LOVE'S PHILOSOPHYシリーズ

          ロイ・マスタングの野望 〜宿命の対決〜
 

                             第5話


   
   「もともとヘイルウッド家とマスタング家って、伝統も格式も同じくらいの古い家柄なのよ。
   元を辿れば、権力者の血縁関係だったという点では、ヘイルウッド家の方が若干勝っているって
   いう話だけど・・・・どこまで本当だか・・・・。他にも、ヘイルウッド家とマスタング家の祖は、
   兄弟だったという説もあるし・・・・。確認したくても、歴史が古すぎて、古文書にも
   その辺の事は残ってないのよねぇ〜。」
   ソフィアが肩を竦ませる。
   「いつからか、ヘイルウッド家とマスタング家には、確執が生まれて、事あるごとに
   派手にいがみ合っていたらしいわ。うちの地方の一番古い歴史書の半分以上は、
   ヘイルウッド家とマスタング家の諍いの事しか載ってないくらいですもの。
   しかも、内容が子供の喧嘩よりも馬鹿馬鹿しくって・・・・・。あまりの恥ずかしさに、
   穴があったら、入りたいくらいよ。」
   ガクッと肩を落とすソフィアの横では、ロイもウンウンと頷く。
   「つまり、両家の確執に、エドちゃんが巻き込まれたと?」
   ホークアイの言葉に、ロイは頭を払う。
   「いや、100%祖父の逆恨みだ。」
   「どういうことです?」
   両家の確執の話ではないのか?と問うホークアイに、ソフィアは困ったように眉を下げる。
   「父とマスタングのお父様は、昔は親友同士だったらしいの。」
   「・・・・・・・は?」
   話の展開についていけないホークアイは、眉を潜める。ホークアイの疑問に、ロイが補足する。
   「・・・・要するに、祖父の代には、既に確執などなくなっていたんだそうだ。それどころか、
   同じくらい歴史のある家柄ということもあり、かなり親密になっていたんだ。あの事・・・・
   あの事さえなければ・・・・・。」
   もったいぶったような言い方のロイに、ホークアイの眉が顰められる。さっさと話を進めろと
   目で訴えるホークアイに、慌ててロイは話を繋げる。
   「両家の子供を結婚させようという話が自然に持ち上がったのだが、当時の跡取り息子だった
   マスタングの祖父が、あろうことか、自分のメイドと恋に落ち、妻にしてしまったんだ。
   メイドとの恋などご法度の時代、周囲の反対などものともせずに、妻に迎えた事が当時はかなり
   話題になったみたいだな。号外まで出てしまったほどだ。」
   「そうなのよ!世紀の恋!と銘打って、連日連夜お祭り騒ぎだったらしいわよ〜。」
   クスクス笑うソフィアに、ホークアイは困ったように眉を顰める。
   「それでは、ヘイルウッド家では、怒りが治まらないのでは?」
   「ところが、そうでもないのよ!!」
   ソフィアはケラケラ笑う。
   「婚約と言っても、子供同士が結婚したら良いわね〜程度の話だったらしいし、当人同士は
   どちらかというと、兄と妹のような関係だったらしいわ。叔母にも、好きな人がいたみたいだったし、
   むしろ叔母がお二人が結婚出来るように、尽力したんですって。」
   「・・・・・ところが、ここでたった一人面白くない人間がいた。」
   ソフィアの言葉を繋げるように、ロイは口を開いた。
   「ヘイルウッドの祖父だ。」
   厳かに告げられる言葉に、ホークアイはそうだろうとウンウンと頷く。
   「そうですよね。いくら当人同士に結婚の意思がなかったとしても、家同士の結びつきの事ですから・・・。」
   「そうじゃないのよ。」
   ホークアイの言葉に、ソフィアは右手を軽く横に振る。
   「そのメイドさん、父の初恋の人なんですって。」
   「初恋・・・・?」
   キョトンと首を傾げるホークアイに、ソフィアは大きく頷く。
   「初恋の女性と言っても、メイドさんだという理由で、父は最初から諦めていたんですって。ところが、
   自分の親友が障害などものともせずに乗り越えて、好きな人と結婚したという事実に、ショックというより、
   嫉妬・・・に近いのかな?それから二人の仲・・・・と言っても、父が一方的に喧嘩を吹っかけているだけ
   なんだけど、かなり険悪なものになったらしいの。で、極めつけがお互いの子供たちが相思相愛になって、
   駆け落ちしたって事で・・・・・。」
   「ええええええええ!!」
   ソフィアの言葉に、ロイの驚きの声が重なる。
   「何驚いているのよ!ロイ!!」
   嫌そうに眉を潜めるソフィアに、ロイは呆然と呟く。
   「相思相愛!?母さんが父さんに一目惚れしたあげく、無理やり押しかけたんじゃ・・・・。」
   「失礼ね!!そんなんじゃないわよ!私とお父さんは、れっきとした相思相愛よ!!父一人が反対したから、
   私が怒って家を飛び出しただけじゃない!」
   プンスカと怒るソフィアに、ホークアイは苦笑する。
   「要するに、ヘイルウッド氏は、初恋の人と最愛の娘をマスタング家に取られて、遺憾に思っていると?」
   ホークアイの言葉に、我が意を得たりとばかりに、ソフィアは大きく頷く。
   「そーなのよ!未だにロイを自分の孫と認めていないのよ!あの頑固者!!」
   「・・・・私としては、別に孫だと認めてもらいたいわけじゃない。寧ろ、認めてほしくない。あんな傍迷惑な
   者が親戚だと、私の気苦労は軽く100倍は増すだろうからな。・・・・・だが、しかし、私のエディに目をつける
   なら、話は別だ。徹底的に排除する。」
   フフフフと不気味に笑うロイに、ふとホークアイは疑問に思ったことを口にする。
   「ところで、ヘイルウッド氏とエドワードちゃんは、面識があるのですか?」
   ホークアイの言葉に、ロイは眉を潜める。
   「・・・・・昨日、エディから事の次第を聞いて、私は思わず殺到しそうになったよ。」
   「ちょっとロイ!!エドワードちゃんは悪くないわよ!!あんな純真なエドワードちゃんに付け込むあの
   男の卑怯さが悪いのよ!!」
   「・・・・・・詳しいお話をお聞かせ願います。」
   憤慨するソフィアに、漸く本題に入ったと、ホークアイはキリリと表情を改めた。
   
   
   
   


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