を見回す。
   「日頃と全然違うじゃねーか。とくに、中将。」
   今までで、これほど仕事を真面目に取り込んでいる姿を見たことがない。
   と、言うより初めてではないのか?お子様の力は偉大だと、
   ハボックが感心していると、ホークアイはにっこりと微笑む。
   「みんな、お父さんの仕事分かったかな?」
   「「「「「ハーイ!!!!」」」」」
   元気良く返事をする子供達に、ハボックは内心ツッコミを入れる。
   ”いや!絶対に違うから!!”
   げんなりしているハボックの心を知らずに、子供達は元気一杯に
   父親を激励する。
   「パパー!お仕事頑張ってー!!」
   「エリシアちゅわ〜ん!パパ、頑張るよ!!」
   ニコニコと愛娘エリシアに手を振られ、ヒューズは、両手で投げキッスを
   盛大に贈る。
   「パパ〜。カッコイイ〜。大好き〜。」
   「パパ、カッコイイ〜!!
   ロイの愛娘、フェリシアが、可愛い手を叩く傍で、ロイの愛息レオンも、
   キャラキャラと笑いながら、両手でロイに手を振る。
   「フェリシア!レオン!!」
   本当は人目を気にせず、二人を抱き締めたいのを、ぐっと堪えて、
   ロイはにこやかに手を振り返す。
   ”あ〜あ、見てられないねぇ・・・・。”
   可愛い我が子に、手を振られ、父親達は、やに下がった顔で、一斉に
   手を振り返す姿は、軍人とは名ばかりの、ただのオヤジである。
   ”軍の威厳ゼロ・・・・。”
   自分も、子どもを持てば、こうなるのかねぇ・・・と、チラリと横目で、
   子供達にニコニコと微笑んでいる、ホークアイ中佐を見つめる。
   最近、漸く恋人と呼べるまでになった、愛しい人との間に生まれる
   であろう、まだ見ぬ我が子に、ハボックは想いを馳せ、ほんわかと
   ニヤける。
   「どうかしたか?ハボック。」
   「な・・なんでもない・・・。」
   不審そうな顔をするブレタに、ハボックは慌てて咳払いをする。
   「それでは、次はブラックハヤテ号と一緒に、射撃訓練を見に行きましょう!」
   「「「「ハーイ」」」」」
   ブラックハヤテ号を先頭に、子供達の一団が部屋を出て行く。その後姿を
   ニコニコと見送っていた父親達は、その姿が見えなくなった途端、
   急にいつもどおりの、ダラダラとした姿を見せ始める。
   「あぁ。疲れた。」
   ドッカリと椅子に腰を降ろすヒューズに、ロイも苦笑する。
   「普段やりなれない事をしたからな。」
   「た・・・大変です〜!!ダブリス行きの列車が、トレインジャックされました〜。」
   そんな時、慌てて部屋に駆け込んできたのは、フュリー少尉だった。
   その言葉に、一瞬ロイとヒューズは顔を見合わせると、超やる気のない顔で、
   フュリーに言う。
   「どうせ、あと数時間もすれば南方司令部の管轄だ。何も無理してコチラから
   兵を送ることもないだろう。」
   「そうだな。少し、様子を見るか・・・・。それは、そうと、今日のエリシアちゃんの
   可愛かったこと!!まさに、天使降臨?」
   「フッ。それを言うのならば、私のフェリシアとレオンの方が、数百万倍も
   愛らしい。まぁ、当然だな。私とエディの子供たちなのだから。」
   等と、一触即発の親バカトークバトルを繰り広げるロイとヒューズに、ハボックは
   内心、オイオイとウンザリしながら、腕を組むと、隣にいるブレタに声をかける。
   「ブレタ君。悪い事をした人間を、絶対に許してはならん!」
   対するブレタも、ハボックに合わせて敬礼をしながら、先程のヒューズの口調を
   真似る。
   「正義の名にかけて。」
   ハボックは深く溜息をつくと、ロイとヒューズに向かってニヤリと笑う。
   「んじゃ、処理に行ってきます。お・と・う・さ・ん!」










    「今日、仕事大変だったって?」
    昼間、初めて父親の仕事振りを見たせいか、興奮して中々寝付けないで
    いた二人の子供達を何とか寝かしつけて、エドが一階の居間に戻ると、
    ロイがブランデーを片手にソファーで寛いでいた。
    「パパ、すごくカッコよかったって。」
    先程まで、興奮状態で父親の仕事振りを、身振り手振りで話す子供達の
    様子に、ニコニコと相槌を打ちながら、エドは内心爆笑するのを堪えていた。
    「普段は無能なのにね・・・・・。」
    ロイの背中から抱きつきながら、エドはクスクス笑う。
    「無能はヒドイね。私はいつでも有能だよ?」
    苦笑するロイに、エドは堪えきれずに爆笑する。
    「何言ってるんだよ。ホークアイ中佐から聞いて、ちゃんと知っているんだぞ。
    子供達の前でしか仕事をしなかったって。それに・・・・。」
    エドはロイに抱きついていた腕を離すと、ゆっくりとロイの前に
    歩いていくと、ストンとロイの膝の上に横座りする。
    「俺、散々ロイの仕事振りを見て知ってるもん!」
    クスクス笑うエドに、ロイは溜息をつく。
    「エディ・・・・。いつの世にも、父親という者は、子供達の前では、
    常にカッコよくありたいものなのだよ。」
    「でもさ・・・・。俺と子供達は、ロイが仕事を出来るから、好き
    なんじゃないぞ?ロイがロイだから好きなんだからな!」
    真っ赤な顔で言うエドに、ロイは一瞬呆気に取られた顔をしたが、
    次の瞬間、幸せそうな顔をして、エドの唇を貪る様に、深く口付ける。
    「愛している。エディ・・・・・。」
    「んっ・・・・はっ・・・・。」
    散々エドの唇を堪能したロイは、名残惜しげに唇を離すと、エドは
    トロンとした顔で見上げると、ニコっと笑う。
    「やっぱ、ロイってカッコイイ・・・・・。」
    「ありがとう。エディ。エディも美しいよ・・・・。」
    再び口付けようとするが、ふと表情を翳らすエドに、ロイは眉を潜める。
    「どうした?エディ?」
    「ロイがもっとカッコ悪ければ良かったのに・・・・・。そうすれば・・・・。」
    「エディ・・・・?何かあったのかい?」
    心配そうなロイの顔に気づき、エドは慌てて首を横に振る。
    「なんでもない!!」
    あくまでも、なんでもないと主張するエドに、ロイは言い逃れを許さないと
    ばかりに、きつい眼をエドに向ける。
    「エディ。私は誤魔化されないよ。何があったんだい?」
    努めて優しく尋ねても、エドは首を横にしか振らない。そんなエドに、
    ロイは溜息をつくと、諭すように、エドを抱き締めながら耳元で囁く。
    「結婚前に誓っただろう?隠し事をしないと。私はいつでも君の不安を
    受け止めると。その言葉は、信じてくれていないのかね?」
    悲しそうなロイに、エドは一瞬躊躇するが、やがて
    「俺を嫌わないで」
    と前置きをすると、ポツリと話し始めた。
    「えっとさ・・・・。さっきホークアイ中佐から聞いたんだけど、子供達が
    家に帰ってから、お母さん達の反響が凄かったらしいんだ・・・・・。」
    その言葉に、ロイは、ああと、頷く。
    「そうらしいな。自分達も夫の仕事振りを見たいとかで、来月子供と
    一緒に母親も参加できるようにするとか、なんとか・・・・・。」
    終業間近だったので、家に帰る事しか頭にないロイは、ホークアイの
    報告を半分上の空で聞いていた。だが、これと言って、エドの機嫌が
    損なう内容だったとも思えなかったロイは、エドに話の続きを促す。
    「・・・それで・・・・見学が終わった後、お母さん達、普段の夫の
    仕事振りを上司の口から聞きたいって・・・。ロイとお茶会を開き
    たいって・・・・・・・。」
    だんだんと小声で呟きながら、エドは瞳に涙を一杯溜めて、ロイに
    しがみ付く。
    「お仕事だって、俺だってわかっている!上官として、部下の奥さん
    達の相手をしなければならないってことくらい・・・・。でも・・・でも・・・。
    ロイが・・・他の女の人達と・・・・・。」
    エドは溜まらず泣き出す。結婚前から、ロイがかなりの女性にモテて
    おり、その人気が、結婚6年目の今現在でも、全く衰えていない事も
    知っている。夕方、電話口でホークアイから聞いた、ロイとのお茶会を
    強固に主張している人間の名前に、エドは心当たりがあった。
    ロイファンクラブの会長とその取り巻きの名前に、エドは目の前が
    真っ暗になるのを感じた。
    普段の、ロイがいない所での彼女達の嫌がらせには、エドは余裕さえ
    見せる態度で受け流してきた。伊達に最年少記録保持者の国家錬金
    術師ではないのだ。その姿は、女王然とした、凛々しさに満ち溢れていた。
    だが、自分の目の前でロイに媚びる彼女達の姿に、エドは自分を
    押さえる自信がない。きっとみっともなく取り乱す。そうなれば、
    相手の思うツボだし、何よりもそんな自分を見て、ロイが何と思うか。
    それが原因で、ロイの出世が遅れたらと思うと、エドは中々泣き止む
    事が出来ない。
    「ご・・・ごめん・・な・・・さ・・・い・・・。我侭・・・っ・・・・。」
    泣きながら謝るエドに、ロイは嬉しそうに微笑むと、きつくエドを抱き締めた。
    「嬉しいよ。エディ・・・・・。嫉妬してくれるほど、私を愛してくれているのだね。」
    「/////////////」
    嬉々として自分を抱き締めるロイに、エドは真っ赤になって俯く。
    そんなエドに、ロイは安心させるように微笑むと、軽く唇を重ねる。
    「安心しなさい。その日は、私は非番だよ。」
    「えっ!でも・・・・・。」
    困惑するエドに、ロイはニッコリと微笑むかける。
    「その日から三日間私は有給を取っている。忘れたのかい?私達の
    結婚記念日だよ。」
    「あっ!!」
    口に手を当てて驚くエドに、ロイは苦笑すると、涙を流しているエドの
    瞳を、舌で拭う。
    「・・・でもさ・・・。お茶会どうなっちゃうの・・・・?」
    上目遣いでロイを見るエドに、ロイは安心させるように微笑む。
    「大総統が執り行うそうだよ。」
    「えっ!大総統のお茶会!!」
    思ってもみなかった、人物の名前に、今度はエドが眼をキラキラさせて
    喜ぶ。
    「いいなぁ〜。俺も大総統とお茶会したい!そうだ!今からでも申請
    間に合うかなぁ!」
    一応、保留しておいたのだ。そうと決まればさっさと連絡をしようとばかりに、
    嬉々としてロイの膝から飛び降りて、電話をかけようと、踵を返すエドの
    身体は、次の瞬間宙に浮いて、再びロイの膝の上へと戻される。
    「ロイ〜。」
    「駄目だよ。奥さん。その日は私と一緒にいるんだ。」
    不機嫌なロイに、エドは困ったように首を傾げる。
    「だって〜。子供達も喜ぶよ?」
    「エディ・・・・・。折角の結婚記念日なんだよ。私は家族と過ごそうと、
    この3ヶ月、頑張って働いたんだ。」
    そんな私を置いて、君達は大総統とお茶を飲むのかい?
    その言葉に、エドはウッと言葉を詰まらせる。
    「それに、私は家族旅行を計画しているんだよ?」
    「えっ!旅行!!」
    驚くエドに、ロイは優しい眼で頷く。
    「ああ。ここ暫く、家族サービスをしていなかったしね。」
    それでも、大総統のお茶会へ行くのかい?と拗ねるロイに、
    エドは嬉しさのあまり、ロイに抱きつく。
    「ロイ!ありがとう!大好き!!」
    「愛しているよ。エディ。」
    ロイは機嫌が直ったエドに、帰り間際の事を思い出し、内心ほくそ笑む。
    お茶会の話には、そういう裏があることが、知らなかったが、母親も
    参加できる見学という話には、猛然と抗議していたロイだった。
    ロイの奥様は、二人の子供がいるとは思えないほど、とても美しく、可憐だ。
    そのお陰で、軍の中には、エドを狙う害虫がウヨウヨしていることを、
    ロイは熟知していた。特に、エドと年が近い者など、巡回と称して、
    半ばストーカーのごとく、エドの周辺をウロウロしていることも。
    勿論、そんな害虫には、ロイとホークアイが、怒りの害虫駆除を
    行っているが、数が半端ではない。そんな害虫の視線に、
    最愛の妻が晒されると思うだけで、ロイは軍全体を壊滅したくなる
    衝動に駆られる。
    「ご安心を。中将の休日の日に、見学を設定しましたので。」
    怒り狂うロイに、有能補佐官、リザ・ホークアイ中佐が、悪魔の笑みを
    浮かべながら、にっこりと微笑んだ。
    「そうか。ご苦労だったな。中佐。」
    「いいえ。大したことではありません。フフフ・・・・。」
    ロイは知らないが、この機に乗じて、ホークアイはエドを苛める人間に
    制裁を加える気満々のようで、上機嫌で報告を続ける。
    「それから、ご自分の夫の仕事振りを上官からお聞きしたいと、数人の
    奥様達からお茶会を希望されまして、大総統が執り行うそうです。」
    「ほう?大総統が?エディも行きたいと、言い出しかねない。その事は、
    エディには、伏せておくように。では、私は失礼するよ。」
    ロイは素早く帰り支度を終えると、終業ベルと同時に、執務室を飛び出して
    いく。
    「・・・・・・・もう連絡してしまいましたが・・・・・。まぁ、大総統のお茶会とは
    言っていませんから、いいでしょう。」
    既に豆粒ほど小さくなっていくロイの後姿に、ホークアイは溜息をつく。
    実際、最初はロイがお茶会を執り行うはずだったが、連絡をした際の
    エドの様子がおかしかった為、無理矢理問い詰めた所、ロイファンクラブという、
    存在があり、その会長と取り巻きが今回のロイとのお茶会の首謀者で
    あることが判明したのだった。それに、多くは語らないが、その人物達に、
    エドが相当な嫌がらせを受けていた事実に、ホークアイは茫然となる。
    「仕事だもん・・・な・・・・・・。」
    悲しそうに呟くエドに、ホークアイの怒りが爆発する。
    ”私のエドワードちゃんに・・・・許さない!!”
    「大丈夫よ!エドワードちゃんは心配しないでね!!」
    ホークアイは慌てて電話を切ると、エドワードを特に可愛がっている、
    キング・ブラッドレイ大総統へと直訴に行く。そこで、見学の日程は
    ロイ達の結婚記念日に変更し、お茶会も表向きはロイのままで、
    実際は大総統が執り行う事とした。
    「さて、そろそろ大総統と打ち合わせの時間だわ。」
    どうやって、彼女達に、報復しようかしら。今までの分、念入りに行わなくては
    と、ホークアイは、フフフフと黒い笑みを浮かべながら、足取りを軽く、
    大総統執務室へと向かった。






    「君達には、軍人の妻としての自覚がないのかね?そこへいくと、
    マスタング中将夫人は・・・・・。」
    ロイとお茶が出来ると、嬉々として派手に着飾ってきた奥様達を
    出迎えたキング・ブラッドレイ大総統は、初めは、にこやかに対応して
    いたのだが、彼女達が自分の夫をかなり蔑ろにしている事実をさり気なく
    白状させると、彼女達を叱咤した後、いかにエドが、マスタング中将を
    陰ながら支えている素晴らしい女性であり、そんな彼女を
    自分も特に眼をかけていることを力説した。
    要約すれば、大総統のお気に入りを苛めると、自分達に
    その報いが数十倍になって跳ね返ってくるぞという、エゲツない脅しで
    あるのだが、まさか軍のトップが現われるとは思っていなかった奥様
    達は、それだけで萎縮してしまい、早々にお茶会は終了した。





    「パパ〜。ママ〜。早く〜。」
    「早く〜。」
    「走って、転ぶなよ。」
    その頃、マスタングファミリーは、家族旅行を思う存分に堪能していた。
    幼子達がはしゃいでいる姿を、幸せそうに眺めていたエドは、傍らに
    いる最愛の夫を仰ぎ見る。
    「ロイ。ありがとう。」
    そっと左手をロイの右手に絡ませると、エドはニッコリと微笑んだ。
    「愛しているよ。エディ。」
    ロイは絡まったエドの左手をそのまま口元に持っていくと、
    愛しそうに薬指に嵌められている結婚指輪に口付ける。
    「これからも、宜しく。奥さん。」
    エドは照れたように微笑んでいると、遠くから、子供達の声が聞こえてくる。
    「パパ〜。」
    「ママ〜。」
    「今行くよ。さぁ、エディ。」
    ロイは子供達に手を振ると、ゆっくりとエドの手を引きながら、子供達の元へと
    歩き出した。
     
    

 

 

  

 

 

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お子様編を書く事に決めた時、どうしても書きたかった、『踊る〜』ネタです。
最初は、踊るネタだけで終わらせようとしたのですが、書いているうちに、
止まらなくなってしまいました。6年たっても、相変わらずの万年新婚夫婦です。