終 章  

 

 

 




                     「大総統が、これほどまでに少女趣味というか
                     ドリーマーだったことが、意外でした。」
                     はぁ〜と大きな溜息をつくと、アルフォンスは
                     苦笑する。
                     「フフフ・・・・最近のお嬢様方は、これくらいでは
                     ないと、満足してくれんのだよ。」
                     得意げな大総統に、アルは背伸びをしながら
                     尋ねた。
                     「あー、疲れた。ところで、どちらの話を採用する
                     んですか?勿論、ボクですよね。」
                     にっこりと微笑むアルに、大総統もニッコリと微笑み
                     返す。
                     「ハハハ・・・。それは勿論、私の話に決まっておる。
                     そうではないかね?諸君?」
                     ギロリンと大総統は、部屋の中を見回した。
                     「権力にものを言わせるのは、大人としてどうかと
                     思いますが?そうですよね、皆さん?」
                     アルも負けじとニッコリと微笑みながら、部屋の中を
                     見回す。
                     途端、部屋にいた人間は、さっと目線を反らせる。
                     エドワードエルリック親衛隊の立場から言わせてもらえ
                     ば、アルフォンス親衛隊長には逆らえない。しかし、
                     自分達は軍人でもあるので、大総統に絶対の忠誠を
                     誓っていたりする。どちらに転んでも不利な立場には
                     ちがいないだけに、何とか話を反らそうと皆は
                     一斉に俯いて考え込んでいると、そこに、救世主とも
                     言うべき、エドワード・エルリックが、焦りの表情で
                     襲撃してきた。
                     「大変だっ!!アル!!」
                     ドアが壊れるんじゃないかと思うほどに、力任せに
                     開けられて、エドがズカズカと部屋の中へと入って
                     きた。
                     「あれ?兄さん、どうかしたの?司令部に来るなんて、
                     珍しいね〜。」
                     突然現れたエドに、一瞬驚いた顔をするが、直ぐに
                     にっこりと微笑む度胸は流石だった。
                     「そういうお前こそ、一体、ここで何をしているんだよ!」
                     腰に手を当てて憤慨するエドに、アルはますますにっこりと
                     微笑む。
                     「ほら、来月から僕達のラジオ番組【ハガレン放送局】で
                     新コーナーとして、ラジオドラマが始まるでしょう?
                     その打ち合わせだよ。」
                     「・・・・なんで俺に一言の相談もないんだよ。」
                     自分だけが知らされていなかった事実に、エドは
                     不貞腐れたような顔で横を向く。
                     「だって、マスタング准将って、兄さんがここに来るの
                     すごく嫌がるじゃないか。」
                     「そりゃ・・・そうだけど・・・・。」
                     納得がいかないのか、エドは大股でアルに近づく。
                     「で?第一回目のラジオドラマは、どんなのになった・・・。」
                     「兄さん!!それよりも、何かボクに用事じゃなかったの?」
                     アルはさり気なく大総統に、自分達の書いたシナリオを
                     隠すように、目で合図する。その合図で素早くシナリオを
                     隠したのと、エドがアルの横に立ったのは、同時だった。
                     「それなんだが・・・・あーっ!!やっぱりアルの仕業だった
                     んだな!!」
                     エドが机の上に置きっぱなしにしてあるものに気づき、声を
                     上げる。
                     「ロイの手袋!!駄目じゃんかっ!勝手に持ち出して!!
                     それと、何で俺の機械鎧まであるんだよ!ちゃんと仕舞って
                     あったのに!!」
                     エドはロイの手袋と、慌てて引っつかむと、ギロリとアルを
                     睨む。
                     「ごめんね。直ぐ返すつもりだったんだよ。ただ、ラジオドラマを
                     考える上での、インスピレーションを得る為というか・・・・
                     その・・・・・。」
                     引きつった笑みを浮かべるアルに、エドは溜息をつくと、
                     自分の機械鎧をアルに押し付けた。
                     「あーもー、わかったよ。とにかく、俺のはちゃんと後で仕舞って
                     くれればいいけど、ロイの手袋だけは駄目だかんな。わかったか。
                     アル。」
                     弟にメチャメチャ甘いエドは、そう言って、アルの頭を撫でる。
                     「うん!ごめんね。兄さん。」
                     頭を下げるアルに、気にするなとエドはアルの頭をポンポン
                     叩く。
                     「じゃあ、俺、これをロイに届けてくるから。」
                     そう言って、エドは足取りも軽く、部屋を飛び出していく。
                     「兄さんって、可愛いですよね〜。」
                     ほんわかした表情で、くるりと振り返ると、アルは大総統に
                     言った。
                     「実はボク、兄さんが実は女の子でしたっていう設定のお話も
                     考えてきたんです。」
                     「ほほう。それは奇遇だね。私も実はそうなのだよ。」
                     2人はニヤリと笑う。
                     「では、今度は大総統から話を始めて下さい。それによって、
                     今度のラジオドラマのシナリオは、どちらが担当するか
                     決めましょう。」
                     「ははは。いいとも。」
                     2人の間に火花が散った。





                      その後、権力者ホークアイを味方につけたアルが
                      シナリオ担当になったのだが、その内容がリザ×エドのみに
                      固執するのを聞きつけたロイの妨害によって、新コーナ
                      であるはずのラジオドラマが、一回も陽の目を見ることなく
                      終わったのは、別のお話。
                      



   

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映画【英雄ーHERO−】を見た時、秦王のあまりにもドリーマーな語りに、
内心爆笑したのを覚えています。
確かに、画像が綺麗でしたが、あの水辺のシーンは、「うふふ。」「あはは。」
「捕まえてごらんなさーい。」「待て〜。」という見えてしまった為、笑いを
堪えるのに、必死でした。しかも!あのシーンは秦王の語り、つまり、
彼の創作な訳で・・・・。彼のあまりにも少女趣味的ドリーマー振りに、
書き手としては、見習うべくところなのかもと、本気で思ってしまいました。
ハガレン放送局は、名称だけお借りしました。ロイエド的ラジオドラマが
あって欲しいなぁというのは、私の願望。

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