「ああ・・・・。一週間なんて、あっと言う間だったわ・・・・。」
がっくりと肩を落とすソフィアに、フェリシアとレオンが心配そうな
顔で覗き込む。
「お祖母ちゃま、元気出して?また遊びに来てね?」
「待ってるから!!」
2人の言葉に、ソフィアは、泣きながら2人に頬擦りをする。
「ありがとう〜。また遊びに来るからね〜。」
「ごめんなさい。お義母さん。あまりゆっくり出来なくて・・・。」
しゅんと項垂れるエドに、ソフィアは慌てて涙を払う。
「そんな事はないわ!とっても充実した一週間だったわ。
ただ、あまりにも楽しすぎて、帰るのが辛いのよ・・・・。」
ソフィアは、ギュッとエドの手を握ると、じっと熱の篭った眼で
見つめた。
「ねぇ、このまま三人とも家に遊びに来ない?」
「え?でも・・・・・。」
困惑するエドの背後から、不機嫌な声は聞こえた。
「母さん。私のいないところで、エディと子供達を誘惑するのは、
止めていただきたいのですが。」
「ロイ!?」
勤務時間なのに、何故ロイがここにいるのかと、驚くエドに、
ロイはニッコリと微笑んだ。
「なに。時間が余ったから、見送ろうと思ってね。」
ロイはエドとは別の種類の笑みを浮かべると、ソフィアに
言った。
「そろそろ発車時刻ですね。ごきげんよう。さぁ、エディ。
フェリシア、レオン。家に帰ろう。」
どうやら、見送りと称して、家族と一緒にいようと仕事を抜け出して
きたらしい。その事に気づいたソフィアは負けじと、エドの手を
取る。ここは、ロイと喧嘩するよりも、さっさとエドと次の約束を
取り付けた方がいいと判断したのだ。
「エドワードちゃん、来月の・・・・・・。」
「母さん。出発の時刻ですよ。はい。これを持って。」
ロイはエドの手を無理矢理ソフィアから奪い取ると、代わりに
ソフィアのバックを押し付ける。
「さぁ、早く列車に乗って下さい。」
そのままトンと軽く押して、ソフィアを列車に乗せる。
「ちょ!!ロイ!!」
途端動き出した列車に、ソフィアは慌てる。だが、ロイは平然とした
顔で敬礼をしながらニヤリと笑う。
「では、気をつけてお帰り下さい。グッドラック!」
「覚えておきなさいよ〜ロイ〜!!」
遠ざかる列車から、ソフィアの声が、いつまでも響き渡っていた。
「中佐、このポスターは何ッスか?」
ロイの机の上に山と詰まれたポスターに、ハボックは興味深々と
ばかりに、ホークアイに尋ねる。
「この間の、中将とエドワードちゃんの結婚式の時の写真を
ポスターにしたみたいね。」
溜息をつくホークアイに、ハボックはポスターの一枚を広がて、
ゲッと唸った。
白いタキシードを着たロイが、ウエディング姿のエドをお姫様
抱っこしている写真だった。真っ赤な顔のエドが初々しい一品である。
「ポスターなんて作って、中将どうするつもりなんッスか?」
「何でも、今回の事件は、中将とエドワードちゃんが夫婦だと周りが
認識していないから起こったとか何とか言って、それを広める為にも
このポスターを司令部中に貼るって言い出したのよ。と言うのは
建前で、本当はエドワードちゃんの写真をいついかなる時でも
眺めていたいってところね。勿論、自慢を含めて。」
頭が痛いわと頭に手を当てるホークアイに、ハボックはウンザリした
顔をする。
「でも、こんなにエドが可愛いんじゃ、エドのところだけ盗難に
合うんじゃないですか?」
ハボックの言葉に、ホークアイが顔を上げる。
「盗難・・・・?そのアイディア貰ったわ!」
クククと笑うホークアイに、ハボックは余計な事を言ってしまったと
青くなったが、自分の命を守るために、賢明にも、それ以上口を
開く事はなかった。
「なに?盗難だと!?」
数日後、何食わぬ顔でホークアイはロイに報告する。
ロイの行動範囲以外の場所に貼られたポスターが盗まれたと。
勿論、盗んだのはホークアイだ。エドの写真の部分を
自分のコレクションに加え、ロイの部分を射撃場の的に
使っていたりする。ホークアイ曰く、こうすると、命中率が
グンとUPするらしい。
「なんてことだ・・・・。これ以上私のエディの写真を他の男共に
渡すつもりはない!!ホークアイ中佐、直ちに撤収だ!」
「イエッサー!!」
執務室を出て行くホークアイの後姿を見送ると、ロイは
引き出しの中から、一冊の手帳を取り出す。
「全く・・・どこの誰だ!!私とエディの愛の記録を盗んだ馬鹿者は!!
こうなったら、大総統になった暁には、【大総統の家族のポスターを
盗んだ者には、制裁を加える】も追加しておこう。ああ、それから
忘れるところだった。【大総統の家族に半径50メートル近づいては
ならない】も追加せねばな。」
フフフと黒い笑みを浮かべながら、ロイは手帳に書き記して
いくのだった。
FIN
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やっと【ぼくらの七日間戦争】が完結しました!
長い間、応援してくださいまして、本当にありがとうございました!