大佐の結婚・番外編

           ある意味幸せな結末

  

 

 


          それは、エドの一言から始まった。
          「俺、ロイと結婚する。」




          「な・・・なんだってぇえええええええ!!!」
          東方司令部の執務室に、アルの絶叫が響き渡る。
           「どうして!どうして!どうして!そんな話になったんだよ!!
          兄さん!!」
          泣きながら、アルはエドにしがみ付く。
          「アル・・・あのな・・・・。」
          困惑するエドは、救いを求めるように、傍らのロイに目を向けた。
          だが、ロイの顔を見た途端、ピキンと凍りつく。
          “ロ・・ロイ、メチャメチャ怒ってないか・・・?”
          不機嫌全開のロイと涙でグチョグチョのアルに挟まれ、
          エドは絶対絶命のピンチを迎える。
          “だ・・誰か〜。助けて〜。”
          エドの心の叫びが聞こえたのか、救いの神
          ホークアイが、手に大量の書類を持って、
          執務室に入ってきた。
          「失礼します。マスタング准将、急ぎこの書類を・・・・。あら?
          エドワード君、アルフォンス君は何故泣いているのかしら?」
          「ホ〜クアイ大尉〜。大尉は知ってたんですか〜。」
          グスグスと涙を流しながら、ホークアイに食って掛かる。
          「何をかしら?」
          ホークアイは首を傾げる。
          「准将と兄さんの結婚・・・・・。」
          「あぁ、その事。」
          あっさりと頷くホークアイに、アルは恨みがましい目を向ける。
          「どうして、止めてくれなかったんですかぁあああああ。」
          「どうして、止めなくてはいけないの?」
          逆にホークアイに切り返され、ウッとアルは言葉に詰まる。
          「アル、俺とロイの事、反対なの・・・・か・・・・?」
          目に涙を浮かべたエドに、今度は逆にアルが困惑してしまうことになる。
          昔から、アルはエドの涙にメチャメチャ弱かった。
          「っていうか・・・・同性同士で結婚て・・・・・。」
          「その事なら大丈夫よ。この前大総統の権限で、同性婚が認められたから。」
          良かったわねと言うホークアイに、アルはガクリと肩を落とす。
          「大総統、何を考えているんだ・・・・・。」
          アルは本気で大総統を一発殴ってやりたくなる。
          「ロイが、大総統に頼んでくれたんだ♪」
          嬉しそうに言うエドの言葉に、アルは自分の耳を疑った。
          「准将が・・・・?」
          “ちっくしょおおおお。先手を打たれた!!”
          アルは、ロイを睨み付ける。
          対するロイも、真っ向からアルの敵意を受け止める。
          ロイとアルの間に、激しい火花が散る。
          「アルフォンス君、別にすぐどうこうする訳ではないし、
          少しは落ち着いて、状況を見極めたら?」
          不毛な睨み合いに終止符を打つべく、
          ホークアイは口を開いたが、これまたエドの爆弾発言が、
          それを物の見事に粉砕する。
          「あっ、悪りぃ。悪りぃ。実は、さっき届を出したばっかりなんだ。」
          「と・・・届・・・?」
          出来れば自分の聞き違いであって欲しいという希望は、
          エドが嬉々として広げた証明書が、無残にも打ち砕かれた。
          「うん。これ、結婚証明書♪実は、俺達が第1号なんだってさ〜。
          ねっ、ロイ♪」
          「ああ。ところで、式は何時にしようか。なるべく早い方がいいな。」
          チラリとロイはアルに、勝ち誇った笑みを浮かべるが、目の前の事実が
          受け入れられないアルは、そんなロイの様子に構ってはいられなかった。
          「けっ・・・けっ・・・結婚証明って・・・・・。」
          滂沱の涙を流すアルに、エドはロイの腕に手を絡ませると、にっこりと
          微笑んだ。
          「こーゆーことは、早い方がいいって、ロイが。」
          「当たり前だろう。私は1分1秒でも早く君と一緒にいたいのだから。」
          「ロイ、フツツカモノだけど、宜しくな♪」
          「こちらこそだ。幸せになろう。エディ。」
          「ロイ・・・・・。」
          完全に二人だけの世界を築くロイとエドの姿に、すっかり固まったアルの肩を
          ポンポンとホークアイは叩く。
          「出してしまったものは、仕方ないわね。遅かれ早かれこうなるのですもの。
          エドワード君の幸せの為に、気持ち良く、祝福してあげましょう。ね?」
          「うううううう。折角生身の身体になって、兄さんと穏やかに
          暮らしたかったのに〜。」
          アルはフラフラとエドに近づくと、ロイから引き離し、ぎゅっと抱きつく。
          「絶対に嫌だ〜!!」
          本格的に泣き出したアルを宥めるのに、かなりの時間を要し、
          結局、しぶしぶアルが二人の仲を認めたのは、終業時間を大幅に過ぎた
          夜中で、さらにロイが残業をホークアイから言い渡されるというオマケがついた。



          「という訳で、僕もお世話になりますぅ〜。」
          数日後、未成年が1人で住むのは大変なんですぅ〜という尤らしい理由で、
          小姑アルが、マスタング家に襲撃するのは、また別のお話だったりする。






  
                                                  FIN