聖 夜

                      (2)

 

雪ガ降ル・・・。
アナタト初メテ見タ雪。
トッテモ綺麗デ・・・。
デモ、スゴク悲シクテ・・・。


真ッ白ナ雪・・。
ソシテ、
深紅ノ・・・・。



「ひーちゃん。綺麗だな・・・。」
その言葉に、ハッと我に返った龍斗は、隣にいる最愛の恋人の京梧を見つめる。
「なぁ、今年初めての雪だ・・ぜ・・・。」
穏やかに微笑む京梧とは対象的に、辛そうな顔で、龍斗は、ただ黙って涙を流し続ける。
「お前と初めて見る雪だからかな・・・。今まで見た雪の中で、スッゲー綺麗・・・だ・・・・。」
そう言いながら、京梧の指が優しく龍斗の涙を拭う。
「何で・・・。」
龍斗は、京梧の指に己の指を絡ませる。
「何で、俺なんかを庇った・・・。京梧・・・。」
真っ白な雪に鮮やかな京梧の血が染み込むのを、龍斗は、絶望した顔で見つめた。
「へへっ。すまねぇ・・・。」
「そうじゃなくって!!」
笑いながら謝る京梧に、龍麻は頭を大きく振りながら、京梧の身体を抱き締める。徐々に体温を失いつつある京梧の身体に、龍斗は、再び涙を流す。
「俺は・・・お前が好きだ・・・。」
龍斗の告白に、京梧は、一瞬瞳を大きく見開いたが、次の瞬間、穏やかに微笑みながら、龍斗の身体をそっと寄りかかった。
「あぁ・・。俺もだ・・・。愛している。龍斗・・・。」
動かない腕をなんとか動かして、京梧は、龍斗を抱き締めると、その耳元で囁いた。
「約束する・・・。再び生まれ変わったら、必ずお前を探し出して、今度こそ、幸せにすると・・・。」
「京梧!!」
驚いて、京梧の凝視する龍斗に、京梧は掠めるように口付ける。
「・・だから・・・暫しのお別れ・・・だ・・・・。」
「京梧!!」
ゆっくりと目を閉じる京梧に、龍斗の絶叫が響き渡る。そんな二人を、哀れむように、慰めるように、優しく雪は降り続いていた。



「京梧!!逝くなっ!!」
自分の叫び声で、目が覚めた龍麻は、自分を優しく抱き締める京一に、気づき、ほっと身体の力を抜いた。
「京一・・・。俺・・・・。」
まだ夢の余韻に浸っていた龍麻は、涙を流しながら、京一に抱き付く。
「辛い事、思い出させてしまったな・・・。」
優しく龍麻の身体を抱き締める京一に、龍麻は、ますますきつく抱き付く。
「やっと・・会えた・・・。京梧・・・・。」
「龍斗・・・。」
二人は、長い歳月を埋めるかのように、見詰め合っていたが、ふいに、どちらからともなく瞳を閉じると、ゆっくりと唇を重ね合わせた。
「愛している。」
京一の言葉に、龍麻は幸せそうに微笑む。
「・・・約束守ってよ。京一。」
「あぁ・・・。絶対にお前を幸せにする。」
そして、再び唇を重ね合わせた。
窓の外では、あの時と同じ雪が、静かに舞い降りていた。



     FIN.