ハジメ日記 ぽかぽか となみ村


                 小瓶の中の手紙編

 

 

  
            「ニャン川幕府」が倒れ、さつニャンとちょうニャンを中心とした、
            新しい「ニャン治政府」が発足された。
            その結果、最後までニャン治政府と戦った、アイヅー村は、
            となみ村へと村替えを余儀なくされてしまった。
            アイヅー村とは違い、となみ村は、ニャン治政府の
            中心からは、外れも外れの小さな孤島。村とは名ばかりの、何もない島だった。
            そんな中、最後までアイヅー村と共に戦い続けた、ニャン選組三番組組長、
            ハジメは、となみ村を発展させようと、日夜働き続けるのだった。
            そんな日常を描いた小話。

            


            そんなある日のこと。
            ハジメが海岸で、サンナンに命じられてゴミ拾いを行っていると、砂の中から小瓶を見つけた。
            「なんだ?手紙?」
            小瓶の中には、何やら手紙が入っている様子。
            ハジメは何だろうと、パカッと瓶のコルク栓を抜くと、中の紙を取り出す。
            「えっと・・・何々?」
            ハジメは、さっと手紙に目を走らせると、深いため息をついた。


      


      快適な航海をしてたら、あら大変。
    嵐にあって、無人島に流れ着いちゃった。
    おまけに食料が無くなって、困っちゃってるんだよね。   
    これを読んだ人は、食料を瓶の中に入れて、
    海に流してね♪じゃ、頼んだよ。





            



            「何なんだ・・・これは。こんな小さな瓶に入る食料などたかが知れているではないか。
            今、手元にあるのは、この毒テングダケしかないが・・・・。何もないよりは、
            多少はマシかもしれん。これで良しとするか。いや、待てよ。いくら食料を中に
            入れたとしても、無事にこのビンが、持ち主の所に辿り着くという保証はない。
            第一これは何時頃の話なのだ?」
            うーんと考え込むハジメだったが、やがてひとつため息をついて、手紙を
            元通り瓶の中に入れると、それを砂浜に埋め始めた。
            「俺は何も見なかった・・・・。」
            「ちょっと待ってって!酷いよ!ハジメ君!!」
            せっせと穴を掘って、瓶を埋めているハジメの手を、何時の間に背後にいたのか、
            元ニャン選組一番組組長、ソウジが、ガシッと掴む。
            「・・・・やはり、この手紙を書いたのは、あんたか。ソウジ。」
            フーッとため息をつく、ハジメに、ソウジは、パチクリと目を瞬かせた。
            「あれ?驚かないの?」
            「こんな事だろうと思っていた。海を漂流していた割には、瓶はおろしたてのように
            綺麗だし、第一、このふざけた文面は、お前以外いないだろう?大方、どこぞに隠れていて、
            拾った者がどういう反応をするか、こっそりと見ていたのだろう?」
            ハジメの言葉に、ソウジはニヤリと笑う。
            「なんだ。つまらないなぁ〜。でも、嵐にあって、無人島に漂流したってのは、本当だよ。
            やっとの思いでここまで来た僕に、ハジメ君ってば、冷たい。」
            「・・・・それが解せぬ。お前はコンドウ局長と共に、しえい村にいたはずであろう?何故(なにゆえ)
            こんな外れまで来たのだ?」
            ハジメの言葉に、ソウジは肩を竦ませる。
            「ハクオウ村に、ヒジカタさんとチヅルちゃんをからかいに行こうと思っただけなんだけどね。
            でも、嵐にあっちゃってさ。船はあるんだけど、何もかも流されちゃって。折角ここまで来たんだから、
            お金を稼いで、何かコンドウさんに、お土産でも買おうかと。それに、ヒジカタさん達をからかいに
            行くにも、ここを拠点にした方が、何かと都合がいいし・・・。そんな訳で、僕ここに移住することに
            決めたから、宜しくね。ハジメ君。」
            ニコニコと笑うソウジに、ハジメは思わず眩暈を覚える。
            (サンナンさんだけでも、暴走を止めるが大変だというのに、その上、ソウジまで・・・・。)
            これから始まる騒動を想像して、何か自分は呪われているのではないかと、暫くの
            間立ち直れないハジメであった。