第3話

 

 

               この想いを封じよう。
               そう、心に決めたはずなのに・・・・・・。


                心ガ痛ミニ悲鳴ヲアゲツヅケテ・・・・・。

                コノママデハ
                私ハ
                罪ヲ犯ス。


                だから・・・・・。





                「一体、これはどういうことなんだ!!」
                別室へ連れてこられたオスカーは、
                テーブルを力任せに叩いた。
                部屋中に響くその音に、後ろに控えていたヴィクトールの
                肩はピクリと動くが、テーブルを挟んで向い側に座るルヴァは、
                ピクリとも動かずに、じっと鋭い視線をオスカーに向けていた。
                「ルヴァ、陛下は・・・!!」
                「・・・・オスカー・・・・。」
                オスカーの言葉を溜息と共に遮ると、ルヴァは言葉を繋げた。
                「昨夜遅く、私とジュリアスに陛下が告げられた事を伝えます。」
                「陛下が?」
                訝しげなオスカーに、ルヴァは硬い表情のまま、頷いた。
                「炎の守護聖、オスカーに命じます。新宇宙の安定が確定するまで、
                新宇宙へ留まるようにと。」
                「・・・・・なんだと?」
                途端、オスカーの眼が険しくなる。
                「・・・・・では、直ぐにでも新宇宙へ発つように。用件はそれだけです。」
                ルヴァは、事務的な事を一方的に告げると、ゆっくりと椅子から立ち上がって
                扉へと向かった。しかし、扉の手前で、オスカーが立ち塞がった。
                「・・・・ちょっと待て!ルヴァ!!」
                オスカーは、ルヴァの胸倉を掴むと、睨みつけた。
                「一体、何がどうなっているんだ!陛下がお倒れになったというのに、
                守護聖である俺が新宇宙へ行くだと?そんなことをしたら・・・!!」
                「オスカー・・・・。それが陛下のご意志なんです。」
                「!!」
                ルヴァの言葉に、オスカーの腕から力が抜ける。
                「そして、ジュリアスを始め、我々守護聖全員の・・・もっともクラヴィスと
                あなたは抜かされますが・・・・意志なんです。」
                「ジュリアス様を始めとしてだと・・・・・?」
                茫然と呟くオスカーに、一瞬辛そうな眼を向けたが、ルヴァはそれ以上
                何も言わず、黙って部屋を後にした。
                パタンと扉が閉まる音と同時に、オスカーはその場に崩れ去るように
                肩膝を落とした。
                「一体、何がどうなっているんだ・・・・・・。ヴィクトール・・・・。」
                背後に佇む男に、オスカーは尋ねる。
                「さぁ・・・・。私にも、何故このような事になったのか・・・・・。」
                「・・・・では、知っている事だけでも、教えてくれ。アンジェ・・・いや、
                陛下は、何故お倒れになられたのだ?」
                オスカーの言葉に、ヴィクトールは首を横に振った。
                「良くは存じませんが・・・・・今朝方寝室の前で倒れられた所を、
                ロザリア様が発見なされたとか。原因はわかっておりません。」
                「で、病状は?直ぐに目覚めるのか?」
                「・・・・以前、昏睡状態のままです。」
                「くそっ!!」
                腹立ち紛れに、オスカーは右の拳を床に叩きつける。
                そんなオスカーに何と声をかけて良いか分からず、ヴィクトールは、
                途方に暮れていた。そんな彼を助けるかのように、やって来たのは、
                補佐官のロザリアだった。
                「ヴィクトール、暫く二人だけで話させて下さい。」
                幾分思いつめたロザリアの顔に、ヴィクトールは無言で腰を折ると、
                静かに退出していった。
                「オスカー・・・・。」
                ヴィクトールを見送ると、ロザリアはまだ蹲ったままのオスカーに
                問い掛けた。
                「・・・・あなたの天使(アンジェリーク)は、誰なの?」
                「ロザリア・・・・?」
                憔悴しきった眼を向けるオスカーに、ロザリアは微笑んだ。
                「新宇宙でその答えを探し出してください。・・・・そうしなければ、
                皆、先には進めません。あなたも。陛下も。勿論、私たちも。」
                ロザリアは、補佐官の杖をオスカーに翳した。途端、光が
                オスカーを包み込むと、徐々にオスカーの身体が消えていく。
                「・・・・・全ては炎のジェムが導いてくれるでしょう・・・・。」
                ロザリアの言葉を聞きながら、オスカーは急速に意識が遠くなる
                のを感じた。