どっちの夫婦ショー
番外編 お疲れ様会
「皆様、初めまして。私(わたくし)、新撰組総長を務めさせて頂いております、山南敬助と申します。
以後、お見知りおきを。」
「山南さん?一体、誰に話しかけているんですか?そっち、壁ですけど?
・・・・もう酔っ払っちゃたんですか?」
にこやかな笑顔の山南の隣で、訝しげな顔をするのは、総司。その向かい側にいる原田も
総司と同じように、山南に注目している。
「いえ、ちょっと読者の皆様に、ご挨拶を。・・・・・まぁ、いいじゃありませんか。私の事なんて。
とりあえず、WEB拍手の『どっちの夫婦ショー』のお疲れ様会を・・・・・・・と思っていたのですけど
・・・・・・・・なんで、この三人だけなんですか?」
山南は周りを見回して、不満そうな顔を二人に向ける。
「先日、アメストリス国の人達は、帰ってしまったし、新八は夜の見回り。近藤さんと井上さんが
どうしても外せねえ用事とやらがあるとかで、朝から不在。そんでもって、へーすけと斎藤は、
伊藤さんの店の手伝いとかで、さっき、伊東さんに引きずられるように、出かけて行ったぜ。」
原田が指折り数えながら答える。
「そんでもって、土方さんは、千鶴ちゃんと一緒に仲良く土方さんのお部屋で・・・・・。」
後を引き継ぐように語られる総司の言葉に、山南はピクリと反応する。
「・・・・まさか、土方君は雪村君を・・・・・。」
「ええ。朝からこき使ってますよ。何であんなに仕事好きなのか、僕にはちっとも理解が
出来ないですけどね。」
あんなのがいいなんて、千鶴ちゃんって、本当に趣味悪いよね。と肩を竦ませる総司に、
山南はガクッと肩を落とす。
「・・・・・・まぁ、土方君ですからね。最初からあまり期待はしていませんでしたが・・・・・。
それにしても、甲斐性なしな・・・・・・。」
小声でブツブツ文句を言う山南に、総司と原田は顔を見合わせて肩を竦ませた。
「まぁ、僕達だけでは華がないので、猫ちづちゃんを連れてきましたよ。あと、猫ちづちゃんから
離れなかったから、仕方なく猫トシも。」
総司は右手で猫ちづを抱っこし、左手で、猫トシの首根っこを掴んで、ブラブラと揺らす。
シャーと暴れる猫トシに、原田は苦笑する。
「いい加減にしないか。猫トシは怒ると手がつけられねえぞ?」
「大丈夫ですよ。猫ちづちゃんを渡せば大人しくなりますって。」
ニヤリと笑う総司に、原田は乾いた笑みを浮かべる。
「・・・・・・・まぁ、そんな訳なんで、この人数で勘弁してくれねえか。山南さん。」
苦笑する原田に、山南はニッコリと微笑んだ。
「ええ。そういう訳ならば、構いませんよ。上杉さんの方でも、あまり人数がいても
困るようですしね。」
「そう・・・その上杉って人なんだが・・・・・・・。その人から聞いてねえか?何で、
今回は俺達なのか。本来ならば、第8回目の反省会で、アメストリス側の人間なんじゃねえのか?」
不思議そうな原田に、山南はにこやかに答える。
「ああ、最終回も迎えましたからね。今さら、反省会もないじゃないですか。
それに、アメストリス国の人達は、年明けから再開されるWEB拍手の連載で、
今忙しいみたいですからね。」
「へぇ〜。確か、彼らの話が数話分終わったら、次は僕達の番ですよね。
じゃあ、そろそろ僕達も忙しくなるって事ですか?」
総司の問いに、原田が疑問をぶつける。
「ちょっと待て!確かまだ連載途中のSSが山とあるはずだろ?そんなに早く
俺達の話が回ってくるか?」
なぁと山南に同意を求めようとすると、山南は困ったように笑う。
「そうですね・・・・・・確か、来年の二月に、【薄桜鬼】のげえむが発売とかで、
その前までに、いくつか終わらせないと〜と騒いでいるのは知っていますが・・・・・。
それに、ちょっと気になるお話を小耳に挟んだのですが・・・・・・・。」
「気になる話?」
興味深そうに原田が訊ねる。
「ええ・・・・なんでも、この間、某げえむ雑誌に、2月発売のげえむの場面がいくつか
発表になりましたでしょ?」
山南の言葉に、総司が嫌そうに顔を顰める。
「ああ・・・あの、左之さんと、近藤さんが一緒に映っているやつね。」
「総司、そりゃあ不可抗力だって。お前だってちゃんと出てるからいいじゃねえか。」
引きつる原田に、総司は剣呑な目を向ける。
「映ってるからいいって言った?よりにもよって、僕が山崎君に庇われている場面なんだよ!」
総司の激昂に、原田はシマッタと顔を顰める。
「なんで、そんなありえない場面があるわけ!?」
総司は原田の肩を掴むと、激しく揺さぶる。見かねた山南が総司を止める。
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。沖田君。上杉さんが言うには、土方君と雪村君の写真で、
話が出来たらしんですよ。」
「はぁ!?この上、また増やすのか?流石に他の作品の奴らも黙っちゃいねえだろ!
俺、巻き込まれるのはごめんだぜ?」
嫌そうに顔を顰める原田に、山南は頭を払った。
「いえ、どうやら、私の本にその場面を加えるらしいんですよ♪」
「山南さんの本って・・・・・・・あれか?猫トシと猫ちづの
・・・『薄紅桜猫鬼譚(うすべにざくらねこきたん)』にか!?つうか、あれ、
単品じゃねえだろう!!
第一、華胥の夢の本編にすら、その本が出ていねえじゃねえか。」
驚く原田に、山南はニコリと笑う。
「さぁ?ただ・・・・・上杉さんが、【ゲーム発売前に発表した者勝ち!】とか、
【ゲーム発売祝いとかで、どさくさで、番外編を出してもいいよね〜】とか、
ぶつぶつ言っていたのを、ちょっと小耳に挟んだだけですので・・・・。
あっ、走り書きを入手したので、続きに乗せましょうか?」
ヒラヒラと数枚の紙を見せる山南に、総司は引きつる。
「へぇ・・・・あのたった一枚でそんなに考えたの?すごい妄想力だよね。」
「一部ならまだしも、さすがに全部乗せるのは、まずいんじゃねえか?それに、
まだそれは書きかけで、変わる可能性もあるわけだろ?」
原田の最もな意見に、山南は暫く黙りこむと、残念そうに紙を懐に仕舞う。
「はぁ〜。私としてはここで大々的に発表すれば、逃げられないから、
彼女は最優先で私達の話を書いてくれるかと思ったんですが・・・・・。
そうですね。あまり追いつめて、臍を曲げられても困りますし。
これは後でばれない様に、こっそりと返しておくことにしましょうか。」
ふうとため息をつく山南の姿に、原田と総司はコソコソ耳打ちする。
「おい、あれは本人に承諾なしで持ってきたのか?」
「山南さん、目的の為なら手段を選ばない人だから・・・・。」
「あなた達、何をコソコソ話をしているんですか?」
キラリと山南の眼鏡が光る。
「いや・・・その・・・ほら、今回の合同企画についてだよ。なっ!総司!」
「ええっ!それ、僕に振るの!?ずるいですよ。左之さん!」
横腹を突っつかれて、総司は不服そうに原田を見遣る。
「沖田君?何か問題でも?」
スッと目を細める山南に、総司は引きつった顔で誤魔化す。
「ほ・・・ほら!今回の企画は、突発的なものだったでしょう?本来ならば、
アメストリス国の人達との交流なんて、ないじゃないですか。それなのに、
土方さんと千鶴ちゃんをくっつけちゃって、本編ではその辺をどうするのかなぁ〜と・・・・。」
「交流はありますよ?本編でも。」
キョトンとなる山南に、原田と総司は驚きに目を見張る。
「おや?知らなかったんですか?もともとアメストリス国の人達の出番は、
本編でも予定していた事です。」
固まる二人に、山南は追い打ちをかけるように言葉を繋げる。
「だって、色々と異国の行事とか取り入れたいじゃないですか。折角のなんでもあり!の、
ほのぼの路線なんですから。まぁ、本編ではそこまで話が進んでいないので、どこまで書こうか、
だいぶ悩んでいたみたいですけどね。無事に終わって良かったですよ。」
クククと笑う、山南に、原田と総司は顔を見合わせる。
「ってことは、左之さん・・・・。またあの騒動は始まるの?」
「言うな!総司!!俺達は何も聞かなかった。何も知らなかった。いいな!
絶対に土方さんにだけは、話すなよ!!」
念を押す原田に、総司はふと何かを考え付いたのか、ニヤリと笑う。
「そうですね。黙ってた方が、色々と土方さんが面白いですよね。」
「・・・・・・・・・・お手柔らかに頼むぞ。」
フフフフと不気味な笑みを浮かべる山南と総司を前に、何で自分がここにいるんだと、
半ばやけになりながら、原田は目の前の徳利をつかむと、そのまま浴びるように飲み始めた。
FIN
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