初日の出

 

 

             「ねぇ・・・。今、何時?」
             龍麻の言葉に、京一は腕時計を見つめる。
             「午前6時55分。あと、5分ってとこだな・・・・。」
             時計から目を離して、龍麻を見つめると、丁度身震いしている所だった。
             「悪ィ・・・。やっぱ、寒いか?」
             心配そうに、自分の顔を覗き込む京一に、龍麻は、首を振った。
             「大丈夫。京一のお陰で、そんなに寒くない。」
             そう言って、龍麻は京一の胸に頭を乗せる。そんな龍麻の肩を、京一は
             引き寄せると、その華奢な身体に、自分達を包んでいる毛布を、そっとかけ直した。
             「それじゃあ、京一の方が寒・・・・。」
             遮られた言葉は、京一の口の中。
             「京一〜!」
             真っ赤になって、上目遣いで自分を軽く睨む龍麻に、京一は笑いながら、
             その身体をますます引き寄せた。
             「ひーちゃんを抱いているからな。すっげぇ、暖かいぜ。」
             「・・・・俺って、人間カイロ?」
             「違うって・・・。」
             京一は、もう1度龍麻の唇を塞ぐ。
             「俺の、大事な恋人・・・・。」
             真顔で、そんな恥ずかしい事をさらっと言える京一に、龍麻はますます紅くなる。
             「そ・・・そんな事より、もう少しじゃないか?」 
             照れ隠しに、空を指差すと、丁度、ビルの隙間から、太陽が出る瞬間だった。 
             「綺麗・・・・。」
             紫色の空に、強烈なる光を放ちながら、太陽は、ゆっくりとその姿を現した。
             神々しいまでのその姿に、京一と龍麻は時を忘れて見惚れる。
             「あぁ・・・。綺麗だな・・・。」 
             京一の感嘆の声に、龍麻はゆっくりと頷く。
             「・・・・ありがとう。京一・・・。」
             龍麻の言葉に、京一は龍麻を見つめる。
             「これを教えてくれて・・・。」 
             にっこりと微笑む龍麻に、京一も穏やかに微笑む返す。
             「ガキの頃、偶然に見た初日の出が、メチャクチャ感動ものでさ・・。」
             京一は、龍麻を引き寄せた。
             「その時思ったんだ・・・。<特別>な人と、絶対に見ようって・・・。」
             京一は、龍麻の顔を覗き込んだ。
             「気に入ったか?」
             京一の言葉に、龍麻は大きく頷く。
             「勿論・・・。」
             そこで、言葉を切ると、龍麻は京一の頬に唇を押し当てた。
             「・・・・あけまして、おめでとう・・・。京一・・・。」
             真っ赤になる龍麻に、京一は、ニヤリと笑う。
             「あけまして、おめでとう・・・。龍麻・・・。」
             京一は、微笑みながら、ゆっくりと龍麻に顔を近づけた。


             あけましておめでとう!
             初日の出に誓おう。 
             これからも、ずっと一緒だと・・・。



                                                FIN,