LOVE'S PHILOSOPHYシリーズ

          ロイ・マスタングの野望 〜宿命の対決〜
 

                       第4話


   
   「ステファン・ヘイルウッド・・・・・。」
   呆然と呟くホークアイに、ソフィアは苦笑する。
   「そう。家督は既に長男に譲ったにも関わらず、未だに各方面に
   迷惑を掛けている、あのステファン・ヘイルウッドよ。」
   「母さん・・・・迷惑など人聞きの悪い。せめて、影響力があると言った方が・・・・。」
   一応ソフィアを窘めるソフィアを窘めるロイだったが、その表情はアリアリと
   大迷惑な人だと書かれていた。
   「何言ってんのよ!今までは、直接私に迷惑が掛からなかったから、放置していたけど、
   今回は、エドワードちゃんが関わっているのよ!!迷惑男で十分じゃない!!」
   フンと顔を背けるソフィアに、ホークアイは、ハッとなる。
   「あ・・・あの・・・。失礼とは存じますが・・・・ステファン・ヘイルウッド氏は、ソフィア様の
   実の父親・・・・なんですよ・・・ね?」
   恐る恐る訊ねるホークアイに、ソフィアは嫌そうな顔を隠しもせずに頷く。
   「本当に・・・・何であんな人と血が繋がっているのかしら・・・・・。世界七不思議だと思わない?」
   ふうとため息をつくソフィアに、ロイはニヤリと口角を上げる。
   「人に迷惑を掛ける才能は、まさに父親譲りですよね。」
   「ちょっと!ロイ!!まるで私が迷惑を掛けまくっているような言い草じゃないの!」
   猛然と抗議するソフィアに、ロイは肩を竦ませる。
   「おや?何か間違った事でも?だいたいあなたはいつだって、人に迷惑を掛けているじゃないですか。
   事あるごとに、私とエディの仲を邪魔するなんて!それでも私の母親ですか!母親なら
   母親らしく、息子の恋を応援するくらいは、してくれたって良いでしょう!!」
   「あら?ちゃんと協力しているじゃない。不甲斐ないあなたが残業しても、寂しくないように、
   私が傍にいてあげているじゃない♪」
   ニッコリと微笑むソフィアに、ロイのこめかみがピクピク引き攣る。
   「・・・・・ほう?私が休みの日でも、エディにベッタリなのは、どういう訳なんですか?」
   「休みの日くらい、ロイには、ゆっくりしてほしいと、エドワードちゃんが言うんですもの。
   本当に、エドワードちゃんは良い子だわ〜。流石私のエドワードちゃん!!」
   ほう〜と頬を紅く染めながらうっとりするソフィアに、ロイはムッとする。
   「エディは、私の妻です。」
   「そんなの当たり前でしょ?何馬鹿な事を言ってるの。」
   訳わからない子ねぇ〜とケラケラ笑うソフィアに、ロイの堪忍袋は切れる。
   「いい加減・・・・・」
   次の瞬間、バコンという音と共に、ロイがその場に蹲った。いきなり始まった親子喧嘩に、
   痺れを切らしたホークアイが、実力行使に出たのだった。
   「いきなり、何をするのだね。君は!!」
   涙目で自分を睨むロイに、ホークアイは、深いため息をついた。
   “全く・・・・迷惑を掛ける才能は、親子三代に、しっかり受け継がれているようね・・・。”
   内心、そんな事を思いつつも、ホークアイはこのままでは、埒が明かないとばかりに、
   ロイを無視してソフィアに視線を向ける。
   「それで、エドワードちゃんが危険というのは?」
   「そうなの!大変なのよ!!お父様は、エドワードちゃんを孫の嫁にするって言って、
   聞かないのよ!!直ぐにでもエドワードちゃんを強奪する為に、ここにやって来るつもりよ!」
   「・・・・・・は?」
   今、信じられない言葉を聞いた気がして、ホークアイは思わず固まる。
   「それで、私はエディを連れ去られないように、有給を取って警護をだね・・・・・。」
   勢い込んで話すロイに、ホークアイは混乱する頭を整理する為に、ロイに質問をする。
   「あの・・・ちょっと待ってください。ヘイルウッド氏とソフィア様は、血の繋がった、実の親子なんですよね?」
   「ええ。そうよ。」
   ソフィアが大きく頷く。
   「そして、ソフィア様と准将も、血の繋がった実の親子であると。」
   「ああ。そうだ。」
   ロイも大きく頷く。
   「・・・・つまり、ヘイルウッド氏と准将は、紛れもなく、血の繋がった祖父と孫の間柄であるということに
   なりますよね?」
   ホークアイの言葉に、二人して大きく頷く。
   「なのに、孫の嫁にすると言って聞かないとは、どういう事ですか?既にエドワードちゃんは、孫の嫁。
   しかも、強奪とは、一体・・・・・。」
   困惑するホークアイに、ソフィアは、ああと手を打つ。
   「ごめんなさい。説明不足で。全てはヘイルウッド家とマスタング家の確執から来ているのよ。」
   「確執・・・ですか?」
   「・・・・・・もう伝説化している古ーいお話なの。」
   眉を潜めるホークアイに、そう前置きすると、ソフィアは遠い目をしながら話し始めた。
   


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