三日坊主

 

 

                 俺って、何をしても長続きしないんだ・・・。
                 何をしても夢中になったって事は一度もない。
                 それなのに・・・・。



                 俺はチラリと横目で京一の顔を見る。

                 なんで、京一にだけ、こんなに夢中になるんだろう。

                 「どうした?ひーちゃん。」
                 俺の視線に気づいたのか、京一はにっこりと微笑みながら
                 振り返った。
                 「・・・・どうしてなんだろう・・・。」

                 どうして、京一に見つめられるだけで、こんなに
                 ドキドキするんだろう。
                 どうして、京一が側にいてくれるだけで、こんなに
                 幸せを感じるんだろう・・・。
                 どうして・・・。

                 「おーい。ひーちゃん、俺の前で上の空をやめてくれよ。」
                 気がつくと、俺はすっぽりと京一の腕の中に収まっていた。
                 俺はマジマジと京一の顔を見ながら呟いた。
                 「どうして、京一に夢中なんだろう・・・。」
                 「はぁ?それどういう意味だ?」
                 訳がわからないというように、京一が肩を竦ませる。
                 それすらも、カッコイイと思ってしまう俺って、もしかして、重症?
                 「俺、今まで夢中になったものって、ないんだ。大抵どっか
                 冷めてて・・・・。京一だけだよ。こんなに自分の感情が
                 コントロール出来ないほど夢中になれるのって・・・。」
                 俺の言葉に、京一は嬉々として俺の身体を抱きしめる。
                 「へへっ。俺だって、ひーちゃんだけだぜ。こんなに夢中に
                 なってんのは。」
                 京一も?同じ?
                 「そういやぁ、この前テレビで言ってたっけ。人間の脳って、
                 三日坊主に出来てるって。」
                 三日坊主?何それ。
                 「つまり、人間ってモンは、常に刺激を求めていて、単調に
                 繰り返されるものにすぐ飽きてしまうらしい。」
                 京一は俺の顔を覗き込むと、そっと軽く唇を重ね合わせた。
                 「要するに、俺とひーちゃんって、常にお互いを刺激し合って
                 いて、<飽きる>ことないってことでさ・・・。」
                 京一は再び軽く唇を重ねてきた。
                 「俺とひーちゃんは、最高のカップルって事だよな!」
                 そんな事を言いながら、京一は再び俺の身体をきつく
                 抱きしめてきたと思ったら、あららら、視界が逆転して、
                 気がついたら、京一に床に押し倒されていた。
                 「へへっ。折角最高のカップルなんだ。もっとお互いを感じ
                 合おうぜ・・・。いいだろ?・・・龍麻・・・。」
                 京一の知能犯。絶対に拒めないって知って、わざと俺に
                 聞いてくる。俺は真っ赤になりながらも、肯定の意味で、
                 京一の首に腕を回す。


                 三日坊主の俺が、長続きのコツを身を持って体験した一日だった。



                                                    FIN.