HAPPY HAPPY BIRTHDAY

 

 


          「眠い・・・・・。」
         睡魔と戦いながら、俺は必死に起きていた。
         隣では、京一が安らかな寝息をたてている。俺も眠りたいのだが、
         明日(正確には、あと5分ほどで日付が変わるのだが・・・・。)は京一の誕生日。
         絶対に一番にお祝いを言いたくって、俺は先程から頑張って起きているのだが・・・・。
         うううう・・・・やはり眠い・・・・・。よくよく考えたら、こんなに気持ち良く眠っている
         京一を起こすのって、かなり可哀相かも。やっぱ、寝不足は駄目だよな。
         夜は、やはりきちんと寝なければ。うんそうだ、そうしよう。
         そう思い、俺は眠りにつこうと、寝返りを打ったとき、京一の携帯が鳴った。
         時計を見ると12時丁度。嫌な予感がして、携帯の画面に表示されたナンバーを見ると、
         案の定、霧島からの電話だった。
         「ちっ、霧島の奴、こんな時間にかけてくるなんて、非常識にもほどがある。
         京一が起きたら可哀相だろ?」
         つい先程まで、自分も同じ事をしようとしていたのだが、この際関係ない。 
         俺は携帯を手に取ると、非情にも電源ボタンを押し、さっさと電話を切った。 
         ふう、これで良く眠れる。
         「う・・・ん・・・・。ひーちゃん・・・。どうしたんだ?」
         やばい。京一が今の音で目が醒めたらしい。
         「え?何でもないよ。それより・・・・・。」
         だが、俺の悪事は数秒後に明らかにされた。再び、まだ俺の手の中にある携帯が
         鳴り出したのだ。
         「それ、俺の携帯じゃないか。」
         京一の訝しげな顔に、俺は内心冷や汗をかく。
         「そ・・・それは・・・・。」
         「まぁ、いいか。ったく、誰だぁ。こんな夜中にかけてくる奴は。」
         ブツブツ文句を言いながら、手を伸ばしてくる京一に、俺はしぶしぶ携帯を渡した。
         霧島に先を越されるくらいなら、さっさと京一を起こせば良かった・・・・。
         いいや、もう寝よう。
         がっくりと肩を落としてベットに入る俺を、京一はいきなり抱き寄せた。
         「き・・京一?電話が・・・・。」
         京一は電話に出ずに、携帯の電源をOFFにすると、俺の顔を覗きこんだ。
         「どうせ、諸羽からの電話なんて、大した用じゃねぇからな。そんなことより、
         俺はひーちゃんの方が心配。何落ち込んでんだよ。」
         「何って、別に・・・・。」
         「龍麻・・・・。何、拗ねてんだ?」
         京一は俺の耳朶を甘噛みしながら、ゆっくりと俺を押し倒した。
         「素直に言わねぇと、今夜は絶対に寝かせねぇぞ。」
         などと、脅迫までする。
         「別に・・・・大したことじゃないから・・・・。」
         「いいから、言えよ。大したことだろうが、大したことじゃないだろうが、
         そんなのどっちでもいい。俺は何時でも、ひーちゃんの言いたいことを、
         受け止めることにしてるんだぜ?」
         それが、この前の喧嘩の教訓だ。と、京一はニヤリと笑いながら、言った。
         う・・・ん、それもそうだな。言いたいことが言えなくなったら、お終いだもんな。
         「実は・・・・。」
         意を決して俺は口を開きかけた。だが、やはり本人を目の前に、改まっていうのは、
         何だか恥ずかしい。
         「実は?」
         京一の先を促す声に、俺は思いきって言うことにした。
         「京一、誕生日おめでとう!って、誰よりも一番先に言いたかったんだ・・・・。」
         真っ赤になって俯く俺を、京一はきつく抱きしめた。
         「京一?」
         「嬉しい・・・・。嬉しいぜ、ひーちゃん。ありがとう。」
         京一は嬉々として、俺のパジャマを脱がしていく。ちょっと待て、まさか・・・・・。
         「へへっ、ひーちゃんが、こんな可愛いこと言ってくれるなんてな。
         お礼に、今日は朝まで寝かせないぜ、龍麻。」
         ・・・・こうして、俺の安眠はなくなった・・・・。


                午前0時を過ぎたら イチバンに届けよう
                HAPPY BIRTHDAY
   
                出会えて良かった 素直に言える一年で一度の日

                誕生日おめでとう



                                          FIN.