<前回のあらすじ> 美里「うふふふ。とうとう私の計画を実行に移す時!」 美里の合図で、数人の女生徒が、龍麻に襲いかかる! 龍麻「あ〜れ〜。」 京一「ひーちゃん!!」 慌てて、龍麻を救おうとする京一を、何故か止める壬生。 京一「何故だっ!」 壬生「ふっ。」 自称、龍麻親衛隊でも1・2を争う壬生が、何故龍麻を見殺しにするのかっ!! 疑問を含んだ京一の視線に、壬生はニヤリと不敵に笑う。 龍麻「京一〜。」 涙声の龍麻の声に振りかえると、そこには、メイド姿の龍麻の姿が!! 龍麻の可憐なメイド姿に、悩殺者約一名。さて、龍麻の運命は、いかにっ!! ******************************** 「一体、何がどうなっているんだっ!!」 京一は、ヴァンパイアの衣装のまま、学園内をひた走る。 「折角、ひーちゃんと二人だけで、楽しもうと思っていたのにっ!!」 悔やんでも悔やみきれない。美里の計略に、まんまと嵌ってしまった自分に怒りを感じ、 京一は自然眉間に皺を寄せる。 「ひーちゃん。どこ行ったんだ・・。」 早く見つけなければ、休憩時間が終わってしまう。 「ったく・・。全てあいつらのせいだ!!!」 “あいつら”の事を頭に浮かべ、京一は新たに怒りが込み上げてくる。 「・・・後で全員再起不能にしてやる!!」 恋する男は、恋人の姿を求め、走るスピードを早めた。 「さぁ、休憩時間だね・・・。」 時間を遡ること、数十分前。漸く人波も途切れ、そろそろ休憩の時間に入ろうとした龍麻の 前に、壬生がニコニコと笑いながら、やって来た。 「壬生・・・。」 対する龍麻の視線は冷たい。自分にこんな格好をさせる一端を担っているだけに、当然と 言えば当然の反応だが、いかんせん、壬生は目の前の事で頭が一杯で、そんな龍麻の 様子に気がつかない。 「さぁ、二人っきりで、校内を回ろうか。」 そう言って、龍麻の身体を引き寄せようと、腕を伸ばした途端、何かが飛んできて、慌てて 腕を引っ込めた。 「一体、何を!!如月さん!」 飛んできた物が、手裏剣だったために、壬生は後ろを振り向くと、闇の中、睨みつけた。 「フッ。僕の龍麻に、一体何の用だい?」 闇から現れた如月に、壬生は冷たい視線を向ける。 「“僕の龍麻”?一体、いつから龍麻が如月さんのモノになったんですか?」 「そんなの、ずっと前からさ。」 壬生は、慎重に如月との間合いを取る。対する如月は、懐から手裏剣を取り出すと構えた。 「それは、初耳ですね。」 ジリッと、壬生は一歩踏み込む。 「それは、情報不足というもの。第一、今から僕と龍麻はデートなのだから、邪魔をするのは 止めて貰おうか。」 スッと、如月は横に動く。 「邪魔をするのは、あなたの方でしょう。龍麻は、今から僕とデートする約束があるんです。」 ピタリと如月の動きが止まる。 「約束?」 勝ち誇った笑みを浮かべながら、壬生は頷いた。 「ええ。マネージャーの美里さん公認ですよ。メイドの服を縫ったら、龍麻とデートできる 時間をくれるって・・・。」 「ちょっと、待て!僕も美里さんから、アンティークを無料レンタルにしたら、龍麻とデート 出来る時間を・・・。」 ハッとなって、如月と壬生はお互いの顔を見合わせた。 「しまったっ!あの女!!」 「やられたっ!!」 数秒間固まった二人だったが、最初に復活したのは壬生だった。 「こうなったら、龍麻自身に選んでもらいましょう・・。」 「ああ。どちらが選ばれても、恨みっこなしだな・・・。」 二人の間に火花が散る。 「さぁ、龍麻・・・。」 「壬生と僕、どちらを・・・。」 にっこりと微笑みながら、龍麻を振り返る二人だったが、そこに肝心の龍麻の姿がない ことに気が付き、呆然となる。 「よぉ、ひーちゃん。待たせたな!」 そこへ、京一がニコニコと笑いながら現れるが、如月と壬生の二人の姿に、警戒を露にする。 「壬生!如月!お前等・・・。ひーちゃんを、どこに隠したっ!!!」 京一の怒鳴り声に、壬生と如月は力なく呟く。 「龍麻が・・・。」 「・・・いなくなった・・・。」 その言葉に、京一の怒りは頂点に達する。 「なんだとぉおお!!ひーちゃん!」 慌てて出ていく京一の姿に、ハッと我に返った二人は、お互いに睨み合った。 「如月さん、龍麻を捕まえた者が、デート出来るというのはどうです?」 「フッ。臨むところだっ!」 不敵な笑みを浮かべ、二人はそれぞれ、自分のカンの信じる方向へ散っていった。 「もう・・。嫌だ〜。」 さて、一方、龍麻の方はと言うと、半べそになりながら、学園内をさ迷っていた。 「龍麻サン!」 その声に、顔を上げると、雷人がニコニコと手を振りながら、向こうから歩いてきた。 「いやぁあ。龍麻サンの方から来てくれるなんて、感激だなぁ!」 訳が判らず、龍麻はキョトンと首を傾げた。 「美里さんから、無料で出演してくれれば、龍麻サンとデート・・・。」 「雨紋・・・。お前もかーっ!!」 見る見るうちに大粒の涙を流すと、龍麻はそのまま走り出した。 「アッ、龍麻サン!!」 雷人の静止を振りきって、龍麻は人込の中に姿を消した。 「一体、ひーちゃんは、何処に・・・。」 体育館も、屋上も、思いつく所は全て捜した。後は・・・。 「いや、待てよ・・・。もしかして・・・。」 ある場所を思い出し、京一は元来た道を引き返した。 「京一〜。」 京一のお気に入りの木の上に登って、龍麻は一人泣いていた。 「京一〜。俺、もう嫌だ〜。」 京一の≪氣≫が溢れている為か、少し落ち着くことが出来たが、側に京一がいない ことが、余計に感じられて、先ほどから涙が止まらない。 「ひーちゃん!!」 ハッと我に返った龍麻が、下を見下ろすと、息を切らせながら、京一が自分を見上げて いた。 「京一・・・。」 「待ってな。今、そこに行く!!」 そう言うと、京一は素早く樹に登ると、龍麻の横に腰を下ろした。 「京一!!」 耐えきれずに京一の胸に飛び込む龍麻を、京一は優しく抱きとめる。 「ごめんな。偉そうなこと言ったのに、ひーちゃんを守りきれなくって。」 京一の言葉に、龍麻は無言で首を振る。 「違う!京一のせいじゃ・・・。」 泣きじゃくる龍麻の髪を、京一は優しく撫でる。 「ひーちゃん。あんまり時間がねぇけど、俺と一緒に校内を回ってくれるか?」 「・・・この格好で?」 上目遣いで見つめる龍麻に、京一は苦笑する。 「俺だって、こんな格好だぜ?」 「でも・・・・。」 渋る龍麻に、京一はニヤリと笑った。 「わかった。じゃあさ、休憩時間中、ずっとこのまま、ここにいるのはいいだろ?」 「うん!」 ニッコリと微笑む龍麻に、京一は、掠めるように口付けする。 「京一!」 「へへっ!これくらいいいだろ?」 そう言って、再び龍麻に口付けしようとした時、下から邪魔者2名の叫び声が聞こえた。 「見つけたぞ!」 「龍麻!!」 下を見下ろすと、如月と壬生の姿があった。 「やべぇ!行くぞ!ひーちゃん!!」 「えっ!京一!?」 京一は素早く龍麻の身体を抱き上げると、そのまま樹を飛び降り、走り出した。 「待ちたまえ!!」 「待つんだッ!」 慌てて二人を追う壬生達。その騒動を聞きつけ、わらわらと龍麻親衛隊のメンバーが現れる。 「龍麻サン!」 「アニキーッ!!」 「先生ッ!!」 手に、各々の武器を持って、京一に襲いかかろうとするのを、生徒会室から、美里は微笑み ながら見つめていた。 「さて、次はどんな手を使おうかしら・・・。」 トントン・・・。 そこへ、控えめなノックをして、生徒会役員が恐る恐る入ってきた。 「会長・・・。人気投票の中間報告が・・・。」 「ありがとう。そこの机の上に置いて頂戴。」 ニッコリと微笑む美里に、役員は素早く報告書を置くと、慌てて部屋を後にした。 「・・・何を慌てているのかしら?まぁ、いいわ。」 美里はゆっくりと報告書を捲る。 「やはり、アン子ちゃんは、やるわね。龍麻くん写真館は、第3位ね。」 メイド姿の龍麻と一緒に写真を!を誘い文句に、3−Cお化け屋敷の受付の横に、即席の コーナーを作って、荒稼ぎをしているようだ。美里はパラリと報告書を1枚捲った。 「で、第1位は・・・・・。な・・なんですってぇえええええ!!」 次の瞬間、美里の絶叫が生徒会室に響き渡る。 「第2位、3−Cのお化け屋敷。そして、だ・・第1位が・・・オカルト研究部〜!!」 その頃の、オカルト研究部。 「う〜ふ〜ふ〜。次〜の〜人〜。ど〜ぞ〜。」 真っ暗な部室に、扇子で顔を隠しながら、東の陰陽師の頭領が、裏密と向かい合わせに座る。 「ここは、相性を上げてくれると、聞いてきたのだが・・・。」 「う〜ふ〜ふ〜。ミサちゃんに〜、不可能は〜な〜い〜よ〜。」 不気味に笑う、裏密に、御門は意を決したように口を開く。 「で・・では、私と龍麻さんの相性を・・・。」 「う〜ふ〜ふ〜。御門くんの心〜、緋勇くんに〜届け〜!ラ○ラ○フラ〜シュウ〜ッ!!」 「フッ。これで、龍麻さんは、私のもの・・・・。」 ・・・その日、一日、オカルト研究部は、大盛況だったそうである。 終わり! ******************************** さて、この続きは、「後夜祭」をご覧下さい! |