幸せだから手をつなごう

 

 

         アルの身体と自分の右腕と左足を、無事に元に戻した
         エルリック姉弟は、故郷へ戻る前に、ここ中央司令部へと
         訪れていた。
         「やったな!エドにアル!!」
         ニコニコと笑いながらエドとアルの頭をワシャワシャかき回すのは、
         ヒューズ准将だ。その横では、アームストロング中佐が、感動の涙を
         流し、さらには、二人を取り囲むように、東方司令部からの知り合いである、
         ホークアイやハボック達の姿が見える。
         全員の祝福に、最初は素直に嬉しいと感じていたエドだったが、そのうち、
         絶対にいるべき人物の不在に、隣で上機嫌で笑っているヒューズに、
         エドは尋ねる。
         「ねぇ、ロイは・・・・?」
         「ロイ?誰だ?そいつ。」
         ヒューズの言葉に、一瞬キョトンとなるエドだったが、直ぐにゲラゲラと笑い出す。
         「笑えない冗談は止めろよ〜。」
         そんなエドに、困惑気味にヒューズは他の面々に尋ねる。
         「お前ら、【ロイ】って誰だか知っているか?」
         ヒューズの言葉に、その場にいた全員が首を横に振る。
         「その人、誰?姉さん・・・・・。」
         弟のアルフォンスにまで尋ねられ、エドは目の前が真っ暗になるのを
         感じた。
        





          「エディ!エディ!!」
          ロイの切羽詰った声に、エドはぼんやりと意識を浮上させる。
          「気がついたかい?だいぶ魘されていたようだが・・・・。」
          心配げに自分を見つめているのが、最愛の夫の、ロイである
          事に気づいたエドは、泣きながらロイに抱きつく。
          「ロイ!ロイ!ロイ〜!!」
          必死に自分に抱きつくエドに、ロイは一瞬惚けたが、直ぐに
          エドの身体をきつく抱き締めると、耳元で囁いた。
          「一体、どうしたんだい?」
          「んっとね・・・・夢の中にね・・・ロイがいなかったの・・・・・。
          誰に聞いても、ロイの事、知らないって・・・・・すごく、
          怖かった・・・・・・・。」
          泣きながらますます自分にしがみ付くエドに、ロイは安心させる
          ようにきつく抱き締める。
          「私はここにいるよ。いつでも君の傍にいる。」
          「ロイ〜。」
          本格的に泣き出したエドをロイはあやす様に背中をポンポン軽く
          叩く。
          「ヒューズ准将に聞いても、知らないって!!」
          ポロポロと涙を流す、愛しい妻に、ロイは優しく囁く。
          「それは、ヒューズがいけないね。朝になったら、彼に
          厳重に注意しておこう。」
          でも、一番悪いのは、私だね、君の傍にいなかった・・・・と、
          悲しそうに呟くロイに、エドは慌てて首を横に振った。
          「ロイは悪くない!悪いのは、ロイがいない夢を見た、俺だって・・・・。」
          しょんぼりと肩を落とすエドに、ロイは啄ばむようなキスを送る。
          「エディを不安にさせた私が悪いよ。大丈夫。今度は夢の中でも
          ずっと一緒だから。」
          こうして手を繋げば、大丈夫と、ロイはエドを腕の中に引き寄せ。
          そして、エドの後ろから抱き締めると、そっと右手に自分の右手を
          重ね合わせた。
          「いつも一緒だよ。エディ・・・・。」
          「・・・・・・ロイ・・・・・。」






          「好きだよ。ロイ♪」
          「私も愛しているよ。エディ。」
          その後。ロイと一緒に手を繋いで、何処までも歩いていく幸せな
          夢を、エドは見るのだった。



                                        FIN



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新婚馬鹿ップルの日常の一コマ。
翌朝のヒューズ准将に、同情・・・・・・。