LOVE'S PHILOSOPHYシリーズ

          ロイ・マスタングの野望 〜宿命の対決〜
 

                             第7話


   
   「・・・・そういえば、エドワードちゃんは?」
   いつもなら、ロイを見送るため、この時間は玄関にいるはずのエドワードが、
   今朝は姿が見えない事に、ホークアイは訝しげな声を上げる。
   「ああ、エディなら、二階でフェリシアと共にいるよ。昨日から、あまり部屋から出ない
   ようにさせているから。」
   「・・・・・准将。エドワードちゃんを監禁しているんですか?」
   いくらなんで、やりすぎではと、非難を露わな目を向けるホークアイに、ソフィアは、
   溜息をつく。
   「こればかりは仕方ないのよ。なんせ、あの非常識が服着て歩いているような、
   父ですもの。どんな手を使ってくるか・・・。今はお父さんに見ていてもらっているの。」
   「・・・・・ですが、エドワードちゃんの性格から言って、そろそろ監禁も限界なのでは・・・。」
   あの元気の塊のようなエドワードが、大人しく部屋にいるのは無理なのではと、心配そうな
   ホークアイに、ロイはフフフ・・・・と不気味な笑みを浮かべる。
   「その点なら、心配無用だ。我々が代わる代わる相手をしているし、フェリシアの事も
   ある。それに、何よりも、錬金術の本、しかも発禁本を部屋の中に所狭しと置いてある。
   流石のエディも当分、二階に入り浸る事間違いな・・・・。」
   「あっ!!やっぱり、大尉だ〜!!」
   胸を張って力説するロイの背後から、嬉々としたエドワードの声を聴いて、その場にいた
   三人は、一斉に声の方へと振り向いた。
   「エドワードちゃん?」
   どこが、二階に入り浸っているんですかと、ジロリとロイを睨みつけるホークアイに、
   ロイは咳払いをすると、トテトテとやってくるエドワードをギュッと抱き締めた。
   「エディ。外は風邪が蔓延しているから、部屋から出ては駄目だと言っただろう?」
   そんなロイに、エドはプクーッと頬を膨らませる。
   「大丈夫だって!俺、そんなにヤワじゃないし。絶対に風邪なんかひかない!!つうか、
   何で一階すら来ちゃいけないんだよ!!」
   「でもね、エドワードちゃん。一階は二階と違って、色々な人が出入りするでしょう?
   二階よりも一階の方が風邪のウィルスは、蔓延していると思うの。もしもエドワードちゃんが
   風邪をひいてしまったら、私悲しいわ・・・・。」
   頼りにならないわね!!と内心息子に悪態をつきながら、ヨヨヨとソフィアはハンカチで目を
   そっと拭うフリをする。
   「お・・・お義母さん・・・。そんなに俺の事を・・・・・。」
   ポッと嬉しそうに頬を紅く染めるエドに、自分もとばかりにホークアイは必死にアピールする。
   「そうよ!エドワードちゃん!!外は今大変な騒ぎなの!絶対に外へ出ては駄目!!
   私、今日は心配で様子を見に来たの。」
   ガシッとエドの手を握りしめるホークアイの言葉に、エドはエッと驚きの声を上げる。
   「そんなに大変なのか!?じゃあ、ロイ、急いで出勤しないと!!」
   慌てるエドに、ロイはにっこりと微笑む。
   「いや、今回の件は私ではなく、別の人間が指揮を取っているから大丈夫だよ。」
   「でも・・・・。軍は今大変なんだろ?本当に行かなくていいのか?」
   納得がいかないエドに、今度はホークアイが畳み掛けるように言葉を繋げる。
   「ええ!こういった事は、専門の人間がいるかエドワードちゃんは心配しなくても大丈夫よ!」
   「・・・なら、いいけど・・・・。」
   納得はしないが、姉と慕うホークアイの言葉に、エドはそれが嘘だとは微塵も疑わない。
   「そうそう、今日はこれで私も非番なのよ♪」
   夜勤だったからね〜と微笑むホークアイに、ロイはギョッとする。
   「ちょっと待ちたまえ!一体・・・。」
   何を言い出すのかと、慌てるロイを、ホークアイは鋭い眼差しで黙らせる。
   「そうなのよ!折角だから、これから一緒にお話でもしましょうと、誘っていたのよ。
   三人でお喋りって、久しぶりよね〜♪」
   怯むロイを尻目に、ソフィアもホークアイに便乗するように、捲し立てる。
   そして、ホークアイとソフィアはエドの両脇をガッシリと固めると、さり気なさを装いながら、
   エドを二階へと導く。
   「・・・・三人って、私は無視か!?」
   ムッとして三人の後を追いかけようとするが、ピンポーンというチャイムの音に、ロイは
   嫌そうな顔で振り返る。
   「・・・・・誰だ。」
   「俺ッス!!」
   不機嫌も露わなロイの声に、ハボックの能天気な声が聞こえた。
   「・・・・ハボックか。今日は私もホークアイ大尉も有給だ。そう手配するように。」
   溜息をつきながら扉を開けるロイに、ハボックはへっ!?と咥えていた煙草を落とす。
   「・・・・聞こえなかったのか?」
   不機嫌なロイに、ハッと我に返ったハボックは、燃やされては叶わないと、ブンブンと
   首を横に振った。ロイが自分だけでなく、ホークアイまで有給をと言っているのは、
   ホークアイ公認だと言う事。つまり、この命令を遂行しなければ、自分はホークアイに
   よって、蜂の巣になってしまうと、頭の中で弾き出したハボックは、慌てて敬礼をする。
   「イ・・・イエッサー!!マスタング准将とホークアイ大尉の有給申請をしておきます。」
   「うむ。」
   満足そうに頷くロイに、このままグズグズしていては、消し炭になってしまうと、ハボックは
   慌てて踵を返しかけたが、ふと思い止まって、ロイに向き直る。
   「そうだ!准将。お客様みたいですよ。さっき、門の前にいたので、お連れしました。」
   「客・・・・・?」
   訝しげなロイが、ハボックの後ろに佇んでいる二人組に気づくと、スッ目を細めた。
   「・・・・・・来たか。」
   「やぁ!久しぶりだね♪ロイ!」
   厳つい顔をした老人の背後で、ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべた青年が、薔薇の
   花束片手に、手を振っていた。
   
   
   
  

   
   


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