星の船

 

 

 

 

           「だーっ!!何だって足止めなんだ!!」
           「兄さん、落ち着いて。」
           宥める弟のアルフォンスに、エドはむーっと膨れる。
           「だって、アル〜!!」
           「しょうがないでしょう?ボク達が乗った列車の一本前が、
           トレインジャックにあったんだから。」
           ボク達が乗った列車じゃなくって、本当に良かったね。と、
           暢気に笑う弟に、エドはくってかかる。
           「何、ほんわかしてるんだよ!俺は今日中に、イーストシティに
           行くつもりだったんだぞ!!それを、事後処理の為に。
           こんな所で足止めされるなんて!!」
           ますます暴れるエドに、アルは溜息をつく。
           「何でそんなに今日に拘るの?兄さん?」
           「な・・・なんでって・・・・・。」
           一瞬言葉に詰まるエドだったが、直ぐに言い訳を言う。
           「だって、新しい文献を早く読みたいじゃないか!!」
           「そりゃあそうだけどさ、なんか今日の兄さんっておかしんだよねぇ。」
           じっと自分を見るアルの視線に耐え切れず、エドはガタンと
           椅子から立ち上がる。
           「兄さん?」
           「俺、ちょっと暇だから、宿の周りを走ってくる!!」
           そう言って、エドはバタバタと部屋を飛び出していく。
           「ちょっと!兄さん!?」
           後には困惑するアルだけが残された。












           「くそ〜。この川さえ越えられれば、直ぐだったのに・・・・。」
           エドは土手に座りながら、川をぼんやりと眺めていた。
           川の向こう岸にいる恋人は、今頃何をしているのか。
           事後処理で忙しいんだろうなと、エドはぼんやりと考えていた。
           「七夕には帰っておいで・・・。」
           エドの脳裏には、一ヶ月前、ロイの自宅の寝室での情事の後、、
           エドを腕に抱き締めながら呟かれた、ロイの声が蘇る。
           「でも・・・仕方ないじゃん。事件だし・・・・。」
           エドは小石を拾うと、川に向かって投げる。
           「第一、ロイがいけないんだ!たかが事後処理の為に、
           列車を止めるなよ!!」
           エドは再び小石を拾って、川に投げる。
           「俺は悪くない!!悪いのは無能の方だ!!」
           エドは三度小石を川へと投げる。
           「折角、会えると思ったのに・・・・。」
           だんだんとぼやける視界に、エドは堪えきれず、嗚咽を洩らす。
           「会いたい・・・・。ロイ・・・・・。」
           今日は晴れているのに。
           何で天上の恋人達は出会えて、地上の自分達は出会えないのか。
           本格的に泣き出すエドの背中に、暖かいものが覆いかぶさる。
           「えっ!!」
           驚いて振り向くと、会いたくて堪らなかった恋人の姿を見て、
           エドはポカンと口を開けて驚いた。
           「なんで・・・・・・。」
           「君に逢いたかったからに、決まっているだろう?」
           走ってきたのか、肩で息を整えながら、ロイはきつくエドを抱き締める。
           「本物・・・?」
           まだ半信半疑のエドに、ロイは苦笑すると、そっと唇を重ね合わせる。
           「君に逢いたくて、急いで仕事を片付けてきた。」
           「ロイ!ロイ!!」
           嬉しそうに自分に抱きつくエドの背中を優しく摩りながら、ロイは
           エドの身体を抱き締める。
           「会いたかった。エディ・・・・・。」
           「俺だって!!ロイに会いたかったんだからな!!」
           エドは涙で濡れた顔を乱暴に拭うと、グイっとロイの胸倉を掴むと、
           自分から唇を重ねあわせる。
           「エディ!?」
           まさか、エドからキスをくれるとは思っていなかったロイは、真っ赤になって
           慌てるロイを、満足気にニヤリとエドは笑う。
           「今日は七夕だから・・・たまには・・・な?」
           「全く、君には適わないよ。」
           ロイは微笑むと、座ったままのエドを抱き上げる。
           「ちょっ!!ロイ!?」
           ロイはエドの唇に軽くキスを送ると、にっこりと微笑む。
           「折角、君の方から誘ってくれたんだ。堪能しなければな。」
           「さ・・・誘ってねぇええええ!!」
           絶叫する恋人を、ロイは上機嫌に自分が泊まる宿へと連れ去る。
           次の日、エドとロイが二人仲良く正座させられて、アルと仕事を
           放り出して逃亡したロイを追いかけてきたホークアイの二人に、
           説教されたのは、また別のお話。







                                          FIN


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誘い受けを目指そうと思ったのですが、どこでどう狂ったんでしょうか。
何故か短いお話になってしまいました。


こんな話でも気に入っていただければ嬉しいです。
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                               上杉茉璃