ここから先は、ギャグです。
ロイがすごく壊れています。無能です。
それでもOKな方のみ、お読み下さい。
ここ、中央司令部では、朝から重苦しい雰囲気が
漂っていた。
「?どうかしたのかな?」
ロイに用事があって、司令部に訪れたアルフォンスは、
ピリピリとした空気に、首を傾げる。
「どこかで事件でもあったのかな?
じゃあ、出直した方がいいかなぁ・・・・・。」
困ったように、その場に立ち尽くすアルフォンスだったが、
取りあえず、様子をみようと、歩き出そうとした時、背後から
声がかかる。
「アル?どうした?いつこっちに?」
後ろを振り向くと、少し青ざめたハボック中尉が、乾いた笑みを
浮かべながら、近づいてきた。
「あっ、ハボック中尉、お久し振りです。」
ペコリとお辞儀をするアルの頭を、ハボックはワシャワシャと
掻き回す。
「ところで、何か事件でも?」
ハボックの手から何とか逃れたアルフォンスは、髪を整えながら、
疑問に思っていた事を尋ねる。それに対して、ハボックは、
歯切れの悪い口調で、あーとかうーと言いながら、溜息をつく。
「まぁ・・・その・・・・事件って言えば、事件だがな・・・・・。
准将がなぁ・・・・・・。」
「ロイ義兄さんが?」
途端、嫌な予感がして、アルは回れ右をしようとするが、その前に、
ハボックがアルの襟首を掴む。
「とにかく、来てくれ。」
有無を言わさずハボックがアルを連行していった場所は中庭で、
大勢の人だかりがあった。その人達は、全員建物を見上げており、
何か騒いでいる。
「もしかして!飛び降り自殺!?」
青くなるアルフォンスに、ハボックは疲れたように、首を横に振ると、
ある一点を指差す。
「あれ。見てみろ。」
ハボックの指差すほうを見ると、垂れ幕がかかっており、
【男女差別反対!!】
【男にも育児休暇を!!】
【要求が通るまでは、ストライキを決行する!!】
そして、極め付けが、垂れ幕一つ一つに書かれた、
焔の錬成陣。日差しを受けて、キラリとサラマンダーが光っている。
「もしかして・・・あれ・・・・・。」
アルが恐る恐る尋ねると、ハボックはげんなりとして頷く。
「そう。准将。」
二人は、お互い顔を見合わせると、深い溜息をついた。
「俺、付いていく人、間違えたのかも・・・・・。」
ハボックの言葉に、アルは不服そうに言う。
「ハボック中尉はいいですよ。いよいよとなったら、転属届出も
なんでも出して、ロイ義兄さんと縁が切れるから・・・・。
ボクなんて、親戚になっちゃったんですよ!?あぁ、姉さん、
もっと男を見る眼を養って欲しかったよ・・・・・。」
己の不幸を再認識した二人は、再び深い溜息をついた。
「准将!!あなたは、完全に包囲されています!
無駄な抵抗は止めて、大人しく仕事に戻ってください!!」
そんな中、ホークアイの声が響き渡る。
「うわぁ、ホークアイ大尉、メチャメチャ怒ってるなぁ。」
他人事ながら、ホークアイの怒りを感じて、アルは竦み上がる。
「こうしててもしゃーないな。ほら、アル行くぞ!!」
ハボックはアルの腕を取ると、人垣を掻き分け、最前列で
拡声器を持っているホークアイの元へ急ぐ。
「ホークアイ大尉・・・・・。」
「あら。アルフォンス君。お久し振り。いつ中央へ?」
アルの姿を見た途端、ホークアイの機嫌が上昇する。
ニコニコと微笑みながら、ホークアイはアルフォンスに
話しかける。
「あの・・今朝です。ところで、ボク准将に話があるんですが・・・・・。」
准将の言葉に、ホークアイのこめかみがピクリと動く。
「無能なら、朝早く来たと思ったら、執務室に立て篭もっているわ。」
「全く、准将にも困ったものだね。ハハハハ・・・・・。」
怒りに震えるホークアイの横では、双眼鏡片手に、面白がっている
キング・ブラッドレイ大総統が、ニコニコと笑いながら立っていた。
「何だって、今更育児休暇を願うんですかねぇ?」
垂れ幕を見ながら、不思議そうにハボックは首を傾げる。
確かに、フェリシアが生まれる前は、「何故、男にも育児休暇が
ないんだ!!」とさんざんごねていたが、子供が生まれて数ヶ月。
なんで今頃?と皆一様に首を傾げていた。
「あー、その事なんですが・・・・・・。」
事情を知る唯一のアルフォンスが、オズオズと口を開く。
「姉さん、第2子を身篭ったんです。」
その衝撃的な内容に、その場にいる人間は、絶叫した。
「なんだってぇえええ!この前生まれたばっかじゃん!早っ!!」
「この前、出産祝いを無理矢理出させられて、俺、もう金ねーよ!!」
「無計画すぎじゃんか?」
「いや!准将の年から言うと、焦ったんじゃねーか?」
「うわあ、エドワードさん。可哀想。あの年で二児の母?」
言いたい放題の周囲を、ホークアイは一瞥で黙らせると、拡声器を手に、
立て篭もっているロイに声をかける。
「マスタング准将。御懐妊おめでとうございます。」
すると、垂れ幕がかかっている直ぐ上の窓から、ロイが拡声器を
片手に顔を出す。
「ありがとう。ホークアイ大尉。そこで、私は主張する!男にも育児休暇を
希望する!!」
上機嫌のロイに、ホークアイは冷たく一言で斬って捨てる。
「無理です。」
「君には血も涙もないのかね!!まだまだ手のかかるフェリシアの世話を
しながら、エディはお腹の子にも、神経を使わなければならないのだぞ!
夫として、少しでも妻の負担を軽くしようと思うのは、当然の事だろう!!」
胸を張って主張するロイに、大総統は、「准将の言う事も一理ある」と、
フムフムと頷いていた。だが、ロイという人物を知り抜いているホークアイには、
通用しない。
「お言葉を返すようですが、准将がいなくても、大丈夫なのでは?
と、言うより、いない方が良いのでは・・・・・。」
「そんな訳あるかー!!」
怒り出すロイに、ホークアイは溜息をつく。
「では、具体的に、どのような事をするおつもりですか?」
「それは・・・・掃除とか・・・・。」
ロイの言葉に、周囲からブーイングが飛ぶ。
「マジかよ!?准将、掃除苦手じゃねーか。」
「ああ、この前、直接窓に水をかけて、後片付けが大変だったんだぞ!!」
ホークアイは醒めた声でロイに言う。
「准将、皆、このように申しておりますが・・・・。」
「うっ・・・うるさい!掃除が駄目なら、料理とか・・・・・。」
途端、更なるブーイングが飛ぶ。
「准将の料理って、あれ料理って言えるのかぁ!?」
「すんごいビミョーな味付けなんだよな。」
「あんなのをエドワードさんやフェリシアちゃんが食べさせられるのか?」
「断固阻止!!」
「絶対に反対!!」
「お腹の子供にも悪影響!!」
ブーイングの嵐に、切れたロイが怒鳴り散らす。
「うるさいぞ!お前達!!エディの精神的支えになるためにも、
私は断固として、育児休暇を勝ち取るまで、ストライキを続行する!!」
「あの・・・・その事なんですが・・・・・。」
いつの間に練成したのか、アルフォンスはマイクを片手に、控え目に
会話に加わる。
「おお!アルフォンス君。君なら分かってくれるね!!」
強力な助っ人になるであろう、義弟の登場に、ロイは嬉々として
アルに話しかける。
だが、アルは言いづらそうに、引きつった笑みを浮かべながら、
ロイにトドメを刺す。
「あの〜。姉さんが言うには〜、リゼンブールで子供を産むって
いう事なんですけど・・・・・。」
その言葉に、ロイは窓から身を乗り出さんばかりに、絶叫する。
「そんな事、聞いてないぞ!!」
「義兄さんに言ったら、絶対に反対されるからって、もうすっかり
荷造りしてましたけど?今頃フェリシアと、列車の中かと思います。
ボク、それを准将に言いに来たんです。」
テヘッと笑うアルとは対照的に、まるでこの世の終わりのような顔で、
ロイは絶叫する。
「そんな!エディ!フェリシア!!ホークアイ大尉、上官命令だ!
直ぐにリゼンブール行きの列車を止めろ!!」
「無茶な事言わないで下さい!准将!!」
呆れるホークアイに、アルはペコリとお辞儀をする。
「それじゃあ、ボクは用事も済んだので、帰りますね〜。
そうそう、姉さんから准将に伝言です。」
「何!エディから!?」
最愛の妻の伝言と聞いて、ロイは気分を浮上させる。アルはゴソゴソと
ポケットから一枚の折りたたまれた紙を取り出すと、広げて読み始める。
「えっと・・・【ロイへ。俺はリゼンブールで、ロイとの子供が無事生まれるように、
頑張るからな!だから、ロイもお仕事を頑張ってくれ。どんなに遠く離れていても、
心は傍にいるから。 エドワード・マスタング】以上で〜す。あっ、この前撮った、
姉さんとフェリシアの写真も預かってますから、ホークアイ大尉に預けておきますね。
それでは、ボクはリゼンブールに帰ります。お仕事頑張って下さい〜。」
言うだけ言うと、これ以上係わり合いになりたくないとばかりに、手紙と写真を
ホークアイに渡すと、アルは脇目も振らずに、全力疾走でその場を駆け去る。
その逃げ足の速さは、オリンピックで余裕で金メダルを取れるだろう。
「ああ!!アルフォンス君!!待ちたまえ!!せめて手紙を直接私に!!」
慌ててアルを引きとめようとするロイだったが、時既に遅く、手紙を受け取った
ホークアイは悪魔の笑みを浮かべて、ロイに最後の通達をする。
「さぁ、准将。この手紙が欲しいのならば、溜めている書類を全て
処理して下さい。いいですね!!」
「・・・・・はい・・・・・。」
スゴスゴと仕事に戻るロイに、大総統は、満足気に頷いた。
「うんうん。お互いを思いやる姿は美しい。究極の夫婦愛だな。さて、
私も愛する妻の元へ帰るとするか。ハハハハ・・・・。」
笑いながら去る大総統の後ろを、仕事してください〜と、秘書官が
泣きながら追いかけていく。
こうして、ロイ・マスタング准将によるストライキは、数時間で
強制的に終わりを告げた。
「くそ〜!!必ず大総統になって、育児休暇を認めさせてやる!!」
ロイは書類を握り締めながら、絶対に大総統になる!と、決意を
新たにさせるのだった。
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エド子第二子懐妊秘話です。ところで、大総統になってからでは、
遅いのでは?という根本的な事が分かっていない、おバカな
うちのロイ・・・・・。これから、どんどん大総統になる理由が増えていきそうです。
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