「映画のような恋がしたい。」
突然の龍麻の言葉に、京一は読んでいた雑誌から、
顔を上げる。
「映画のような?」
訝しげな京一に、龍麻は大きく頷く。
「うん。」
「恋?」
「勿論♪」
ニコニコと笑う龍麻とは対照に、京一の機嫌は
急降下する。
「なんで?」
不貞腐れた京一に、わざとなのか、龍麻は
きょとんとした目で京一を見つめる。
「京一、嫌なのか?好きじゃない?」
「嫌とか、そんなんじゃなくってだなぁ・・・・。」
ボソボソと呟く京一に、龍麻は、みるみるしょんぼりと
肩を落とした。
「わかった。京一が嫌なら、もういい。
・・・・・・・壬生に頼む。」
「・・・・・なんでそこで壬生が出てくるんだよ。」
言うなり、京一は龍麻の腕を取ると、自分の方へ
引き寄せる。
「ちょ!!京一!!」
いきなりの事に、対処できずに、京一の胸に抱き寄せられた
龍麻は、抗議しようと顔を上げた瞬間、深く京一に唇を
重ね合わせられた。
「ん・・・・・っ・・・・。」
京一の背中を叩くが、ますます深く口付けられ、龍麻は
堪らず、京一の背中に縋るように手を回す。
「・・・・・龍麻・・・・。」
漸く唇が離され、ぐったりとした龍麻を、京一はきつく
その身体を抱き締めた。
「俺じゃ、不満なのか?」
「なに・・・・言って・・・・・。」
息を整える龍麻は、京一が怒っている理由が判らず、
困惑する。
「俺よりも壬生を選ぶっていうのなら、こっちにも
考えがあるぜ。」
「ちょ!京一!!」
言うなり、龍麻の首に噛みつくように、唇を寄せる。
「落ち着けって!京一!!たかが映画に、
何トチ狂ってんだよ!!」
「映画?」
龍麻の言葉に、京一の動きが止まる。
「京一、何考えてた?」
思いきり不信な目を向ける龍麻に、京一は
訳が判らず混乱した目を向けた。
「えっとー。龍麻さんは、【映画のような恋がしたい】んでは
ないんですか?」
何故か丁寧口調に変わる京一に、龍麻は深い溜息をつく。
「俺は、京一と一緒に、【映画のような恋がしたい】っていう
映画を見たいんだけど?」
人の話を全く聞いてなかったな!と、睨む龍麻に、
己の勘違いに気づいた京一は、ハハハと乾いた笑いを浮かべる。
「そっか。ハハハ。俺はてっきり・・・・・。」
「あ〜あ。恋人の話を聞かない奴と【映画のような恋】は
無理だよなぁ。」
わざと溜息をつく龍麻に、京一は居心地が悪そうに、
肩を竦ませた。
「悪かったって。でもさ、ひーちゃん、【映画のような恋】って、
してみたいんじゃねぇか?」
だから、そんな映画を見たいんじゃねーか?と
拗ねたように尋ねる京一に、少し苛め過ぎたかと、
龍麻は苦笑する。
「っていうかさー。【映画のような恋】をしてみたいんじゃなくって、
俺は【京一と恋をしたい】。京一と恋が出来るなら、それが
【映画のような恋】だろうが、何だろうが、構わないんだけど?」
京一は違うのか?と目で言う龍麻に、京一はニヤリと笑う。
「あのなー。俺とひーちゃんの恋が、【映画のような恋】な訳
ないだろ?【映画よりもすごい恋】に決まっているんだろ?」
京一の言葉に、龍麻はにっこりと微笑む。
「で?その結末は?」
京一はゆっくりと龍麻の唇を塞ぐ直前、龍麻の耳元で囁いた。
「んなもん、【ハッピーエンド】に決まってんだろ・・・・・?」
FIN
【上杉コメント】
ただのバカップルになってしまいました。
久々に書いたから、調子がでないです。