「寒いと思ったら、雪だぜ!ひーちゃん!!」
いつのまにか振り出した雪に気づいた京一は、腕の中の最愛の恋人の龍麻に、声をかける。
「ゆ・・き・・・?」
情事の名残か、ぼんやりとした表情の龍麻は、京一の声にゆっくりと視線を窓の外へ移す。
「雪だ・・・・。」
まるで天使の羽のように、ゆっくりと静かに降る雪に気づき、龍麻は幸せそうに微笑んだ。
「これが、本当のホワイトクリスマスだな・・・・。」
京一は、龍麻の身体を抱き寄せながら、二人寄り添いながら、暫く雪を眺めた。
“あれ・・?以前にもこんな事があったような・・・・。”
舞い降りる雪を見ながら、龍麻は以前にも京一と共に雪を見たような、奇妙な錯覚に襲われる。
“変だ。俺、京一と初めて雪を見るのに・・・・。”
そんなはずはないと、龍麻が軽く頭を払った時、京一が意外な言葉を口にした。
「覚えているか?あの時も、こんな雪が降っていたな・・・。」
「えっ・・・・。」
何を言っているのだろうと、龍麻が口を開きかけたが、それより先に、京一の手が龍麻の顎を捉え、いきなり深く口付けられる。
「きょ・・・。」
荒々しい口付けに、龍麻の思考がだんだんと、その機能が果たせなくなり、無意識に京一の背中に腕を回す。それが合図かのように、京一は再び龍麻をベットの上に押し倒すと、ゆっくりとその上に覆い被さった。
「・・・思い出してくれよ・・・。」
キスの合間に、京一は囁く。
「・・何・・。きょ・・・う・・い・・・ち・・・。」
一体、京一は何が言いたいのか、龍麻は訳がわからず、不安そうに見つめ返した。そんな龍麻の様子に、京一は苦笑すると、宥めるように額に口付けると、耳元で想いを込めて囁いた。
「龍斗・・・・。」
その言葉に、龍麻は大きく目を見開くと、反射的に京一を突き飛ばした。
「京一・・・今・・。今・・・なんて・・・。」
心臓が早鐘のように鳴り響く。
それと同時に、激しい頭痛に襲われ、龍麻は頭を押さえながら、蹲った。
思い出せそうで、思い出せないこと。
思い出したくって、思い出したくないこと。
陰と陽。
静と動。
正と邪。
龍麻の中で、相反する二つの感情が駆け巡る。
「ひーちゃん!!」
青い顔をしている龍麻の様子に、京一は慌てて、その身体を抱き寄せた。
「きょ・・・。」
龍麻の口から、弱々しい吐息と共に、囁かれる一つの言葉。それと同時に、意識を失う龍麻を、京一は口元に笑みを浮かべながら、嬉しそうに抱き締めた。