「あのさ・・・・・。」
俺の言葉に、京一は振り返った。
「何か言ったか?ひーちゃん?」
「え?あ・・いや。何も・・・。」
俺は慌てて首を横に振った。やっぱ、改めて言うとなると、
何だか照れるな。俺は言いかけた言葉を、適当に笑って
誤魔化そうとが、京一は訝しげに俺の顔をじっと見た。
「いや。絶対に何か言いかけたはずだ。」
妙に自信たっぷりの京一に、俺は内心焦りつつも、
そ知らぬ顔で惚ける。
「え?俺が?京一、耳が悪くなったんじゃないか?」
そんな俺の誤魔化しも、京一の鋭い眼光の前には、通用しなかった。
「言えよ。」
心なしか、京一の眼がだんだんと据わってきた。
「・・・・嫌だ。」
素直に言えばいいのに、何故かむきになってしまい、俺は横を向く。
そんな俺に、京一はやれやれとばかりに、ギュッと俺の身体を
抱き締めた。
「言えって。」
先ほどの声より、幾分トーンを落として、京一は俺の耳元で囁く。
「嫌だ。」
心地好い京一の声に、俺はうっとりと目を閉じた。
「言えよ。」
クスクス笑いながら、京一は再度尋ねる。
「嫌だ。絶対に言わない。」
対する俺も、クスクス笑いながら、京一の首に腕を回す。
「言わないと、ずっとこのままだぞ?」
京一の言葉に、俺はさらにクスクス笑う。
「いいよ。ずっとこのままで。」
俺は、閉じていた眼を開けると、二ヤリと微笑む。
「・・・いいのか?」
一瞬、驚きに目を見張る京一に、俺は掠めるように、京一の唇に、
己の唇を重ね合わせた。
「・・・いいよ。だって、今日は京一の・・・・。」
皆まで言わせず、京一は、荒々しく唇を重ね合わせてきた。だんだんと
激しくなっていく口付けに、俺は身体の力を抜くと、そっと京一に凭れ
掛かった。
“京一・・・。誕生日・・・おめでとう・・・。”
俺は、先ほど照れて言えなかった言葉を、心の中でそっと呟くと、
京一の背中に腕を回した。
FIN.