月 

 

 

「なぁ、京梧。」
ふと月を見上げていた龍斗は、手酌をしながら、自分を見つめている京梧を振り返った。
「見てみろよ。すっごく綺麗な月だぜ。」
屈託のない笑顔の龍斗に対し、京梧は不敵な笑みを浮かべながら、ただひたすら龍斗だけを見つめていた。
「京梧・・・?」
訝しげに首を傾げる龍斗を、京梧は、ニヤニヤと笑うだけで、その様子が、余計龍斗のかんに触った。
「おい!人の話を!!」
「聞いているぜ。龍斗・・・。」
自分の胸倉を掴む龍斗の腕を掴むと、京梧は酒に酔っているとは思えない、機敏な動作で、龍斗の身体を引き寄せる。
「・・・綺麗だ。」
そのまま耳を甘噛みしながら、京梧は龍斗の身体の線を、ゆっくりとなぞる。
「ちがっ!俺は・・・。」
京梧の腕から逃れようとする龍斗だったが、もがけばもがくほど、龍斗の着物は乱れ、それが京梧の雄の部分を適度に刺激する結果となる。
「月より、俺にとっては、お前の方がいい。・・・・お前が欲しい。」
ストレートな物言いに、一瞬龍斗の反応が遅れ、京梧の付け入る隙となった。
「なぁ、次いつ会えるか、わからないんだぜ?」
だから、≪今≫十分お前を感じたいんだ・・・。そう、耳元で、囁かれ、龍麻は、観念するかのように、目を閉じる。
それを合図に、龍斗の身体に、京梧が覆い被さる。
「月明かりの中のお前って、どこか神秘的だよな・・・。」
京梧は、龍斗の首に顔を寄せながら、囁く。
「まるで、月から来たかぐや姫のようだ・・・。」
「俺がかぐや姫だったら、お前は何だ?」
その問いに、京梧は、フッと微笑んだ。
「・・・さぁ・・・な・・・。かぐや姫に置いていかれた、哀れな男ってとこか?」
「・・・・。俺は・・・京梧・・・・。」
みなまで言わせず、京梧は龍斗の唇を、荒々しく塞ぐ。
「龍斗・・。龍斗・・・。どこにも行くな・・・。」
キスの合間に囁かれる言葉に、龍斗は、ただ静かに涙を流すことしか出来なかった。
そんな二人の姿を、天空の月が寂しげに見つめていた。


                                               FIN。