バレンタイン狂想曲

 

 

               「・・・ったく、劉のやつ、何で今日に限って、こんなに課題を
               出すんだよ!」
               ブツブツ文句を言いながら、京一は黙々と課題をこなしていった。
               「これも全て、ひーちゃんとの新婚生活のため!」
               その想いだけで、京一は必死にペンを動かす。
               「ひーちゃん、中国語が話せる俺に惚れ直してくれるかも・・・・!
               “京一、中国語が話せるなんて、カッコイイ!大好き!”
               ・・・なんてな!」
               フフフフと不気味な笑みを浮かべながら、ますますペンを動かす
               スピードが早くなる。
               「に、しても劉の奴遅い。何やってんだ?」
               京一は書いている手を止めると、時計を見つめた。
               ちょっとそこまで用事が・・・すぐ戻ると言いつつ、そそくさと出て
               行った劉は、30分経った今でも、帰る気配がない。
               「変だ・・・・。」
               親指を噛み締めながら、京一は嫌な予感が心に広がるのを感じた。
               「まさか、劉の奴、俺を課題攻めにして、その間、ひーちゃんと
               一緒にいようって魂胆じゃ・・・・。」
               こうしてはいられないと、京一はフルスピードで、残りの課題を
               次々終わらせていく。
               本当は、課題なんて無視して、直ぐに帰りたいが、そんな事が
               真面目な龍麻にバレてしまったら、即黄龍。悪くて、一緒に
               中国へ行ってくれない。京一は逸る気持ちを押さえつつ、
               ペンを動かすスピードを早めた。
               「劉の奴!ぜってー、お前の好き勝手させねぇぜ!
               ひーちゃん!待ってろよ!」
               全ての課題を終えると、京一は手早く身支度を整え、
               家を飛び出した。
               「おっ、劉か?課題終わったから、俺帰るからな!」
               途中、気がついて劉の携帯に電話を入れると、予想に反して、
               何故か如月の所で麻雀をやっていることが判明。
               「まっ、いいか。」
               俺のカンも鈍ったかなと思いつつも、心は既に愛しい龍麻の
               元へと飛んでいた。
               「他のライバルがいるかもしれない!待ってろよ!ひーちゃん!!」
               京一は全速力で新宿の街を走り抜けた。




                                                 FIN