Honey Honey

 

 

 

            「やはり、スコーンには、蜂蜜が一番いいと私は思うよ。」
            妻特製のスコーンを片手に力説するのは、夫のロイ・マスタング。
            その向かい側では、妻のエドが苦笑しながら、自分が焼いたスコーンに
            手を伸ばす。
            「俺は、ストロベリージャムが最高だと思うな。」
            エドは、焼きたてのスコーンを半分に切ると、たっぷりのストロベリー
            ジャムをつけて、美味しそうに頬張る。
            「うん!最高!!」
            ニコニコと微笑みながら、満足そうに頷くエドに、ロイも負けじと
            スコーンに蜂蜜を垂らして、パクリと口にする。
            「やはり、蜂蜜に限る。」
            ウンウンと満足そうに頷くロイに、エドはふと疑問に思っていた事を
            口にする。
            「そう言えば、ロイって、甘いものが苦手なくせに、どうして
            蜂蜜なら大丈夫なんだ?」
            「ん?知りたいかね?」
            手に付いた蜂蜜を舐めながら、ニヤリと笑うロイに、エドは瞬間
            背筋が凍るのを感じ、慌てて首を横に振る。
            「いや!やっぱいい!!」
            「どうして?気になるのだろう?科学者として、疑問に思うことは
            追求しなければな。」
            ロイはニコニコ微笑みながら、意地悪くエドを見る。
            「いいの!人の嗜好なんて、追及したって意味ないじゃん!」
            「そうかね?これに関しては、トコトン追求して欲しいのだが。」
            残念そうに言うロイに、エドは首を傾げる。
            「なんでそんな事に拘るんだよ。」
            「それは、君に関する事だからだよ。」
            ロイの言葉に、エドは驚いて自分を指差す。
            「俺?何で?」
            ますます分からないと首を横に振るエドに、ロイは蜂蜜をスプーンで
            掬うと、スコーンにトロトロとかける。
            「蜂蜜の色は、本当に美しい黄金の色をしている。」
            そして、チラリとロイはエドを見た。
            「まるで、君の髪と瞳のようだ・・・・・。」
            ロイはじっとエドを見据えたまま、ゆっくりと蜂蜜を舐める。
            ゾクリ。
            一瞬身体に快感が走り、エドはそれを知られたくなくて、慌てて視線を
            逸らす。
            「私は元来甘いものが苦手なのだけどね。」
            ロイはゆっくりと椅子から立ち上がると、ロイはエドのテーブルを回って、
            エドの横へと歩いた。
            「君という甘さなら、いつでも受け入れる事が出来るのだよ。」
            ロイは片膝をつけると、真っ赤な顔で俯くエドの顔を覗き込んだ。
            「そう言えば、エディはストロベリージャムがお気に入りだね。」
            ロイはゆっくりと立ち上がると、テーブルの上にあるジャムの入れ物を
            引き寄せ、スプーンで掬って、エドの残りのスコーンに、ジャムを塗る。
            「その中でも、特に、赤色が鮮やかなものを好むのは、何か理由でも?」
            ジャムの塗ったスコーンを手に、ロイはエドを見てニヤリと笑う。
            「べ・・別に意味なんて・・・・ないよ・・・・。」
            「ほう?そうかな?」
            ロイはジャム付きのスコーンをゆっくりと口に運ぶと、一口齧る。
            口一杯の甘酸っぱさに、ロイの眉が寄せられる。
            やはり、蜂蜜以外の甘さは、身体が受け付けないらしい。
            「ああ、しまった。ジャムが手についてしまったよエディ。」
            残りを皿に戻すと、ロイはこれ見よがしにエドに自分の手を見せる。
            「舐めなさい。好きなんだろ?」
            クスクスと笑いながら、ロイはエドの唇にジャムがついた指を押し当てる。
            「ロイ〜。」
            「そんな可愛い顔しても駄目だよ。ほら、君の好きな赤いジャムだよ。」
            面白がっているロイに、エドは溜息をつくと、ペロリとロイの指を舐める。
            「で?どうして君はこれがお気に入りなのかね?」
            私はちゃんと理由を言ったよ?と耳元で囁かれ、エドは観念して口を
            開いた。
            「俺がストロベリージャムが好きなのは、ロイの焔の色と同じだからだよ!!」
            もういいだろ!!と真っ赤になって叫ぶエドに、ロイは嬉しそうに、
            抱きしめると、ゆっくりと唇を塞いだ。
            蜂蜜の甘さとストロベリーの甘酸っぱさが、口の中で程よく混ざり合い、
            エドは心地よい甘さに、うっとりと目を閉じた。
             







                                            FIN




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 なんか、雰囲気が【隠れ月】行きのような・・・・・。
 赤い色のジャムで、ストロベリーしか思いつきませんでした。
 ちなみに、上杉は、【レシピエ】のティージェリー・マスカットがお気に入りです。

 上杉図書館来訪のお礼に、お歳暮SSです。
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