台風一過

 

 

「ねぇ!ねぇ!すごい風だよ!京一!!」
窓の外を見ながら、龍麻ははしゃいでいた。
「ひーちゃん、そんなに窓から身を乗り出すと、危ないぜ。」
京一は苦笑しながら、愛しい想い人の身体を抱き締めた。
「こんなに濡れて、風引くぜ?」
耳元で囁かれる京一の声に、龍麻は擽ったそうに、身を竦ませた。
「くすぐったいよ。京一。」
そして、龍麻は笑いながら京一の腕から逃れると、再び窓から顔を出した。
「冷たくって、気持ちいい!!」
そして、京一を振り返ると、にっこりと笑った。
「なんかさ、嵐って、こうワクワクしてこない?」
そんな龍麻の頭に、京一はタオルを被せると、そのまま抱き上げた。
「ちょ・・ちょっと!京一!!」
慌てる龍麻の唇を軽く塞ぐと、京一は笑いながら、そのまま寝室へと直行する。
「あの・・・京一さん。」
上目遣いに、龍麻は尋ねた。
「なんで、俺ここにいるの?」
京一は笑いながら、龍麻の身体から、衣服を剥ぎ取っていく。
「ん?決まってるだろ?身体が冷えたひーちゃんを、温めるためだ。」
「・・・・お風呂に入る。」
京一から逃れようとするが、簡単につかまってしまう。
「悪いな。まだ沸かないんだよ。」
ニヤニヤ笑う京一に、龍麻は頬を膨らませる。
「だったら、シャワー・・・・。」
「シャワーより、暖かくって、嵐よりもワクワクすること、したいと思わねぇ?」
一瞬絶句する龍麻に、京一は深く唇を合わせた。
「俺は、ひーちゃんと楽しみてぇ。」
耳元で囁かれる言葉に、龍麻の顔が、これ以上ないほど、真っ赤になる。
「で?ひーちゃんは?」
「う〜。京一の馬鹿・・・・。」
口を尖らせる龍麻の頬に、京一は思いきり音を立てながら、唇を押し付ける。そこで、漸く観念した龍麻は、京一の首に、腕を絡ませる。
「・・・なんか、図られたって感じ・・・。」
そんな龍麻に、京一は笑いながら、首筋に顔を埋めた。


台風が去った朝、ぐったりした龍麻の唇に、すっきりとした顔の京一が、にこやかに朝のキスをしていた。



                                        FIN.