ホワイトクリスマス

 

             君に会えて、最初のクリスマス
             だから、精一杯の愛を込めて
             今まで会えなかった年月を埋めるよう、
             今日一日は、ずっと側に・・・・・・。

  

             「雪だ!雪だ!!」
             スーパーの帰り道、龍麻は、降ってきた雪に、
             子どものように、騒ぎながら、空を仰いだ。
             「ホワイトクリスマスになって、良かったな。」
             そんな龍麻に苦笑しつつも、やはり京一も内心
             喜びを隠せない。 
             東京人にとって、クリスマスに雪が降ること事態、
             奇跡に近い。
             「これも、俺の日頃の行いの良さだな。」
             などと、内心得意げに頷く。最愛の恋人との
             初クリスマスが、最高のシュチュエーションで
             迎えられたのは、全て己の行いの良さだ。
             だが、そんな京一の思いも、次の龍麻の言葉に、凍りつく。
             「やっぱ、クリスマスには雪だよね〜。俺、思い切って
             雪降らせて良かった〜。どう?京一?」
             “ひーちゃんって黄龍の器だったっけ・・・・。”
             自分が降らせた訳ではないことに気づき、ちょっと傷ついた
             京一だった。そんな京一に気づき、不安気に京一の顔を
             覗き込む龍麻だった。
             「もしかして・・・・気に入らないのか・・・?」
             見る見るうちに落ち込む龍麻に、京一は慌ててその身体を
             抱き締める。
             「違う!そうじゃない!メチャメチャ嬉しいぜ!最高のシュチュエーションで
             ひーちゃんと初めてのクリスマスを迎えるんだから!!・・・ただ、
             俺の想いが、雪を降らせた訳じゃないってことに、ちょっとショックだったんだ。」
             苦笑する京一に、龍麻は、何だそんなことかと笑った。
             「違うよ。俺だけの力で降らせた訳じゃないよ。京一が・・・そう、願ったから、
             だから、俺、力が使えたんだよ。」
             「どういうことだ?」
             森羅万象を司る黄龍の器なのに?
             そんな疑問を含んだ京一の視線に、龍麻は穏やかに微笑んだ。
             「黄龍の器だからって、万能じゃない。願う人がいて、初めて力が
             出せる。俺、京一がクリスマスに雪が降った方がいいと願ったのを、
             感じて、自信なかったけど、やってみたら雪を降らせることが出来た。
             多分、京一が願わなかったら、雪を降らせることは、出来なかったと思う。」
             「ってことは・・・・?」
             「この雪は、京一の想いが降らせたんだよ。」
             龍麻の言葉に、京一は破顔する。
             「そっか。サンキューひーちゃん。俺の願いを叶えてくれて。」
             そう言うと、京一は龍麻の身体を力いっぱい抱き締めた。
             「苦しいよ・・・。京一・・・。」
             「へへっ。愛しているぜ!ひーちゃん!」
             噛みつくように、龍麻に口付ける京一に、龍麻は苦笑する。
             「俺も、嬉しいよ。京一・・・・。」
             「あーっ、待てよ!それじゃあ・・・・。」
             突然、叫び出す京一に、龍麻はびっくりした。
             「何?どうしたんだ?」
             「って事は、俺ひーちゃんからのプレゼント、もう貰えない?」
             「へっ?」
             何を言っているのかと、龍麻は呆れた顔をする。それに気づかず、
             京一はがっくりと肩を落とした。
             「俺、ひーちゃんからプレゼントが欲しかったのに・・・。」
             「な・・・何?欲しいものって・・・。」
             この前聞いたら、意味ありげな顔をするばかりで、何も教えてくれなかった
             のに。
             「俺、今日一日、ひーちゃんと二人だけで過ごしたかったんだ。」
             「・・・・如月のクリスマスパーティにも出ないで?」
             大きく頷く京一に、龍麻はやれやれと溜息をついた。
             全く、自分は京一に甘いと自覚しつつ、口を開いた。
             「ところでさ、俺、京一から欲しいプレゼントがあるんだけど・・・・。」
             「何だ?何でも叶えてやるぜ?他ならぬひーちゃんの頼みだからな。」
             龍麻はにっこりと微笑んだ。
             「本当に?」
             「お・・・おう・・・?」
             龍麻は真っ赤な顔で京一に抱き付くと、耳元で囁いた。
             「今日一日、ずっと二人だけで過ごしたい・・・・・。」
             「ひーちゃん・・・・。」
             「駄目?」
             真っ赤な顔で見上げる龍麻を、京一は強く抱き締めると、
             ゆっくりと唇を塞ぐ。だんだんと激しくなる口付けに、龍麻は
             早々と思考を放棄する。
             「愛している。龍麻。」
             「京一・・・・。」
             龍麻は幸せそうに微笑むと、自分から京一に口付けた。


                       メリークリスマスの言葉と共に、愛を込めて・・・・・・・・。

 

 

                                              FIN