「綺麗だな・・。花火・・・。」 電気の消えた部屋の中、龍麻はテレビに映る 花火をうっとりと眺めた。 「ごめんな。ひーちゃん。」 龍麻の隣では、京一がすまなそうな顔で 龍麻の肩を引き寄せた。 「何で京一が謝るんだ?」 不思議そうな顔で、龍麻は京一の顔を覗き込む。 「う・・それは・・・その・・・。」 途端、口篭もる京一に、龍麻の眼が光る。 「京一。何か怪しい。」 「なっ・・・!!何を言っているんだ? ひーちゃん。俺は別に・・・。」 龍麻はニッコリと微笑んだ。 「ただ・・・何?」 菩薩眼直伝、眼で相手を居のままに従わせる方法 その一を、龍麻は京一に行う。 途端、蛇に睨まれた蛙よろしく、京一はだらだらと 冷や汗を流す。 「俺に隠し事するんだ・・・。京一・・・。」 ちょっと拗ねてみせる龍麻に、京一は早々と降参する。 「悪かったよ。そんなに拗ねるなよ。ひーちゃ・・・。」 いきなり口付けしてきた龍麻に、京一は戸惑うが、 それは一瞬の事で、直ぐに龍麻の唇を堪能する。 「ん・・っ・・きょう・い・・・ち・ぃ・・・・。」 「龍麻・・・。」 荒々しく龍麻の口内を侵しながら、京一は龍麻のパジャマのボタンを器用に外すと、 胸に手を滑り込ませた。 「あっ・・・・。」 龍麻の敏感な場所を攻めながら、京一はゆっくりと龍麻を フローリングの床に押し倒した。 「ねぇ・・京一・・・。」 テレビから聞こえる花火の音を聞きながら、うっとりと眼を閉じていた龍麻は、 指を忙しく己の胸に舌を這わせている京一の髪の毛に絡ませながら言った。 「京一、俺に無断で、皆からの誘いを断ったでしょう。」 途端、ピクリと京一は動きを止め、ゆっくりと上半身を起こす。 テレビから漏れる明かりが、京一の顔に暗い影を作り、 その表情は窺い知れない。 どれだけ時が経ったのか。 それとも一瞬だったのか。 それは二人には判らない。 気がつくと、龍麻は微笑みながら、京一の首に 腕を回すと、その耳元で囁いた。 「俺も、京一に無断でみんなの誘いを断ろうと した。」 京一に先を越されてしまったけどと、龍麻は 無邪気に笑う。 「ひーちゃん・・・。」 相変わらずその表情は見えないが、幾分気を良くした らしい京一に、龍麻はさらに抱きつく。 「だって・・・。俺、京一と二人っきりで 過ごしたかったんだ。」 それって、いけないこと? 尋ねる龍麻に、京一は龍麻の身体をきつく抱き締める 事で、自分の想いを伝える。 「愛している。・・・。龍麻・・・。」 暗闇の部屋に、テレビの中の花火が大輪を咲かせる。 「俺も好き・・・。京一だけが・・・。」 花火にまけず劣らぬ美しい微笑みで、龍麻は囁く。 ゆっくりと重なり合う二人を祝福するかのように、 テレビの中の花火が狂い咲く。 「ねぇ、京一。」 「何だ?ひーちゃん。」 「次の花火大会は、二人っきりで行きたい・・・。」 「あぁ・・・。約束だ。ひーちゃん・・・。」 京一は、再び龍麻の唇を貪りながら、リモコンでテレビを消した。 そして暗闇の中、京一の為だけに咲く花を、京一は思いっきり抱き締めた。 約束しよう。 二人だけで花火を見よう。 夜空に花火を 両手に君を抱き締めて。 そして、僕は君にキスをする。 FIN |