この想い、あなたに届きますように・・・・。
「愛している。」
いつも京一が俺に言ってくれる言葉。
でも・・・・。
俺は、京一に対して、「愛している」なんて言葉を
言ったことがない。
いつも、「俺も・・・。」だけだし。
だから、俺は京一にきちんと自分の気持ちを伝えたいと
思ったんだ。
でも、いざ京一に伝えようとしても、何故か邪魔ばかり入って、
なかなか言えない。
気ばかりが焦ってしまう。
折角言うのだから、最高のシュチュエーションで、と思ったのが
まずかったのか、それとも、普段やり慣れていない事をやろうと
するのがいけないのか、なかなかタイミングが掴めない。
そんな訳で、一大決心をしてから、もう既に1週間が
経過してしまった。
今日も朝からずっとタイミングを計っていたけど、どうしても
言えずに、もう夕食の時間になってしまった。テレビでも
かけているのか、リビングから、さやかちゃんの歌声が
聞こえてくる。京一の奴、真剣に見ているんだろうな・・・・。
俺がこんなに悩んでいるのに・・・・。
「はぁ・・・・。」
つい溜息をついてしまう。
「どうした?ひーちゃん。」
うわぁ!きょ・・・きょ・・・京一!!お前、テレビを
見ていたんじゃあ・・・・。
「うまそうな、天ぷらだな。」
俺の動揺に気づかず、京一は揚げたての天ぷらを
つまみ食いしている。よし!チャンス到来!今しかない!
今がチャンスだっ!!!
「あ・・・あの・・・京一・・・。」
「なんだ?」
だが、あれほど待っていたチャンスなのに、何故か俺は口を
パクパクさせるだけで、言葉が出てこない。で、漸く出てきた
言葉っていうのが、これだ。
「京一、きす好き?」
ちーがーうーだろぉおおおおお!龍麻ぁあああ!!!
「勿論!俺、好き嫌いないぜ。」
俺の心の中の葛藤を知らない京一は、無邪気に微笑むと、
うまそうに、きすの天ぷらをつまみ食いした。
ええい!もう、どうにでもなれ!
「じゃ・・・じゃあ・・・、俺が食べさせてあげるから、目を閉じて・・・・。」
言うなり、俺は素早く京一の首に腕を絡ませると、
初めて自分から、京一にキスした。
「ひ・・・ひーちゃん!!」
案の定、京一は焦っている。そんな京一の様子に、俺の中で
余裕が生まれた。そして、にっこりと微笑むと、もう一度京一に唇を
重ね合わせた。“愛している”という言葉と共に・・・・。
だんだんと深くなる口付けを交わす俺達に、消し忘れたテレビから、
さやかちゃんの歌声が、静かに流れた。
あなたに
この想いを伝えたい
でも、言葉だけじゃ足りなくて
KISS KISS KISS 素直な気持ちで
KISS KISS KISS 瞳を閉じて
想いは KISSが 伝えてくれる
FIN.