GBA鋼の錬金術師〜迷走の輪舞曲〜ネタです。
話の都合上、アルではなく、ロイです。
未プレイの方は、ご注意下さい。








宜しいですか?
それでは、お読みください。
















   大佐の結婚生活・番外編

            約 束















                 「これは、良いところに。」
                 ロイと結婚してから2週間後、なんとか
                 落ち着いてきたので、前々から
                 誘われていた事もあり、
                 エドは、中央司令部にある、
                 大総統キング・ブラットレイの執務室へ、
                 遊びに来ていた。
                 「?何?俺に何か用だったのか?」
                 キョトンとした顔で首を傾げるエドに、
                 大総統は、ニコニコとして頷く。
                 「あぁ、済まないがね。受付に書類が届いていると
                 思うから、取ってきてくれないかね?」
                 「はぁ?受付って、ここの?」
                 途端、エドの顔が嫌そうに歪む。折角遊びに
                 来たというのに、何故自分がパシリにならなければ
                 ならないんだ?
                 そう顔にデカデカと書かれているエドに、大総統は、
                 苦笑しながら、椅子から立ち上がると、エドの肩に手を置く。
                 「はっはっはっ。すまないね。エドワード君。
                 その書類は、特に重要で余程の人物でなければ、
                 任せられないのだよ。それに。」
                 大総統は、ニヤリと悪戯っぽく笑った。
                 「君に関わる書類でもあるのだよ。」
                 「俺に関わる書類!?」
                 思っても見なかった言葉に、エドは顔を上げる。
                 「あぁ。だから、頼むよ。」
                 「おう!分かった!!」
                 慌てて部屋を飛び出して行くエドに、満足そうに頷くと、
                 大総統は、嬉々として机に座り、引出しの中にある地図を
                 取り出すのだった。


                 「大総統〜!取って来たぜ!!」
                 ノックもなしに扉を開けるエドに、大総統は、済まなかったねと
                 エドを労いながら、書類を受け取ると、サラサラと中身を見ずに
                 サインをして、再び書類をエドに渡すと、ニッコリと微笑んだ。
                 「では次に、これをマスタング准将の元に、届けてくれないか?」
                 「へ?ロイ?何で?」
                 てっきり書類の中身を教えてくれるかと、ワクワクしながら
                 待っていたエドは、またしても大総統のお使いに、思いっきり
                 ハテナマークを飛ばす。
                 「頼んだよ。」
                 相変わらずニコニコ笑う大総統に、溜息をつくと、エドはトボトボと
                 部屋を後にした。




                 「一体、この書類は、何なんだ?」
                 渡された書類をジット見つめながら、エドは呟いた。
                 「どーせ誰もいないし〜。」
                 ニヤリと笑いながら、エドは素早く辺りを見回した。
                 「見ちゃえ!!」
                 エドが書類を捲ろうとした瞬間、背後から声が掛けられる。
                 「エディ?」
                 ギクリとして、首だけぎこちなく後ろを向くと、満面の笑みを
                 浮かべたロイが、立っていた。
                 「ロ・・・・ロイ・・・・?」
                 「エディ?」
                 固まったままのエドに、不審を覚えたロイは、訝しげな表情で、
                 エドに近づく。
                 「一体、どうしたんだね?私に会いに来たのではないのかい?」
                 「え?えっと・・・・・・。」
                 エドは、素早く書類を背後に隠しながら、引き攣った笑みを
                 浮かべた。
                 「ロ・・・ロイに、大総統から書類を預かってて・・・・・。」
                 オズオズと書類を出すエドに、ロイはにっこりと笑いながら、
                 その手を掴む。
                 「それは、済まないね。エディ。だがね・・・・。」
                 エドの身体を引き寄せながら、ロイは耳元で囁く。
                 「何故、君が大総統からの書類を手にしているのかね?」
                 「そ・・・それは・・・・。」
                 内心、しまったとエドは舌打ちした。つい自分に
                 関係しているらしい書類に気を取られていて、失念していたが、
                 今日ここに来るのは、ロイに内緒にしていたのだ。
                 「エディ?」
                 にっこりと微笑みながらも、眼だけが笑っていないロイに、
                 エドは内心悲鳴を上げながらも、素直に謝ることにした。
                 今までの経験上、ここで意地を張ったら、自分が酷い眼に
                 あう事を、学習したのだった。
                 「あの・・・ごめん。大総統から遊びに来いって誘われて・・・・。」
                 ションボリとなるエドに、ロイは深い溜息をついた。
                 「全く・・・・。君は私のものなのだから、1人で他の男の所へ行っては
                 いけないよと、言ったはずだね?」
                 「・・・・・大総統に嫉妬すんなよ・・・・。」
                 真っ赤な顔で俯くエドに、ロイは蕩けるような笑みを浮かべる。
                 「それだけ、エディを愛していると言ってくれ。」
                 「・・・・言ってろよ。と・・ところでさぁ、その書類。」
                 こいつには、何を言っても無駄だと、半ば悟りの境地に入った
                 エドだったが、ふと当初の目的を思い出し、エドは期待を込めた瞳で、
                 ロイを見つめた。
                 「この書類がどうかしたのかい?」
                 「あぁ。何か、俺に関係があるらしいんだけど・・・・・?」
                 「エディに?」
                 不審に思って、ロイはパラパラと書類を捲ってみるが、やがて
                 困惑した顔でエドを見つめた。
                 「大総統が、そうおっしゃったのかい?」
                 「そうだけど・・・・?違うのか!!
                 くっそー!!俺を騙しやがってぇええええ!!」
                 一発ぶん殴る!!とばかりに駆け出そうとするエドを、
                 ロイは落ち着かせようとその華奢な身体を抱き締める。
                 「離せ〜!!ロイ〜!!」
                 「・・・・全く、君に関係がないわけでもないよ。」
                 苦笑するロイに、エドの動きが止まった。
                 「何?」
                 ロイは、エドを抱き締めながらも、器用に書類にサインをすると、
                 エドを抱き上げ、スタスタと歩いていく。
                 「ちょっ!ロイ!!降ろせよ!!」
                 「・・・・・エディ。大総統が私達をお呼びだ。」
                 エドが暴れているにも関わらず、ロイは涼しい顔で歩みを止めない。
                 「わかったから!降ろせよ〜。1人で歩ける〜!!」
                 「駄目だ。君は目を離すと、一人で行ってしまうだろ?」
                 ロイは、にっこりと微笑むと、エドの耳元で囁く。
                 「私に黙って大総統に会ったお仕置きだよ。」
                 それとも、夜にお仕置きした方が良かったかね?と
                 意地悪く囁けば、エドの動きがピタリと止まる。
                 「良い子だ。エディ。」
                 真っ赤になって俯くエドに、ロイは満足そうに微笑むと、
                 軽く頬にキスをして、そのまま廊下を歩いていく。
                 「はぁあああ〜。馬鹿ップルだねぇ〜。」
                 その様子を一部始終見ていた、ヒューズは、パチパチと
                 手を鳴らしながら、感心したように呟く。
                 「エドワード・・・さ・・・・ん〜〜〜。」
                 隣りで、滂沱の涙を流している、エドワード親衛隊隊員である、
                 部下の肩をポンポンと叩く。
                 「まっ、夫婦なんだから、仕方ないだろ?」
                 全く慰めにもなっていない言葉を掛けつつ、ヒューズは懐から
                 あるものを取り出す。
                 「それよりも、どうだ?うちのエリシアちゃんの・・・・・・。」
                 哀れ、傷心の部下に、ヒューズは恒例の愛娘自慢を延々と
                 聞かせ続けたのだった。






                 「大総統、ロイ・マスタング准将、鋼の錬金術師、
                 エドワード・マスタング、入ります。」
                 流石に、大総統の前にまで、エドを抱き上げていけない為、
                 ロイは渋々エドを扉の前で降ろすと、扉をノックする。
                 「入りたまえ。」
                 大総統の声に、ロイとエドは失礼しますと声を掛け、部屋に入る。
                 部屋の中では、椅子に腰をかけた大総統が、ニコニコと
                 笑いながら、二人を迎える。
                 「大総統。この書類ですが・・・・。」
                 ロイは、つかつかと大総統の前に行くと、エドが持って来た書類を
                 大総統に渡す。
                 「おお。ご苦労。さて、ご苦労ついでに、君達二人に任務だ。」
                 任務という言葉に、ロイとエドの顔に緊張が走る。
                 「その書類にあるように、東部にあるオルヘンティノス城の最上階に、
                 ある花が咲いているという。その花を取ってくるように。」
                 「花〜!?」
                 エドの不満な声が上がる。
                 「そうだよ。エドワード君。なるべくたくさんが良いな。はっはっはっ。」
                 高笑いする大総統に、エドが噛みつく。
                 「ちょっと待て!なんで、俺達がパシリしなくっちゃなんねーんだ!!」
                 机をバンと叩くエドに、大総統は、急に真面目な表情になる。
                 その表情に、エドはぐっっと詰まる。
                 「鋼の錬金術師、エドワード君、これは、大総統命令である。
                 逆らうとどうなるか、分からない君ではあるまい。」
                 「・・・・・・・・・。」
                 キッと睨み付けるエドに、大総統は、にこりと表情を緩ませると、
                 さらに言葉を付け加える。
                 「それに、その花は、君にとても関わりがあるものなのだよ。」
                 「俺に?」
                 頷く大総統を、最初胡散臭そうに見ていたエドだったが、
                 やがて溜息をつくと、頷いた。
                 「わかった。取ってくる。」
                 「では、二人とも、気をつけて行ってくる様に。」
                 「「了解しました。」」
                 ロイとエドは揃って敬礼すると、大総統の執務室を後にした。





                 「なぁ、ロイ。なんで、花なんか取ってこなくっちゃいけないんだろう。
                 これで、奥さんの為だったって言うんなら、ぜってー、ボコる!!」
                 1人不機嫌なエドに、ロイは苦笑する。
                 「それはないだろう。他人が取って来た花を、最愛の妻に贈る馬鹿は
                 いない。」
                 私は、絶対にそんな事はしないよ。エディと、耳元で囁くと、エドは
                 真っ赤な顔しながら、照れ隠しなのか、ロイの首に腕を回して顔を隠す。
                 そんなエドに、ロイは苦笑すると、そっとエドの顎に手をかけ、自分の
                 方へ向かせると、啄ばむようなキスを贈る。
                 「・・・・・あの・・・・。」
                 そんなラブラブな光景を、セントラルからイーストシティの列車の中から、
                 車で現地に向かっている今まで、延々と見せつけられた、
                 護衛兼運転手のジャン・ハボック中尉は、内心砂を大量に吐きながら、
                 二人に恐る恐る声を掛ける。
                 「何かね?ハボック中尉。」
                 案の定、ラブラブを邪魔されて、ロイは不機嫌を隠そうもせず、
                 ハボックに問いかける。
                 「そろそろ、目的地なんッスけど。」
                 「え?もう?」
                 名残り惜しげに、エドはロイから離れると、窓の外を眺める。
                 だんだんと近付いてくる古城に、エドは嫌そうな顔で呟いた。
                 「うっわあ〜。いかにもって感じ〜。」
                 「?幽霊でも出るってか?」
                 エドの言葉に、ハボックは咥えタバコを上下させつつ、顔をエドに
                 向けると尋ねた。
                 「違うって。いかにも、素性の怪しい奴が潜伏してそーな、
                 感じって言ったの。第一、幽霊なんて、居る訳ねぇーだろ?
                 な?ロイ?」
                 エドの言葉に、ロイも大きく頷く。
                 「あぁ。エディの言う通りだ。」
                 ロイは蕩けるような笑みを浮かべながら、再びエドを抱き締めようと
                 腕を伸ばそうとした時、漸く車は目的地につく。
                 「着きましたよ。」
                 ハボックの言葉に、エドは真っ先に車を降りると、ロイを振り返った。
                 「よし!さっさと終らせようぜ!ロイ!」
                 「そうだな。」
                 ゆっくりと車から出ると、ロイはハボックに命令する。
                 「ハボック中尉はココで、待機だ。」
                 「准将。いくらなんでも、それじゃあ、護衛の意味ないッスよ。」
                 ハボックの言葉に、ロイはニヤリと笑う。
                 「私とエディがやられるとでも?」
                 不敵な笑みを浮かべる上司に、部下はげんなりと肩を竦ませる。
                 「自分は、ここで待機しています。」
                 「うむ。直ぐ戻る。」
                 満足そうに頷くと、ロイは最愛のエドの姿を追って、城の中へと
                 足を踏み入れた。





                  「大総統!花を摘んできたぞ。」
                  不機嫌全開のエドとロイが、泥だらけになりながら、大総統の執務室へ
                  戻って来たのは、命令を受けてから、2日後の事だった。
                  「おお、たしかに。たしかに。」
                  満足そうに頷く大総統に、エドは不機嫌な顔を隠しもせずに
                  問い詰める。
                  「一体、あの城は何なんだ!!」
                  「おや、言っていなかったかな?老朽化が激しいから、
                  気をつけるように。」
                  首を傾げる大総統に、エドはブチ切れる。
                  「聞いてねー!!おかげでこっちは大変だったんだ!階段は途中で
                  崩れるは、床が抜けるはって!!」
                  「それは、大変だったね。」
                  のほほんとしている大総統に、エドは脱力する。
                  「で?これの何処が俺に関係あるのか、説明して下さい。」
                  ギッと睨み付けるエドに、大総統は、悲しそうな顔で
                  首を横に振る。
                  「エドワード君。なにもそんな恐い顔をせんでもよかろう。
                  さて、次で最後だ。」
                  大総統の言葉に、エドはさらに嫌そうな顔をする。
                  「ま、まだあるのか!」
                  大総統は、受け取った花束を、再びエドに持たせると、
                  ニコニコと笑いながら言った。
                  「この花束を、リゼンブールの母上の墓前に供えてきて
                  くれたまえ。」
                  大総統の言葉に、エドの眼が丸くなる。
                  「母上って・・・・・・?」
                  「エドワードの母君の、ですか?」
                  呆然となるエドの代わりに、ロイが尋ねる。
                  「他に誰がいる?」
                  何を言っているのだね?という大総統に、エドは
                  呆然と呟く。
                  「な・・・なんで・・・・?」
                  「私が命令しなければ、キミは墓参りにも帰らんだろう?」
                  エドを穏やかに見つめつつ、大総統は諭すように言う。
                  「だ、だって、まだ落ち着かなかったから・・・・・。」
                  「だが、墓前に花を供える時間くらいあるだろう。」
                  「だ、だけど・・・・・。」
                  チラリとロイを横目で見つつ、言いよどむエドに、大総統は
                  微笑む。
                  「ロイ・マスタング准将には、3日間の有給を取らせる。
                  二人で行ってきなさい。これは、大総統からの命令だ。
                  背く事は許されないぞ。」
                  軽くウィンクをする大総統に、内心、してやられたと思い
                  つつも、ロイもエドを促す。
                  「大総統の仰る通り、この花を母君の墓前に供えに行こう。」
                  エドは手に持った花束を見つめながら、コクリと頷く。
                  「・・・・・そうだな。でも、なんでこの花・・・・?」
                  何故わざわざ花を摘みに行かせたのか分からず、エドは
                  首を傾げる。そんなエドに、大総統は豪快に笑う。
                  「多少、汗を流してもらった方が、有難味があるだろう?
                  それに・・・・その花の花言葉を知っているかね?」
                  大総統の言葉に、エドは頭をフルフルと横に振る。
                  「オレ、そういうのって・・・・・。
                  ロイは知ってるか?」
                  エドの問いに、ロイも首を横に振る。
                  「いや、この花は知らないな。」
                  困惑する二人に、大総統は微笑みながら答える。
                  「『約束』だそうだ。・・・・もっとも、受付の娘の受け売りだがね。」
                  その言葉を噛み締めるように、エドは花束をじっと見つめながら
                  呟く。
                  「・・・・約束。」
                  「母上の墓前で、キミたちなりの約束をしてくるのだな。
                  さぁ、早くせんと日が暮れる。」
                  ロイとエドは微笑みながらお互いを見詰め合うと、大総統に対して、
                  敬礼をする。
                  「「はい!行ってきます!」」
                  そんな二人を、大総統は満足そうに何度も頷くのだった。





                  「母さん・・・・。」
                  リゼンブールにある、エド達の母親の墓前に、
                  二人は立っていた。
                  エドは、持って来た花束を供えると、幸せそうな笑みを
                  浮かべながら、母親に語り掛ける。
                  「母さん。俺、色々あったけど、今すごく幸せなんだ。
                  だって、俺の隣には、大好きなロイが居てくれる。」
                  ロイは、静かにエドの隣りに立つと、母親に対し、
                  黙礼を捧げる。やがて眼を開けると静かに語り出す。
                  「初めまして。母君。ロイ・マスタングです。
                  私は、誰よりもエドワードを愛しています。
                  私は今ここで、あなたに約束をします。
                  エドワードを誰よりも幸せにすると。」
                  真剣な表情のロイに、エドは幸せそうに微笑むと、
                  母親に向かった語り掛ける。
                  「この花の花言葉って、『約束』なんだって。
                  だから、ロイが母さんに約束したように、
                  俺も母さんと約束する。
                  俺も、誰よりもロイを幸せにするって。」
                  エドは、ロイを見上げて、にっこりと微笑んだ。
                  「幸せになろう。ロイ。」
                  「勿論だ。愛している、エドワード。」
                  ロイは、ゆっくりとエドに顔を寄せると、まるで結婚式での
                  誓いのキスを再現するかのように、母親の墓前で、
                  約束の口付けを交わすのだった。





                                               FIN



*****************************

ゲームでは、アルとのイベントでしたが、あまりにも
おいしいシュチュエーションに、萌えてしまいまして、
ロイエドにしてみました。
如何でしたでしょうか?
感想などを送って頂けると、嬉しいです♪