大佐の結婚生活シリーズ番外編

            東風と太陽

  




        駅は出会いと別れの場所。
        ホームでは、暫しの別れを惜しむ人で溢れていた。
        「東から風が吹いたら、私を思い出して欲しい。」
        そう言うと、ロイはエドを抱き締める腕に力を込める。
        「風?焔ではなく?」
        クスクスと笑うエドに、ロイはゆっくりとエドの顔を
        持ち上げると、そっと唇を重ね合わせた。
        「ああ。君が迷った時は、風が君の背を押しているように、
        君が寂しい時は、風が君を包み込むように、
        私の想いは風となり、いつでも、君の傍らにいると誓うよ。」
        にっこりと微笑むロイに、エドは真っ赤になりながら、
        馬鹿と小声で呟く。
        「何、恥ずかしい事言ってんだよ・・・・。」
        「おや?君への愛を言葉にしているだけだが?」
        これでも、まだ言い足りないくらいだ。
        そう耳元で囁くと、ロイは蕩けるような笑みを浮かべ、
        エドをますます赤くさせる。
        「じゃ・・じゃあ、俺は太陽!!」
        「太陽?」
        真っ赤になって叫ぶエドに、ロイは首を傾げる。
        太陽のごとき美しい黄金の瞳をロイに向けると、エドは大きく頷く。
        「そう!一日の始まりに太陽を見て、俺を思い出してよ。」
        一緒にはいられないけど、必ず東から太陽が昇るように、
        いつでも自分は東にいるロイの傍にいるからと、エドは
        真っ赤になって俯く。
        「エディ!!」
        そんな可愛い事を言うエドを、ロイは再び抱き締める。
        「必ず、戻るから・・・・。」
        「うん・・・・・。絶対だよ・・・・・。」
        ロイとエドはゆっくりと瞳を閉じると、唇を深く重ね合わせた。





















        「あの〜。ホークアイ大尉・・・・・。」
        一部始終を見ていたハボック中尉は、隣でロイに照準を合わせて
        銃を向けるホークアイに、恐る恐る声をかける。
        「何ですか。ハボック中尉。」
        不機嫌そのものの顔で、八つ当たりとばかりに顔だけをハボックに
        鋭い視線を向ける。
        「確か、准将が東方司令部へ出張する日数って・・・・・。」
        「二日間です。」
        ロイ1人ならば、二日と言わず、半年ほど出張させたいのだが、
        自分もロイについて行く為、一週間はかかる視察を無理矢理二日間に
        したホークアイだった。
        「たった二日間だってのに、何であそこまでしますかねぇ・・・・・。」
        たった5分間の間に、軽いのを含めてキスをした数、実に15回。
        その間、ずっと離れず二人は抱き締めあっている。
        別れを惜しむ人々の間にあって、彼らほど深く別れを惜しむカップルは
        いないだろうと思われるほど、二人の間には悲壮感すら漂っている。
        周りにいる人達もそんな二人の様子に、片方が軍人である事もあって、
        きっと永の別れを惜しんでの事と、勘違いしているのか、そっとハンカチで涙を
        拭っている老婦人の姿も見られる。
        (いや、たったの二日間だけだから。)
        そんな人達に、ハボックは心の中でツッコミを入れる。
        「そろそろ発車の時刻ね。ハボック中尉、准将を案内して下さい。」
        「俺がですか!!」
        銃に物を言わせて、二人を引き離せる唯一の人物ホークアイは、
        そんな事をすればエドに嫌われると、嫌な役目をハボックに押し付けようとする。
        大陸一の新婚馬鹿ップルを引き離す役目を押し付けられて、ハボックは
        焦って、ホークアイを見る。
        「勿論よ。」
        ニッコリと微笑むホークアイにハボックはガックリと肩を落とす。
        「では、お願いします。」
        そう言うと、さっさとホークアイは列車の中へと入っていく。
        「勘弁して下さいよ〜。」
        滂沱の涙を流しつつ、ハボックはゆっくりと二人に近づく。
        「愛している。エディ・・・・。」
        「俺もだよ。ロイ・・・・・・。」
        イチャつく馬鹿ップルにハボックは恐る恐る声をかける。
        「あの〜。お取り込み中、申し訳ないですけど・・・・・。」
        ハボック、消し炭まで、カウントダウンが始まった。




                                            FIN



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ありがちなネタです。でも、馬鹿ップルには、絶対に外せないネタだと思うので、
突発的に書きました。最初は、もっと悲壮感が漂うくらいに、シリアス調に
書こうと思ったのですが、大佐シリーズであるというだけで、馬鹿ップル話だと
バレてしまっているだろうということで、さらっと書き上げました。
きっと二日後に、再び駅で感動の再会を繰り広げていことでしょう。
ビバ!馬鹿ップル!この大佐シリーズは、何も考えないで書けるので、
結構書くのが好きだったりします。
でも、そろそろマンネリ化しつつありますね・・・・・。
ロイエド馬鹿ップルを極めようと、日夜努力しているのですが、
まだまだ修行が足りないと思う、今日この頃。
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                                   上杉茉璃