「ど・・・どうしてそれを・・・・・。」
茫然と呟くエドに、ロイは無言でエドが落としたタオルを拾うと、
そっとエドの髪を拭き始める。
「答えろ!!何時からだ!!」
エドは、怒りを顕に、ロイの腕を振り払うと、怒りに燃えた眼で
ロイを睨みながら、胸倉を掴む。
「・・・・・出会った時には、知っていたよ。」
観念したように肩を竦ませるロイに、エドはショックのあまり
ロイの胸倉から手を離すと、そのままペタンと床に座り込む。
「エディ!!」
慌てて身体を抱き起こそうとするが、その前に、エドの手が
ロイの腕を拒む。
「触るな!!」
「エディ・・・・・・。」
叩かれた手を庇うロイに、エドは泣きそうな顔で叫ぶ。
「俺を・・・・俺をからかうのは、そんなに楽しいか・・・・?」
「何を言っているんだ!からかうなど!!」
エドの言葉に、ロイは怒鳴り返しながら、今度はロイがエドの
胸倉を掴む。
「私のどこが、君をからかっていると言うんだ!」
「全部だよ!!さぞ滑稽だったんだろ!女が男のフリを
しているって・・・・・。影で笑っていたのかよ!!俺が・・・・
俺がどんな想いで・・・・・・。」
ポロポロと泣き出すエドに、ロイは苛立ったように、乱暴に
エドの身体を抱きしめる。
「馬鹿者!!君こそ私の気持ちが分かっていない!私は
君が好きなんだよ!!」
「え・・・・?」
ロイの言葉に、エドは茫然と涙で濡れた眼をロイに向けた。
「今・・・何て・・・・・・。」
唖然としているエドに、ロイは苦笑しながら頬を紅く染めた。
「おかしいと思うかい?14歳も年下の少女に、一目惚れだと・・・。
本気で愛しているというのは、滑稽な事かな?」
「う・・・嘘・・・・・。」
首を横に振り続けるエドに、ロイはさらに自分の腕に抱き込む。
「嘘じゃない!私は君を・・・・エドワード・エルリック!君を愛して
いるんだ!!」
「だって・・・だって・・・・・。」
混乱するエドに、ロイは切ない笑みを浮かべながら、優しく髪を
撫でるとそっとその黄金の髪に唇を寄せた。。
「初めて逢った時から、ずっと君に囚われていた。何度この腕の中に
君を捕らえようかと思ったことか・・・・・。だが、君には目的がある。
君の目的が無事果たすまで、私は待っていようと心に誓ったのだよ。
男だと偽るのならば、ただそれを黙って見守っていようと、私は
思っていたんだ。全てが終われば、この想いを告白しようと、それだけを
胸に私は黙って耐えたんだ。」
「ロイ・・・・・・。」
切なそうな顔で自分の顔を見上げるエドに、ロイは穏やかな笑みを浮かべる。
「だが、いざ君が目的を果たした時、果たして君は私の傍にいてくれるのかと、
不安になったんだ。」
「不安・・・・・?」
首を傾げるエドに、ロイは自嘲的な笑みを浮かべる。
「君を束縛してはならないと、意識して君と馴れ合わなかったのが、仇になった。
お世辞にも、仲が良いとは言えなかっただろ?君との関係はあくまでも
上司と部下の枠からはみ出た事はなかった。」
ロイはエドの身体を抱きしめると、肩口に顔を埋める。
「私には向けてくれない笑顔を、ホークアイ中尉やハボック達に向けている
のを、見せ付けられて、私はどんなに苦しい思いをしていたか・・・・・。」
君に分かるかね?と拗ねたようなロイの様子に、エドは信じられない想いで
黙ってロイの話に耳を傾けた。
「・・・・だから私は思ったのだよ。親しくなければ、これから親しくなればいいと。
私の事を知ってもらおうと・・・・・今回の査定を利用したのだ・・・・。」
ロイの言葉に、エドは驚きに眼を見張る。
「それって・・・・どういう・・・・・。」
「別に共同研究でなくても良かったのだよ。ただ、私は君の傍にいたかった。
君に上司ではなく、ただのロイ・マスタングという男を見て欲しかった。
ただ、それだけだったんだ・・・・・。」
ロイはエドの顔を覗き込んだ。
「私は君を愛している。たとえ、君の中に私という存在がただの上司で
あっても・・・・・。君の心の中に、他の男がいるとしても・・・・・・。
私は君を諦めたくないんだ!!」
きつくロイに抱きしめられながら、混乱する頭で、エドは気がつくと、
ロイを突き飛ばしていた。
「エ・・・エディ・・・・・・。」
酷く傷付いたロイの顔に、エドはズキリと胸が痛んだ。
「俺・・・俺・・・折角・・・・覚悟決めたのに・・・・・。
ロイの・・・・ロイの馬鹿!!」
エドは泣きながら、叫ぶと管理小屋を飛び出した。
「エドワード!!」
慌ててエドを追いかけるロイだったが、小雨降りしきる中、エドの
姿はどこにもなかった。
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ロイ告白〜!!これで一気にまとまるか!!と思ったのですが、
パニックになったエド子が飛び出してしまいました。
詰めが甘いです。流石無能。次回は、エド子さんの心情を書く予定です。
切りの良いところで区切ったので、今回、とても短いですが、
感想を送ってくださると、すごく嬉しいです!