「なぁ、ロイ。今日って何の日だっけ?」
ホテルに着いて、荷物の整理をしていたエドは、
ふとロイに問いかける。
「確か、7月7日・・・・・七夕だな・・・・。」
それがどうかしたのかい?
ロイはゆっくりとエドに近づくと、後ろから抱き締める。
「そっか〜。七夕だったんだ。」
エドは、身体の力を抜くと、ロイの胸に背を預ける。
「エディ?」
エドの髪の毛を弄んでいたロイは、沈んだ表情のエドに
気づき、そっと顔を覗き込む。
「あのさ・・・・。幸せって怖いな・・・・・。」
ポツリと呟かれるエドの言葉に、ロイは形の良い眉を
潜める。
「どうしたんだい?私の愛を疑っているのか?」
その言葉に、エドは慌てて首を横に振る。
「違う!!そうじゃなくって!!」
「では、何が不安なんだい?」
ロイは愛しそうにエドの身体を抱き上げると、ベットへと
歩き出す。
「ちょっ!!」
慌てるエドを宥めるように、軽く額にキスを送ると、ロイは
エドの身体をベットに腰掛させ、自分もその横に座り
肩を抱き寄せる。
「で?一体どうしたんだい?」
耳元で囁かれるロイの声に、エドは真っ赤になりながら、
ポツリポツリと話始める。
「あのさ・・・・・。七夕の伝説って知っているだろ・・・?」
「あぁ、年に一回しか会えない夫婦の話だろ。」
それとエドの不安の関係が分からず、ロイは首を傾げる。
「・・・・・・・俺達も年に一回しか会えなくなったら・・・・。」
「そんな事は、私がさせない!!」
間髪入れずに、ロイはエドの言葉を遮ると、きつくエドの身体を
抱き締める。
「例え話でも、そんな事を言わないでくれ・・・・。例え、
一分一秒でも、君と離れるだけで、私の心は壊れそうなんだよ?」
「・・・・・そう。そこなんだよ。問題は・・・・。」
エドは悲しそうに呟くと、ゆっくりとロイの腕から逃れて、
窓辺へと移動する。
「エディ?」
慌ててロイはエドを追いかけると、窓の外を眺めているエドの
背中を、後ろから抱き締める。
「あのさ・・・・。伝説では、二人は新婚なんだろ?」
「あぁ・・・・。そうだな。」
ぼんやりと呟くエドに、ロイは抱き締める腕に力を込める。
エドの不安の元に気づき、ロイは教え込むように、エドに
優しく語り掛ける。
「何も心配する必要はないよ。彼らと違って、私たちは周りの
人間にも恵まれているから。」
「周りの人間?」
きょとんと首を傾げるエドに、ロイは軽く頬に口付けをする。
「あぁ、彼らが一年に一度しか会えなくなったのは、周囲の、
とりわけ、娘を取られた父親の嫉妬が原因だろ?」
結婚してから、二人が仕事をしなくなったと理由で、織女の
父親である、天帝が怒り、二人を一年に一度しか会えなくしたと
いう話は、有名である。それを、ロイはただ娘を取られた父親の
嫌がらせと斬って捨てる。
「私達の周りの人間は、幸いな事に、私達を離そうなんていう、
考えなど全く持たない人間ばかりだ。むしろ、私達が一緒に
いる事を、強く望んでいる。」
ロイはゆっくりとエドの身体を自分の方へ向かせると、今度は
正面から抱き締める。
「実はだね、新婚旅行を強く勧めてくれたのは、アルフォンス君
なんだよ・・・・・。」
「アルが?」
はっきり言って、そんな事実はないが、この機会に、エドに弟
離れをさせようと、ここぞとばかりに主張する。
「あぁ、君の弟は本当に私達の事を思っていてくれているんだ。」
「そっか・・・。アルが・・・・・。」
はにかむエドに、ロイはクスリと笑うと、ゆっくりと唇を重ね合わせる。
「それに、私に1カ月休みを取らせる為に、ホークアイ大尉を始め、
皆が私の仕事を肩代わりしてくれているんだ。みんな、私達の
幸せを願っての事だよ?」
だから、私達が離れ離れになることは、ありあえないと、
耳元で囁きながら、ロイは再びエドを抱き上げると、ベットへと
運ぶ。実際、ホークアイ達に無理矢理仕事を押し付けてきた
事実を美談にすり替え、ロイはエドの不安を取り除こうと、
いかに自分達が周りの人間から祝福されたカップルであるかを、
熱っぽく語る。
「でも・・・・。やっぱ、不安だよ。みんなにこんなにしてもらって、
俺、何も返せない・・・。これじゃあ、等価交換に反する・・・・。」
ゆっくりとベットの上に横たわらせると、エドは不安そうな顔で
ロイを見つめる。そんなエドに、ロイは苦笑すると、ゆっくりと
エドに覆いかぶさる。
「何も心配する事はない。私達が幸せになる事が、最大の
等価交換だよ・・・・・。」
そう言うと、ロイは深くエドの唇を塞ぐ。
「んっ・・・。ロイ・・・・。好き・・・・。」
「私も、愛しているよ・・・・。エドワード・・・・。」
ロイはエドの柔らかい唇を思う存分堪能しながら、
右手をエドの服の下へ潜り込ませる。
「あん!ロイ〜。」
「可愛いよ。エドワード。」
再び深く唇を重ね合わせる。
「幸せすぎて、怖い・・・・・。」
キスの合間に囁かれるエドの言葉に、ロイは微笑むを洩らす。
「私は、もっと幸せになりたいし、君を幸せにしたい。それが、
私達を応援してくれる人達への感謝でもある。」
トロンとした目でロイを見上げながら、エドは首を傾げる。
「これ以上の幸せ・・・・・?みんなも幸せになれる?」
「あぁ・・・・・。みんながいつでも私達の幸せを確認できるように、
いついかなる所でも、惜しみない愛をエディに与えるよ。」
ロイはエドの耳元で囁くように、呟く。
「だから、エディも私への愛を隠さないでくれ。」
「ロイ・・・・・・。」
エドは真っ赤になると、おずおずとロイの首に腕を回す。
「・・・・・・・好き。」
ロイの耳元で囁くと、自分から唇を重ね合わせる。
「愛しているよ。エディ。」
ロイはにっこりと微笑むと再びエドの首筋に顔を埋めるのだった。
FIN
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相変わらずの馬鹿ップル・・・・・。
七夕企画SSの中で、糖度が一番高いと思うのは、私の気のせいでしょうか。
これ以上進めば、完全に【隠れ月】行きになってしまうので、不満があるかもしれませんが、
ここまででお許し下さい。
この話は、『大佐の結婚生活番外編 大佐の新婚旅行』第3話に出てきた、
エドの手紙へと続きます。軍部とアルを出して、マジに仕事という名の天の川に挟まれて、
会えない二人を書く気でしたが、7月は、新婚旅行に出ているんですよね、この二人。
という訳で、新婚旅行先での二人をお届けします。
お気に召していただければ、幸いに思います。
一言、BBSに書き込みしてから、お持ち帰りをお願いします。
上杉茉璃