I miss you・・・・。 あなたに逢いたい・・・。 I miss You・・・・。 逢いたいよ・・・・。 I miss you・・・・。 ・・・・・・。 本来、決して逢うことのない魂・・・。 でも、もしも出会ってしまったら、それはもう、<運命>なのだろうか? それとも、<想い>が見せた<夢>・・・・・? I miss you ・・・。 I miss you ・・・。 I miss you ・・・。 この<想い>が、<真実>になる頃、 <夢>は、<現実>となる・・・・。 1999年、春・・・・。 「紅葉!!」 その声に、壬生紅葉は歩みを止めると、ゆっくりと振り返った。案の定、3ヶ月前に<道場>に通い始めた、緋勇龍麻が、自分に向かって走ってくる。壬生は極上の笑みを浮かべると、龍麻が自分に追いつくのを待った。 「龍麻?どうしたんだい?そんなに慌てて・・・。」 肩で息をする龍麻を、壬生は気遣うように肩に腕を回すと、そのままゆっくりと歩き出す。 「だ・・だって・・・。今日で、ここに通うの最後だから、ちゃんと紅葉に、お礼が言いたかったんだ・・・。」 今日で最後という言葉に、壬生は驚いて、歩みを止めた。 「・・・最後・・・?」 「うん。」 龍麻は頷くと、真剣な表情で、壬生を見つめた。 「明日から、俺は新宿へ転校するんだ。」 「転校?新宿へ?お父さんの転勤か何かで?それにしても、明日からだなんて、急じゃないか?」 壬生の矢継ぎ早の質問に、龍麻は苦笑する。 「・・・鳴瀧さんから、何も聞いていない?」 「鳴瀧館長?いいや?」 壬生の言葉に、龍麻は溜息をつく。 「・・・そっか・・。壬生は・・・・じゃないんだ・・・。」 「龍麻?」 小声で呟く龍麻に、壬生は訝しげに問い掛ける。 「僕が、何だって?」 その言葉に、龍麻はハッと我に返ると、笑って誤魔化す。 「ううん、別に何でもない。そ、そうなんだよ。急に決まっちゃって・・・。」 壬生は、暫く探るように龍麻を凝視していたが、やがて溜息をつくと、質問を再開した。 「で?転校先は何て学校なんだい?」 「えっと・・確か・・・・。」 考え込む龍麻に、壬生は呆れた顔をする。 「明日から通うのに、覚えていないのかい?」 「・・・・・。」 図星を指されて、龍麻は真っ赤になる。 「・・・今日、家に帰れば、判るはずだけど・・・・。」 「・・・・。判った。僕の通っている拳武館は、葛飾区だから、新宿にすぐ出て来れるよ。落ち着いたら連絡をくれ。休日にでも会おう。」 その言葉に、龍麻は本当に嬉しそうに微笑んだ。 「・・・紅葉。本当に、今までありがとう。短い間だったけど、一緒に稽古できて、嬉し・・・・・。危ない!!」 壬生の背後で、何かを見つけたのか、龍麻は血相を変えると、慌てて走り出した。 「龍麻!!」 一瞬の出来事。我に返った壬生が、慌てて振り返ると、そこには、ガードレールに激突した大型トラックと、道の真ん中で猫を懐に抱いた龍麻が、頭から血を流して倒れていた。 「龍麻・・・龍麻!!!」 騒ぎを聞きつけ、わらわらと集まってくる野次馬を掻き分け、壬生は龍麻の側までくると、がっくりと膝を落とした。 「なんで・・・龍麻・・・・。」 取り敢えず、救急車が来るまでに、壬生は手早く応急処置を施す。 「龍麻!しっかりしろ!龍麻!!」 壬生は溢れる涙を拭いもせずに、じっと龍麻の顔を見つめつづけた。 “俺・・・どうしたんだろう・・・・。” 暗闇の中、ぼんやりと龍麻は立っていた。 “確か・・・猫を助けようとして・・・・。” そこで、龍麻は急に頭痛がして、その場に座り込んだ。 “俺・・死ぬの・・・か・・・?” じわりと、龍麻の心に恐怖心が芽生える。 自分はこのまま死んでしまうのだろうか・・・。 まだ、何もしていないのに・・・・? ・・・・・。 ・・・・・。 ・・・・・。 嫌だ・・・・。 嫌だ・・・・。 嫌だ!嫌だ!嫌だ!! 俺は、生きたい!!生きたいんだ!! その時、突如光の洪水が現れ、龍麻を飲み込んでいき、龍麻はゆっくりと意識を手放した。 光りに包まれる瞬間、龍麻は誰かの声を聞いた気がした。 “クククク・・・。全ては<宿星>の導くままに・・・・・。” 「・・・・・気のせいか・・・・?」 蓬莱寺京一は、誰かの声を聞いたような気がして、振り返った。 だが、振り返っても、見知った顔はいない。京一は溜息をつくと、再び歩き出した。 「・・・かったりぃなぁ・・・。サボるか・・・・。」 空は雲一つ無い青空で、こんな日は学校に出ずに、のんびりと過ごしたくなるのが、人情ってものである。 「よし!決めた!」 そう呟いて、クルリと方向転換し様とした所を、襟首を掴まれる。 「何が“決めた”なんだ?京一?」 「うっせぇなぁ。離せよ。醍醐。」 キッと後を睨みつけると、醍醐雄矢が、ははははっと笑いながら、京一の襟首を掴んでいた。 「どうせ、お前のことだ。サボるつもりなんだろう。駄目だぞ。京一。校門をくぐってしまったのだから、観念して授業に出るんだな。」 「・・・でもよぉお。」 なんとか醍醐の手から逃れた京一だったが、何か言いかけた時、背後からバシッと背中を叩かれた。 「痛ってぇええええ!!」 「おっはよう!醍醐君。京一!」 「うふふふ。おはよう。」 ニコニコと微笑んで、桜井小蒔と美里葵が佇んでいた。その腕力から、どうやら京一の背中を叩いたのは、小蒔のようである。京一に向かって不敵な笑みを浮かべている。 「何?まさか、サボるつもりじゃないよね!京一?」 「う・・・。だってよぉ、やってられっか。」 京一は拗ねたように顔を背ける。 「こんないい天気なんだぜ?」 「京一・・・・。だからって、授業初日からサボるのはどうかと思うぞ?」 醍醐の言葉に、小蒔も頷く。 「そうだよ。京一。真面目に勉強したら?単位が危なくって、卒業できなくっても、知らないぞぉ。」 「・・・うっせえ。ああ。可愛い転校生が、うちのクラスに来ねぇかなぁ・・・。」 「うふふふ。残念ね、京一君。転校生が来なくって。」 「第一、3年のこの時期に、転校生が来るわけないだろ?」 美里と小蒔の両方から、からかわれて、京一はますます不機嫌になり、横を向く。 “・・・あれ・・・・?” その時、丁度校庭の櫻の樹が目に入り、そこに佇む1人の生徒と目が合った。 ドキッ・・・・・。 一瞬、視線が絡み合う。舞い散る櫻の樹の下に佇む麗人。その幻想的な光景に、京一は思わず息を飲む。 「京一?どうしたの?」 立ち止まったままの京一に、小蒔は振り返ると、声をかける。 「今・・そこに・・・。」 ハッと我に返った京一が、再び櫻の樹の下を見るが、何故かそこには誰も立っていなかった。 “今・・・確かに・・・・。” 呆然と佇む京一に、小蒔はやれやれと肩を竦ませると、京一を見捨てて、醍醐と美里と共に歩き出した。 「ねぇ、そう言えば、今日だよね。転校生が来るの♪」 「え・・・・?」 小蒔の言葉に、美里は一瞬驚いた顔をしたが、やがてクスリと笑った。 「え・・ええ。そうよ。楽しみね。どんな人かしら。」 そんな二人の会話を聞いた醍醐は、一瞬違和感を感じたが、直ぐに話に加わった。 「・・・まぁ、なんにせよ。早く慣れてくれれば・・・・。」 “どうかしている。昨日、マリア先生が言っていたじゃないか。転校生が来ると・・・。” 何故、転校生という言葉に違和感を感じたのか・・・・。醍醐は心に広がってくる不安を打ち消すように頭を払った。 |