カボチャ畑でつかまえて

  

 

              「ハロウィン〜だよな〜。」 
              二人で買い物途中、ハロウィン用に、セッティングされている
              店内のものを見ながら、龍麻は嬉々として、傍らの京一に
              笑いかける。
              「ひーちゃん、ハロウィンが好きなのか?」
              さして興味なさそうな京一だったが、龍麻の喜んでいる顔に、
              不思議そうに尋ねる。
              「うん!だって、カボチャ大王に会えるんだよ?」
              「・・・・・カボチャ大王・・・?」
              思いっきり不審な顔の京一に、龍麻はそれこそ、幸せそうに答える。
              「ハロウィンの日に、カボチャ畑にカボチャ大王が現れて、
              世界中の子ども達にプレゼントをくれるんだ。」
              「それって、サンタクロースじゃないのか?」
              「ちがうって。サンタクロースは、プレゼントをお願い出来るけど、
              カボチャ大王には、お願いできないんだ。」
              京一は首を捻る。違いが良く判らないらしい。そんな京一に、
              龍麻はくすくす笑う。
              「俺もね、あんまり詳しく知らないんだ。実を言うと。」
              龍麻は、カボチャの一つを手に取ると、懐かしい顔をした。
              「子どもの頃のことなんだけど、近所にカボチャ畑があってさ、
              ハロウィンの日に、友達数人と、ずっとカボチャ畑に座り込んで、
              カボチャ大王が現れるのを、待っていたことがあるんだ。」
              「ずっと?」
              龍麻はにっこりと微笑むと、京一にカボチャを渡す。
              「夜中、皆が寝静まった頃、家を抜け出してさ・・・。あとでばれて、
              すごく怒られたけど、・・・・でも、楽しかったな。」
              「ひーちゃん、メチャメチャ寒がりだろ?平気だったのか?」
              京一は、驚きに目を見張る。
              「確かに目茶目茶寒かったけど、でも、そんなの気にならないくらい、
              ワクワクしてたからさ。・・・だから、カボチャ大王が現れなくって、
              ちょっと残念だったな。」
              苦笑する龍麻に、京一は手にしたカボチャに視線を移すと、ニヤリと
              笑いながら、かごの中に、カボチャを入れ始める。
              「きょ・・・京一!?」
              驚く龍麻に、京一は、ウィンクしながら言った。
              「カボチャ・・・なんだっけ?・・・そう、カボチャ提灯を作ろうぜ♪たくさん。」
              「いきなり、何を・・・。」
              呆気に取られる龍麻に、京一はニヤリと笑う。
              「いっぱい作ればさ、カボチャ畑に見えるだろ?そうしたら、もしかすると、
              間違えて、カボチャ大王が現れるかもよ?」
              「・・・京一・・・。」
              「さっ、明日だろ?ハロウィン。早く作らないと、間に合わねぇぞ。
              ひーちゃん?」
              「・・・・うん!」
              京一の提案に、龍麻は幸せそうに、微笑んだ。