世界で一番、お前が好き  番外編

 

             引 力

 

世界で一番、お前が好き。
誰にも渡したくない。
そう、誰にも・・・・・。



初めてひーちゃんに出会った時、俺は引力を感じた。
引力に導かれるように、俺はひーちゃんから目が離せなくなった。
ひーちゃんの声。
ひーちゃんの姿。
ひーちゃんの香り。
普段の何気ない生活の中で感じる、緋勇龍麻という存在に、俺は全神経を尖らせた。挙句に、ひーちゃんが触れたものすら愛しいと感じるようになった。
・・・・・マジで、ヤバくねぇ?
この、自他共に認める、真神一の伊達男、蓬莱寺京一ともあろう者が、たった1人の存在に、雁字搦めになっている。
・・・・だがな、そういった事が、すごく心地いいんだ。
この感覚、わかるか?
だってよぉ、世界でたった一つのものを見つけたんだぜ?
たった一つの、かけがえのない存在。緋勇龍麻。
その存在全てを、自分のものにしてぇ。
そんな想いは、どうやら俺だけではないようだ。
毎日のように、ひーちゃんに会いに来る者が、後を絶たない。
まぁ、その想い、わかるけどよ。
でも、こればっかりは譲れない。
俺はひーちゃんを愛している。
愛しているんだ。
そんなライバルとの牽制の中、俺はあることに気づいた。
ひーちゃんの様子が変だ。
一体、何があったんだ。
何故、笑ってくれないんだ?
どうして、俺を避けるんだ?
言いたい事は、山のようにあった。
だが、俺がいくら訳を聞いても、ひーちゃんは何も言わない。
・・・・・嫌われたか?
そう思ったが、どうやらそうではないらしい。
その頃からだ、ひーちゃんの視線を感じるようになったのは。
ひーちゃんが、俺を見てくれる。
それがどんなにゾクゾクするほど嬉しいか、多分口で言ってもわかんねぇだろうな。
だが、同時に思う。
何故、ひーちゃんは苦しそうなんだろうか。
何故、悲しそうなんだろうか。
わからねぇ。
全然、わからねぇ。

なぁ、ひーちゃん、俺に話してくれ。
涙の訳を。
俺、ひーちゃんが笑ってくれさえすれば、それだけで、幸せになれるんだぜ?
知ってたか?




                         FIN.