誰よりも君を愛す・・・・。 

 

 

               誰よりも君を愛す。
               今まで君が出会った人間よりも。
               これから君が出会う人間よりも。
               他の誰よりも、君を愛する。

               だから・・・。  

 

               「なぁ、ひーちゃん。」
               京一は、そっと龍麻の身体を引き寄せると、その耳元で囁いた。
               「・・・・・。」
               だが、龍麻は、硬く目を瞑って、微動だにしない。そんな龍麻の
               様子に、京一はクスクス笑う。
               「起きてんだろ?ひーちゃん。」
               そして、その口元に軽くキス。
               「・・・・寝てるぞ。」
               小声で呟く龍麻に、京一は、さらにきつくその華奢な身体を抱き締めた。
               「・・・・きついよ。京一・・・。」
               龍麻の抗議の声を無視して、抱き締める腕に力を込める。
               「・・・・愛している。龍麻・・・。」
               京一は、龍麻の首筋に顔を寄せる。
               「・・・駄目だって・・。きょう・・い・・・ち・・・。」
               龍麻は、身体を捻らせて、京一から逃れようとする。
               「離れるなよ。龍麻・・・。」
               京一は、さらに龍麻の身体を逃がさないように、己の下に組み敷いた。
               そして、肉食獣のように、龍麻の首筋に歯を立てる。
               「・・・・痛い・・・。」
               龍麻の声に、京一は満足そうに微笑む。
               「・・・このまま食べてしまいたいぜ・・・。龍麻・・・・。」
               そう言って、再び京一は龍麻の首筋に顔を埋める。
               「なに・・言って・・・。」
               龍麻は、京一の首に腕を回す。
               「・・・そうすれば・・・なのに・・・。」
               「な・・に・・・?」
               小声で呟く京一の声が聞き取れず、龍麻は聞き返すが、京一は
               笑ったままだ。
               「何を・・・?」
               再び問い掛ける龍麻に、京一は黙って行為を再開する。
               「・・・っっ・・・、きょ・・ういち・・・。」
               我慢できなくなって、龍麻は京一にしがみつく。だんだんと思考が
               はっきりとしなくなり、自分だけを求め続ける龍麻に、京一はニヤリと
               笑う。

               愛している。
               龍麻・・・。

               想いを込めて、京一は龍麻に囁き続ける。
               龍麻の細胞一つ一つに教え込むように。
               決して忘れないように。

               自分はいつでも、傍にいる。
               だから・・・。
               俺以外に心奪われないでくれ・・・。

               それは儀式。
               二人がこれからも、ずっと一緒にいられるための。

               夜毎秘めやかに行われるその儀式を、月が静かに見下ろしていた。



                                                    FIN.