ロイ・マスタングの野望 〜宿命の対決〜
第3話
「・・・・・・要するに、こういう事ですか?」
ロイの優秀なる副官である、リザ・ホークアイは、目の前でビクビクしている上官に、
ニッコリと微笑みながら、ゆっくりと銃を向ける。
「この世には、何の未練もないと?」
ググっと引き金に力を込めるホークアイに、ロイは顔面蒼白になりながら、
必死に言葉を繋げる。
「ま・・・まて!!話せばわかる!!」
「開口一番、今日も有給にしろと言われ、私の細やかな神経がどうにかなってしまいそうです。
ええ。動揺して、思わず銃を発砲しても、致し方ないかと。」
いや!アナタは、そんなに神経が細くないでしょう。という、火に油を注ぐような言葉を、
懸命にもロイは飲み込むと、神妙な顔を向ける。
「これも全て、エディとフェリシアの安全の為なのだ!」
「エドちゃんとフェリシアちゃんの安全の為?」
ピクリとホークアイの眉が跳ね上がる。
「彼女達に危険が迫っていると?」
スッと目を細めるホークアイに、ロイも重々しく頷く。
「そうなのだよ!」
「わかりました。」
ホークアイは銃を収める。
「わかってくれたかね!!」
嬉々として顔を輝かせるロイに、ホークアイもニッコリと微笑む。
「もちろんです!二人に危険が迫るなど、言語道断。本来ならば、私自らがその不届き者に、
制裁を与えたいものですが・・・・・准将自ら私に彼女達の護衛を任ぜられたからには、
全力を持って警護にあたります。ええ!勿論、誰ひとりとして、お二人の傍には近づけさせません!
そう、例え上官であっても。」
フフフフフフフ・・・・・と不気味に笑うホークアイに、ロイは慌てる。
「いや!そうではなくてだね!!」
「?何か間違えでも?私に有給を取って、二人の警護をしろと、今おっしゃられましたよね?」
再びホークアイの銃がロイに向けられる。
「言ってない!私は一言だって言ってない!!」
ブンブンと首を横に振るロイに、ホークアイはつまらなそうに舌打ちをする。
「・・・・・それで?いつものサボり癖ですかぁ?」
全く・・・・、手間を取らせないでほしいわとブツブツ文句を言うホークアイに、ロイは流石にムッとして
何かを言いかけるが、その前に背後から聞こえた声に、思わず後ろを振り返った。
「なぁに?まだ有給取れないの?」
ったく!仕方がないわねぇ!と呆れ顔で立っているソフィアに、ロイはガックリと肩を落とす。
「・・・・母さん・・・。」
「ソフィア様!?」
まさかソフィアがいるとは思わっていなかったホークアイは、慌てて敬礼をする。
「失礼しました!ソフィア様がいらっしゃるとは存じ上げず、ご挨拶が遅れて・・・・。」
「いいの!いいのよ!リザさん。うちの馬鹿息子が迷惑をかけて、本当にごめんなさいね。」
ふるふると首を横に振りながら、ソフィアは二人に近づく。
「迷惑ついでに、あと数日、有給は無理でも、ロイに休みを与えてやってくれないかしら。」
この通りと頭を下げるソフィアに、ホークアイは、思わずあんぐりと口を開く。
「ソ・・・ソフィア様・・・・?准将に休みとは・・・・・宜しいのですか?」
呆然と呟くホークアイに、ソフィアは苦笑する。
「本当なら、ロイを地下牢にでも閉じ込めて、仕事責めにしたいのは、山々だけど・・・・・。
全てはエドワードちゃん達の安全の為!こんなんでも、いないよりは、多少は何かの役に立つはず。」
「・・・・・了解しました。有給はまだ残っておりますので、直ぐに調整致します。」
素直に頷くホークアイに、ロイはムッとなる。
「先ほどとは態度が全く違うではないか・・・・。」
「それは、日頃の行いでしょうね。」
ロイの言葉をサラリと受け流すと、ホークアイはソフィアに真剣な目を向けた。
「それで、敵は一体誰ですか?」
ソフィアはフーッと大きな溜息をつくと、キッと顔を上げた。
「ステファン・ヘイルウッド・・・・・・私の父よ。」
その名前に、ホークアイの目が大きく見開かれた。
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