裏・大佐の結婚シリーズ
          東方支部編(ロイ片思い編)

            守るべき人・・・・・・。

 

 

        「守るべき人がいるから・・・・・。」
        東方司令部の司令官、ロイ・マスタング大佐の
        片腕とも言うべきリザ・ホークアイ中尉は、銃を片手に、
        鮮やかな笑みを浮かべた。
        「守るべき人・・・・?」
        キョトンと首を傾げるのは、最年少国家錬金術師のエドワード・
        エルリックの最愛の弟、アルフォンス・エルリック。
        兄がロイに報告書を提出している間、仲良くホークアイと
        談笑していた。話の流れから、何故ホークアイが軍にいるのか
        という話をすると、ホークアイはそれはそれは麗しい笑顔で
        答えたのだった。
        ”誰かな?もしかして、大佐?”
        多分、大佐の事だろうと、アルフォンスが心の中で思っていると、
        ホークアイは夢見る少女のような顔で、熱く語り始めた。
        「もともと、私が軍にいるのは、意味がなかった。そうね、
        強いて言えば、混乱をきたしている国に、私でも何かが
        出来るかもと・・・・ただ、漠然と思っていたの。でもね。」
        ホークアイはアルフォンスに向かってにっこりと微笑む。
        「彼に出会って、私は変わったわ。」
        ”やはり、大佐の事か。”
        うんうんと頷くアルに、ホークアイはチラリとロイ個人の執務室へと
        視線を走らせる。
        「むせ返るような血の匂い。そして、傷つき、死んだような瞳をした
        彼・・・・・・。私は、初めて彼を見た瞬間、確信したの。私は
        彼を守るべく、軍に入ったのだと。これは、誰に強制された
        訳でもない。私が決めた事。」
        ”す・・・・すごい告白聞いちゃった・・・・。そうか・・・・そんなにも
        ホークアイ中尉、大佐の事が好きなんだ・・・・・・。”
        生身の身体なら、真っ赤になって俯くであろう、ホークアイの
        大告白大会に、アルは落ち着きがなく、視線を彷徨わせる。
        そんなアルの様子に気づかず、ホークアイはさらに熱弁を
        振るう。
        「私は、私の意志で引鉄を引くの。守るべき人のために。」
        ホークアイは、いきなりソファーから立ち上がると、スタスタと
        ロイとエドがいる執務室の前へと歩き出す。
        「ホークアイ中尉・・・・?」
        心なしか、怒りの表情のホークアイに、アルは困惑しながらも、
        思わず彼女の後をついて、執務室の前までくる。
        「その人が目的を果たすその日まで、迷うことなく引鉄を引くわ。」
        そう言うと、ホークアイは銃を片手に、荒々しく執務室の扉を
        蹴破らん勢いで開ける。
        「ちゅ・・・ちゅ・・・中尉!!」
        扉を開けたと同時に、発砲するホークアイに、アルの絶叫が
        司令部内を響き渡る。
        「エドワード君が目的を果たすその日まで、エドワード君の
        邪魔をする者には、迷うことなく引鉄を引きます!!それが、
        大佐!あなたであっても!!」
        恐る恐るアルが執務室の中を覗き込むと、半ば強引にエドを
        抱き寄せていたらしいロイのすぐ脇を弾丸が通過したらしく、
        後ろの窓ガラスが、粉々に割れていた。固まるロイの身体を
        何とか押しやって、半泣き状態のエドが、ホークアイに
        抱きつく。
        「中尉〜。助かった〜。」
        エグエグと泣いているエドを、ホークアイは優しい眼差しで、
        そっと慰めるように、抱き寄せる。
        「もう大丈夫よ。怖かったわね。エドワード君。」
        「大丈夫?兄さん!!」
        泣いているエドに、慌てて駆け寄るアルに、ホークアイはにっこりと
        微笑む。
        「アルフォンス君、エドワード君を先にそちらの部屋へ。一緒に
        お茶を飲みましょう。私は、無能の躾が終わったら、
        直ぐに行くから、待っててね。」
        ホークアイはエドをアルに預けると、凍えるような笑みを浮かべて、
        銃を片手に執務室へ入っていく。
        「うぎゃああああああああ〜。」
        直後に聞こえた、東方司令部の司令官の断末魔の声に、
        アルは心の中で拍手喝采を送る。
        ”さすが、エドワード・エルリック親衛隊東方支部長!
        お見事です!!”
 

        エドワード・エルリック親衛隊東方支部長、リザ・ホークアイ。
        彼女の【愛】で、今日もエルリック兄弟、とりわけ、兄のエドワードの
        無事が守られるのである。








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裏・大佐の結婚シリーズだからと言って、年齢制限ありのシリーズでは
ありません。大佐の結婚シリーズの、サイドストーリーである、
ホークアイを中心としたエドワード親衛隊の面々の愛と笑いのシリーズ
なんです。年齢制限やらロイアイを期待してた方、すみません〜。
うちのホークイアイ中尉は、エルリック兄弟至上主義なんです。
(特にエド)それはもう、一目惚れ状態だったと思われます。

最近、ロイエド馬鹿ップルを書いてばかりいるので、ここら辺で、
別の視点のものを書いてみました。
感想などを送ってくださると、嬉しいです。