櫻散る夜に・・・・・

 

 

                  

 

                   櫻散る夜。
                   舞い散る花片に誘われ、
                   ふらりと夜の公園へと足を向けた。



                   昼間とは違った公園の雰囲気に、
                   まるで、子どものような顔で京一は言った。


                   “俺達2人の貸切だな。”



                   月明かりの中、
                   外灯に照らされた夜櫻の下、
                   京一は俺の左手を取ると、
                   薬指に指輪を嵌める。


                   “京一・・・・・。”


                   突然の事に、驚く俺の様子が気に入ったのか、
                   京一はクスクス笑い出す。


                   “今日、卒業しただろ?
                    卒業ってさ、【終わり】だけじゃなくって、
                    次への【始まり】を意味してるんだぜ?
                    だからさ。”


                    京一は俺の左手の薬指に嵌められた指輪に、
                    そっと口付けた。
      

                    “これは、その証。
                     【恋人】を【卒業】して、
                     【伴侶】として【始める】ための・・・・・・。”


                    そう言って、京一は優しく俺を抱きしめる。


                     “もう、二度と離さねぇ。”



                     やがて一つの影に重なる俺達の上に、
                     櫻の花片がライスシャワーのように
                     降り注いだ。




                                             FIN.