ロイ・マスタングの野望 〜宿命の対決〜
第2話
「さて、感動の再会も終わった事ですし、さっさと帰ってください。
私達は忙しいんです。」
ロイは、ニッコリと微笑むと、ソフィアを家の外へと追い出そうとする。
しかし、ソフィアも負けてはいない。
するりとロイの手から逃れると、再びエドの身体を抱きしめる。
「・・・全く!なんて子なの!!可愛い嫁と孫会いたさに、遠くから遥々来た
母親を追い出そうなんて!あなたには、血も涙もないの!?」
酷いわよね!エドワードちゃん!!とヨヨヨヨと泣き真似をするソフィアに、
ロイは冷静に突っ込む。
「・・・・・一昨日まで、うちに入り浸っていたのは、一体誰でしたっけ?しかも、
2ヶ月もの間!!」
2ヶ月前、ロイとエドの結婚&出産を知ったソフィアが、慌ててロイの家に訪問して以来、
ずっと同居していたのだ。
一昨日、漸くソフィアを実家へと帰らせる事に成功したのだが、その間のロイとソフィアによる、
エド&フェリシア争奪戦の凄まじさは、今では中央司令部の語り草になっている。
アルフォンスですら、あまりの凄まじさに、一週間もしないうちに、リゼンブールへと
帰って行ったほどだ。
「私とエディは新婚なんですよ!?少しは遠慮して下さい!」
ロイの言葉に、ソフィアは、ポンと手を叩く。
「そう!そうなのよ!!私が今回ここに来たのは、大変な事が起こったからなのよ!」
ソフィアの言葉に、ロイは深いため息をつく。
「どうせ、大したことないのでしょう?今度はなんですか?新聞の星占い欄に、嫁とショッピングが
大吉とでも書かれていましたか?」
「馬鹿ね!!そんなんじゃないわよ!もっともっと大変な事なんだから!」
腰に手を当てて睨むソフィアに、ロイの眉がピクリと動く。
「ほう?つい一昨日まで、毎日毎日星占いだとか、夢見がどうのと、さんざんエディを独り占めしようとした人間の
口から出る言葉とも思えませんが?」
「もう!エドワードちゃんとフェリシアに危機が迫ってるのよ!もっと緊張感を持ちなさい!」
「持っていますとも!だからあなたからエディ達を遠ざけようとですね!」
激昂するロイに、ソフィアは冷めた目でポツリと呟く。
「・・・・・・お祖父様にバレたのよ。」
「!!」
その言葉に、ロイは息を呑む。
「・・・・・・・お祖父様?」
ロイとソフィアの張りつめた空気に、それまで訳が分からず二人を見守っていたエドが、
キョトンと首を傾げる。だが、そんなエドに気づかず、ロイは更に声を荒げる。
「なっ!!何で誤魔化さなかったんですか!!お祖父さんに知られたら!!」
「仕方ないでしょ!!家に帰ったら、もう既に親戚中に知れ渡ってたんですもの!!」
頭痛いわ〜と、額に手を当てて、ソフィアは頭を払う。
「と・・・・とりあえず、エディとフェリシアを安全な場所へ!!」
青ざめた顔でオロオロとし始めるロイに、ソフィアはギロリと睨む。
「逃げたって、何の解決策にならないわよ!お祖父様の執念深さ、嫌ってほど知っているでしょ?
こうなったら、腹を括って、断固立ち向かうわよ!!」
エドワードちゃんとフェリシアは、私が守るわ!!
ソフィアが拳を固く握って、高らかに宣言する横で、ロイはエドをギュッと抱き締める。
「エディ・・・・。何も心配しなくていい。君達を守るには、この私だ!」
「と・・・・とりあえず・・・・ここではなんだから、部屋に移動しない・・・か?」
盛り上がっている二人に、エドは顔を引き攣らせながら、そう控え目に提案した。
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