「なぁ、ロイ、俺さ・・・・ ずっとアンタに言おうと思ってたけど、 恐くて言えなかったことがあるんだ・・・・・。」 あまりにも、悲痛な決意を秘めたエドの表情に、 ロイは何かを見極めるかのように、じっとエドを見つめた。 バレンタインの告白から1ヶ月が経った。 直ぐにエドワードが賢者の石探索の旅に出てしまった為、 実質、出来たてほやほやの恋人達に、再び恋人達のイベントが 巡ってきた。 1ヶ月振りに会った、最愛の恋人の為に、ロイは 高級レストランでの食事を提案したのだが、 エドは、それをやんわりと断って、 ロイの家で二人きりで過ごしたいと、 頬を紅く染めながら、「駄目?」と 可愛らしく首を傾げる。 そんな恋人の可愛らしい姿に、 ロイが異を唱える訳もなく、 それどころか、これで次のステップに進めるとばかりに、 ロイが嬉々として、エドを浚うようにお持ち帰りした夜、 エドは、濡れた髪に、ただバスタオルを掛けた状態で、 ワイングラスを傾けているロイの待つベットルームへと、 足を向ける。 「ロイ〜。」 ヒョコッと、顔だけ覗かせているエドの可愛さに、 ロイは、そのままエドの身体を貪りたい衝動に駆られたが、 どことなく、悲しげな表情を浮かべるエドに気付き、 ロイは無け無しの理性を総動員させて、極めて 紳士的態度で、エドを部屋へと招き入れた。 「エディ。髪を乾かさないと、風邪を引くよ。」 「う・・うん。」 真っ赤な顔で俯きながら、エドはガシガシと乱暴に タオルで髪を拭き取る。そんなエドの様子に、 ロイは苦笑すると、エドをベットに腰掛けさせて、 自分もその隣りに腰を降ろすと、エドからタオルを 奪い取り、丁寧に髪を拭く。 「エディ。折角、綺麗な髪なのだから・・・・。」 呆れたようなロイの声に、エドの身体が、ピクリと 反応する。 「エディ・・・?」 俯くエドに、ロイは訝しげな声を上げる。 「どうかしたのかね?」 丁寧にエドの髪を拭きながら、ロイはエドを気遣うように、 優しく問い掛ける。 「なぁ、ロイ・・・・。」 「ん?」 丁度髪を拭き終り、ロイはバスタオルを畳んで横に置くと、 俯いたままのエドの顔を覗き込む。 「俺さ・・・・ ずっとアンタに言おうと思ってたけど、 恐くて言えなかったことがあるんだ・・・・・。」 あまりにも、悲痛な決意を秘めたエドの表情に、 ロイは何かを見極めるかのように、じっとエドを見つめた。 「何だね?」 ロイが言ってごらんと促せば、エドは躊躇いながら、 ポツリと呟いた。 「俺のこと・・・・・・好き・・・・?」 じっとロイの顔を心配そうに見上げるエドに、ロイは 安心させるように、優しく微笑むと、そっとエドの 身体を抱き締める。 「勿論、私は君を愛している。これまでも、これからも、 ずっと。」 1ヶ月前の私の告白を、まだ信じてくれていなかったのかね? というロイの言葉に、エドはさらに泣きそうな顔で尋ねる。 「例え、俺が魂だけの存在でも?鎧姿でも?」 「エ・・エディ・・・・・?」 矢継ぎ早のエドの言葉に、ロイは困惑する。 「一体、どうしたっていうのだね?落ち着いて話して みなさい。」 「・・・・・・母さんの練成に失敗して、俺は左足を、 弟のアルは、全身を喪った・・・・。」 エドは、ロイの肩に頭を乗せると、ポツリと呟いた。 ロイは、黙ってエドの言葉に耳を傾ける。 「俺は、直ぐに右腕と引き換えに、アルの魂を練成して、 鎧に魂を定着させた・・・・・。」 エドは、ギュッとロイの首に腕を回して しがみ付く。 「最近、思うんだ。もしも、アルと俺が逆だったら、 身体を喪ったのが俺の方だったら、 ロイの腕の中にいるのは、アルの方だったんじゃないかって・・・。」 その言葉に、ロイはギョッとすると、エドの身体を引き離して 顔を覗き込む。エドは、涙で濡れた顔を、ロイに見せたくなくて、 顔を背ける。そんなエドに、ロイは深い溜息をつくと 少し待っていなさいと呟いて、隣の書斎へと出て行く。 「ロ・・ロイ・・・?」 涙が止まらないエドは、ロイの行動に頭が付いていけず、 ぼんやりとした目で、ロイが消えたドアをぼんやりと 見つめる。直ぐにロイは一冊の手帳を手に戻ってくると 手帳を脇に置き、再びエドの横に座る。 「こっちを向きなさい。エディ。」 そう言うと、ロイはエドの両手を掴むと、エドの身体を自分の方へ 向かせる。 「私は、例え君が魂だけの存在だったとしても、君を愛するだろう。 なんせ、一目惚れだったのだからね。」 そう言うと、ロイは脇に置いた手帳の中から、一枚の古ぼけた写真を 取り出すと、エドに差し出す 「こ・・これはっ!!」 写真を見た瞬間、エドは驚いてロイの顔を見る。 「何で・・・これが・・・・・。」 写真には、魚を取って、得意満面の笑みを 浮かべる自分と、採れた魚を、嬉しそうに見ている アルという、まだ身体を喪う前の自分達の姿が 写っていた。てっきり、家を燃やした時に、 一緒に燃えたものとばかり思っていただけに、 意外な所で見る写真に、エドは、ロイの顔を 凝視する。 「君の家で、この写真を見て、どうしても私は 君に会いたかった。この、太陽のような輝きに、 私は一目で魅了されたのだ。」 ロイは、懐かしそうに、写真を見つめる。 「だが、直ぐに人体練成陣に気付き、 君が無事なのか、それだけが心配で ロックベルさんの家に駆け込んだ。」 ロイは、写真から目を離すと、苦しそうな顔で エドの顔を見つめながら、そっとエドの頬に触れる。 「ロックベル家で会った君は、死人の目をしていた・・・・。 私には、それが許せなかった・・・・。」 ロイの告白を、エドは大人しく聞く。 「だが、君は直ぐに私の言葉に、生きる希望を見出してくれた。 君の目に焔を灯したのが、自分だという事が嬉しかった。」 ロイは、そっとエドの身体を抱き締めた。 「エディ・・・・。それから、ずっと君を見てきた。 エドワード・エルリックが、どんな生き方をしてきたのか。 私は、例え君が鎧姿だったとしても、この想いだけは、 真実だと胸を張って言えるよ。 私は、エドワード・エルリックを愛している。」 「ロイ・・・・・。」 ポロポロと涙を流しながら、エドは嬉しさのあまり、 きつくロイに抱きつく。 「ごめんなさい。ごめんなさい。ロイ。」 一瞬でも、ロイの自分への愛を疑ってしまった事を、 エドは泣きながら謝罪する。 「・・・・不安だったんだ・・・・。」 一頻り泣いたエドは、ロイの胸に身体を預けながら、 ポツリと呟く。ロイは、そんなエドの髪を愛しそうに 梳きながら、エドの身体を抱き締める。 「ロイに告白されて嬉しかった。でも、旅に出ていると あの日の事は、自分が都合良く見た夢だったんじゃないかって。 そう思ったら、嫌な考えばかり頭に浮かんで・・・・。」 「エディ・・・・。」 ロイは、エドの顔にキスの雨を降らす。 「愛している。エディ。」 キスの合間に囁かれるロイの言葉に、 エドの不安が跡形もなく消えて行く。 「不安に思うなら、いつでも私にぶつけなさい。 私は、何時でも君を受け止めるよ・・・・。」 「ロイ・・・・。」 ロイは、エドの顎を捉えると、深く口付ける。 「愛している。誰よりも。」 ゆっくりとエドをベットの上に押し倒しながら、 ロイはエドに覆い被さると、再び深くエドの 唇を貪る。 恋人達の夜は、まだ始まったばかりだった。 ************************** ホワイトデー企画、ロイ編です。 バレンタインネタの続きになっています。 そして、 誰でも思いつく、「ロイ、エドの写真をガメる」ネタです。 しかも、ドサクサに紛れて、写真を取った事をうやむやにしてます。 こんなんで、いいのでしょうか? どこが、ホワイトデーなのでしょうか?というツッコミは なしということで。【笑】 感想等を送って下さると、嬉しいです。 |