LOVE'S PHILOSOPHYシリーズ

          ロイ・マスタングの野望 〜宿命の対決〜
 

                             第6話


   
   「昨日、エディから聞いた事なんだが・・・・。」
   そう前置きすると、ロイは昨日エドから聞いた衝撃の事実を、ホークアイに語ってきかせた。
   「エディが言うには、どうやら旅の途中で、たまたまテロ組織に誘拐された、マーチ・ヘイルウッド
   ・・・・・私の従兄弟なんだが・・・・それを助けた事が発端らしい。」
   その言葉に、ホークアイはギョッとする。
   「ちょっと待って下さい!!マーチ・ヘイルウッド氏は、ヘイルウッド家の次期当主!
   その方が誘拐されたなんて話、初耳ですが!一体、いつ!!」
   もっともなホークアイの言葉に、ロイは嫌そうな顔で腕を組む。
   「今から2年前くらいだそうだ。私に知られまいと、その時に意気投合した祖父に頼んで、
   事をもみ消したらしい。」
   エディにも困ったものだとため息をつくロイに、ソフィアが猛然と抗議する。
   「ちょっと!エドワードちゃん一人が悪者になってるじゃない!そうじゃないのよ!それは
   仕方のない事だったのよ!!」
   横から口を挟むソフィアに、ホークアイは訝しげな顔を向ける。
   「どういう事なのでしょうか。」
   当時まだ軍属であったエドには、上司には報告の義務がある。その上、政財界の重鎮でも
   あるヘイルウッド家の次期当主の誘拐。例え自分のお気に入りでもあるエドワードと言えども、
   やって良い事と、悪いことがある。ロイの怒りはは正しい。
   「事は少し複雑なのよ。」
   そう言って、ソフィアはため息をつく。
   「そもそも、そのテロ組織と言うのは、うちの地方を管轄している、当時の軍の司令官が、
   ねつ造した事なのよ。]
   「ねつ造?」
   ホークアイの眉が顰められる。
   「そう。全く酷い話よね。己の私腹を肥やす事を邪魔する輩を片っ端から捉えては、テロをねつ造して
   いたらしいの。訴えようにも、相手は軍の人間。どうしようもなくて、捉えられた人達の家族は、
   マーチを誘拐して、話し合いの場を設けようとしたらしいわ。なんせ、マーチはヘイルウッドの次期
   当主。いくら司令官が事実をもみ消そうとしても、ヘイルウッド家が黙ってないわ。」
   「・・・・・そこで登場するのが、たまたま司令部を訪れていたエディだ。軍属だからと
   言って、事情もなにも話さず、テロ組織を一人で壊滅するように命じられたらしい。」
   ロイは眉に皺を寄せながら、怒りも露わに話を続ける。
   「まぁ、エディは司令官の不審な態度に疑問を持って、色々と調べていくうちに、司令官の不祥事に
   気づいたんだそうだ。それで、お決まりのパターンと言うわけだ。」
   「・・・・司令部壊滅・・・・。」
   呆然と呟くホークアイは、次の瞬間、ハッと我に返る。
   「しかし、マーチ・ヘイルウッド氏の誘拐が絡んでいます。いくらなんでも、司令部壊滅を
   もみ消したりするでしょうか?」
   納得がいかないと言うホークアイに、ロイはため息をつく。
   「・・・・そもそも、誘拐自体が狂言だったんだ。」
   「・・・・は?」
   ホークアイは、首を傾げる。そんなホークアイにソフィアが横から補足する。
   「もともとこの誘拐劇を計画したのが、マーチだったのよ。次期当主が狂言誘拐に
   関わったなんて不祥事は、流石のヘイルウッド家も必死に揉み消すわよ。」
   「それが縁で、すっかりエディはヘイルウッド家と、特に祖父とはすごく仲良くなったらしい。
   ・・・・ったく!なんだって、エディはあの人に借りを作ったんだ!!素直に私を頼れば
   良いのに!!」
   「それは、准将が悪いんです。事あるごとに、等価交換だと無理難題を吹っかけるから・・・。
   きっと、また准将に無理難題を言われると、怖かったんでしょうね。」
   激昂するロイに、ホークアイは冷静に突っ込みを入れる。
   その言葉に、ウッとロイは言葉を詰まらせる。
   「しかし!!そうでも言わないと、エディは私の所になど来てくれないし・・・・。」
   シドロモドロに言い訳をするロイに、ソフィアとホークアイの冷たい視線が突き刺さる。
   「ったく!そんなんだから、エドワードちゃんに頼りにされないばかりに、お父様に出し抜かれるのよ!」
   ソフィアは腕を組むと、フンと顔を横に背ける。
   「出し抜かれるとは?」
   ソフィアの言葉に、ホークアイは反応する。
   「エドワードちゃんが言うには、お父様は、いつか自分の願いを叶えてほしいとしか
   言わなかったらしいから、自分に出来る事ならって、了承したらしいの。」
   「つまり・・・・・その願いと言うのが・・・・。」
   ゴクリと唾を呑みこみながら呟くホークアイの言葉に、ソフィアは困ったように眉を下げる。
   「エドワードちゃんには、まだ言っていないのだけど、どうやらお父様は、マーチと
   エドワードちゃんを結婚させる気らしいのよ。」
   「ったく!!ふざけた事を!!エディは私のものだ!!誰にも渡さない。」
   激昂するロイに我が意を得たりと、ソフィアも大きく頷く。
   「そうよ!エドワードちゃんはマスタング家の嫁!!今さら横取りなんてさせないわ!!
   ロイ!!全力で阻止するわよ!!」
   「当たり前です!!」
   ガシッと固い握手を交わすロイとソフィアの手に、そっとホークアイも手を添える。
   「お話は分かりました。私も、いえ、中央司令部全軍を持ちまして、エドワードちゃんを
   守る為、全力を尽くします!!」
   ここに、ロイ・ソフィア・ホークアイの強力なる連合が発足した瞬間だった。
   
   


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