「嫌だ・・・・。嫌だよぉ・・・。ロイ〜・・・。」
エドの脳裏に、先ほど、突然現れたロイの姿が
浮かび上がる。
きっと、別れ話を言うために、自分を探しに来たのだと
エドは、先ほどから流れ落ちる涙をそのままに、
両足を抱き締めるように、路地裏に座り込んでいた。
「エディ!!」
その声に、ハッと顔を上げると、肩で息をしている
ロイの姿を見つけ、エドは苦痛に顔を歪ませる。
別れるつもりなら、自分なんてほっといてくれれば良いのに。
エドの中で、急速にロイへの不満が高まる。
「エディ・・・。良い子だから・・・・。」
なるべく刺激しないようにというロイの気遣いは、
逆効果に終る。まるで小さな子どもに言い聞かせるかのような
ロイの言葉に、エドは自分は最初からロイに本気で
相手にされていなかったのではという、疑念を抱かせるには
十分だった。
「ロ・・ロイの馬鹿〜っ!!!」
パンと両手を叩くと、エドは両方の手の平を地面に置く。
練成反応の光が光ったと思った瞬間、ロイ目掛けて、
地面から突起物が練成される。
「クッ!」
間一髪で避けたロイに、さらに追い討ちを掛けるように、
エドは、素早く大砲を練成すると、躊躇する事なく、
ロイに向けて発砲する。
ドドドーーーーーン
これも、無理な体勢ながらも、間一髪避けることに成功する
ロイに、エドは可愛さ余って、憎さ10000倍とばかりに、
間髪入れずに大砲を連射する。
「好い加減にしないか!エディ!!」
エドの猛攻に、流石のロイも怒りが込み上げてくる。
ロイは発火布で作られた手袋をした右手を、
エドの大砲に向けて、パチンと指を鳴らす。
「うわぁああああ!!」
「エディ!!」
手加減したものの、爆風で吹っ飛ぶエドの姿に、
ロイは慌ててエドに駆け寄ると、倒れているエドを
抱き起こす。
「大丈夫かっ!エディ!!!」
ぐったりと眼を閉じたエドを、ロイはきつく抱き締める。
「・・・・っく・・・・。」
腕の中で身じろぎをするエドに気付き、
ロイは、ハッとなってエドの顔を覗き込む。
「エディ?」
「・・・・なんか・・・・。」
「しっかりしろっ!エディ!!」
「大佐なんか、
大っ嫌いだーっ!!!」
エドは、そう叫ぶなり、大佐を突き飛ばすと、
泣きながら、駆け出していく。
「待ちたまえ!エディ!!!」
慌ててその後を追うロイ。そして、ロイの姿が見
えなくなった途端、今まで恐怖のあまり、家の中に
非難していた、町の人達が、恐る恐る家から出てくる。
「一体、何がどうなっているんだ?」
彼らが見たものは、ほとんど半壊に近い、町の状態だった。
「こ・・・ここまで来れば・・・・・。」
肩で息をしながら、エドは、既に使われなくて久しい、
金の採掘場の中に来ていた。
「もう・・・勘弁してくれよ・・・・・。」
そして、壁に背を預けるようにして、エドは
座り込むと、膝を抱えて泣き出した。
「・・・・・・・・追い駆けっこは、もう終りかい?
エディ?」
ハッと顔を上げると、ロイが入り口に立っていた。
「ロイ・・・・・・。」
逆光でロイの表情が見えない分、ロイの心が見えず、
エドはどうしていいか分からず叫ぶ事しか出来なかった。
「来るなーっ!!こっち来るなーっ!!!」
「エディ・・・・。」
決して声を荒げた訳ではないが、ロイの言葉に、
エドはロイの怒りを感じ、一瞬動きを止める。
「話しを聞いてくれ。」
「・・・・・俺に話はない。」
俯くエドに、ロイはゆっくりと一歩ずつ近づきながら、
懇願するように切ない声で言う。
「君になくても、私にはある。」
「・・・・結婚するんだろ?」
エドの言葉に、ロイの歩みが止まる。その態度で、
自分の言葉が真実なのだと気付き、エドは
自嘲気味に言葉を繋げる。
「別れてやる・・・いや、もともと付き合ってなかった
訳だし・・・・・。」
自分で言った言葉に、エドの心は切り刻まれて血を
流す。1年前、ロイに告白された。でも、自分は
賢者の石を探すという目的の元、旅から旅の生活で、
ロイに会うのも、数ヶ月に一回の状態だ。果たして、
そんな状態で、付き合って言えるのかどうか、
甚だ疑問だ。
“それでも、告白されて嬉しかったんだよ・・・・。”
自分はこんなにもロイの事を愛している。
今回の件は、自分の一人よがりだったのだと、
付きつけられた気がして、エドはショックのあまり、
目の前が真っ暗になる。
「・・・・・付き合ってなかった・・・だ・・・と・・・・?」
自分の事で精一杯だったエドは、低く呟かれた言葉に、
一瞬反応が遅れた。
「ロ・・・イ・・・・?」
のろのろと顔を上げると、怒りのオーラを纏った
ロイが、すぐ目の前に来ていた。
「君は・・・・・。」
ロイはエドの両手を壁に縫い合わせるように手首を掴む。
「ロイ・・・・離して・・・・・。」
表情が見えない分、ロイの感情を無くした声に、
エドの心に恐怖が湧き上がる。だが、そんなエドの様子を
気にした風でもなく、ロイはエドの手首を掴んだ手に、
更に力を込める。
「痛いっ!ロイ!ロイ!!離して!!」
パニック状態のエドの身体に覆い被さるように、ロイは
エドの首筋に顔を寄せると、耳元で囁く。
「私から逃げられるとでも?」
ククク・・・と笑うロイに、エドは更に恐慌状態に
陥って、足をバタバタ動かす。
「い・・・嫌だーっ!!」
エドの絶叫が、採掘場内を響き渡る。
その悲痛な叫びに、ロイはハッと我に返ると、
腕の中の愛しいエドの顔を覗き込む。
「・・・っく・・・・ひっ・・・・っく・・・・。」
きつく眼を閉じて、泣いているエドの姿に、
ロイの心の中に、罪悪感が生まれる。
「エディ・・・・。聞いてくれ。」
まるで、壊れ物を扱うように、そっとエドの
身体を抱き締める。
「私が愛しているのは・・・・・。」
ドォォォオオオオオオン
ロイの言葉を遮るように、採掘場内に音が響き渡り、
次の瞬間、頭上から岩が降ってきた。
「危ない!」
とっさに、ロイはエドを庇うように、エドを腕の中に
きつく閉じ込める。
「一体・・・何が・・・・。」
全てが収まり、土埃が舞う中、エドが身体を起こす。
自分達から、そう離れてない場所に、巨大な岩が
落ちているのに気付き、エドはぞっとする。
そう言えば、ラッセルが採掘場の地盤が緩んでいて、
落石の危険性があるから、絶対に近づくなと
言われていた事を思い出す。
「危ないとこだった・・・・・。」
ほっと安堵の溜息をつくと、重要な事に気付き、
慌てて辺りを見回す。
「ロイ!ロイッ!!!」
土埃のせいで、視界が悪く、ロイの姿が見えない。
焦ったエドは、立ち上がろうとして、自分の腕を掴んでいる
手に気付く。
「ロイ!!」
喜び勇んで、ロイの身体を起こそうとしたが、
ロイが血まみれな事に気付く。
「ロイッ!ロイ!!」
このままロイが死んでしまうのではないかという恐怖に、
エドは泣きながら、ロイの名前を叫ぶ。
「エ・・・ド・・・・・?」
ロイの声に、エドは泣きながら何度も何度も頷く。
「良か・・・・った・・・・・。君が無事で・・・・・。」
無事な方の右手を伸ばし、エドの頬に触れるロイに、
エドは泣きながら、ロイの手を握り締める。
「あんた、馬鹿だよ。何で俺なんか庇った・・・・。」
溢れる涙を、ロイはそっと拭うと、微笑む。
「決まって・・・・いる・・・。私は・・・・・
君を・・・・君だけを・・・・・愛している・・・・・。」
「ロイ・・・・・。」
「信じて・・・く・・・れ・・・・。」
ロイはそう言うと、力尽きたのか、そのまま
気を失ってしまった。
「ロイ!ロイ!!ロイー!!!」
エドの悲しい絶叫が、採掘場の中を響き渡った。
エドの知らせを受けて、ホークアイとハボックが
ゼノタイムの唯一の病院へやってきたのは、
そろそろ夜が明けるかの時間だった。
「エドワード君!!」
手術室の前にある長椅子に、まるで壊れた
人形のような無表情のエドに気付き、ホークアイは
声をかける。
「・・・・・・・中・・・・尉・・・・?」
多分、ロイのコートだろう。血だらけのコートを
ギュッと抱き締めながら、ゆっくりと顔をホークアイに
向ける。
焦点の合わない虚ろな瞳のエドに、
気付いたホークアイは、エドの正面に回り、
屈み込む。そして、パチンと音を立ててエドの両頬を
挟むようにすると、じっとエドの瞳を凝視する。
「!!」
「・・・・正気に戻ったようね。エドワード君。」
ホークアイの厳しい目に、エドは堪えきれずに、
ポロポロと涙を流す。
「俺・・・・俺のせいで・・・ロイが・・・・・。」
ホークアイは、優しくエドの身体を抱き締めると、
労わりを込めた声で言った。
「良く、1人で頑張ったわね・・・・・。」
その時、手術中のランプが消え、ハッとエド達は
手術室の扉を凝視する。
「ロイ!!」
ストレッチで病室の方へ運ばれるロイの後に、執刀医が出てきた。
「先生。大佐は・・・・。」
真っ青な顔のエドを支えながら、ホークアイは医者に
尋ねる。
「命に別状はありません。頭や左腕の傷も1ヶ月もすれば、
元通りになるでしょう。ただ、頭を打っているので、
後日精密検査をしてみますが。詳しい事は、別室で
説明致しましょう。」
医者の言葉に、ホークアイは頷くと、エドに声を掛ける。
「私は先生の聞いてくるわ。エドワード君は、
大佐に付いててあげてね。ハボック少尉、後をお願いします。」
そう言うと、ホークアイは医者に着いてその場を離れて行く。
「・・・・・・・・。」
無言のまま俯いているエドに、ハボックは溜息をつくと、
クシャリとエドの頭を掻き回す。
「それじゃあ、行こうぜ。大将。」
その場を離れようとしないエドを、半ば無理矢理引き摺る
ようにして、ハボックはロイのいる病室へと足を
向けた。
「大将?」
病室の扉の前で、ピタリと止まったエドに、
ハボックは、訝しげな声を出す。
「俺・・・俺、やっぱロイに会えない・・・・。」
ますます俯くエドに、ハボックは、フッと微笑むと、
廊下にある長いすに、エドを座らせ、自分はその
隣りに腰を降ろす。
暫く何も話さずにいたのだが、やがて、ポツリと
ハボックは呟く。
「今、イーストシティで噂になっている、大佐の
事なんだけどな。」
ハボックの言葉に、エドはピクリと反応する。
「ありゃ、半分デマだからな。」
「半分?」
驚いて、ハボックを見るエドに、ハボックは淡々と
語り出す。
「大佐が花束に10万センズ出したってのは、
本当だ。」
「・・・・・やっぱり・・・・・。」
見る見るうちに涙を流すエドに、ハボックは、
ガシガシと頭を掻く。
「ただし!女に貢いだって訳ではないぞ。」
「それって、どういうことなんだ?」
エドの問いに、バツが悪そうにハボックは顔を
歪める。
「大佐の噂の前に、イーストシティにある噂が、
まことしやかに囁かれた。」
「それとこれと、どういう関係が・・・・。」
話の展開についていけず、エドは不服そうに
頬を膨らませる。
「いいから、黙って聞け。その噂ってのは、
東方司令部に、夜になるとあるはずのない、
13番目の倉庫が現れるって奴だ。そして、
その倉庫には、幽霊が現れると、
イーストシティ中に噂になってしまってな。
真相解明の為、大佐と俺達で夜中に倉庫を
調べに行ったんだよ。そしたら、骨を
発見してしまってな。」
「そ・・・そんな・・・・。」
驚愕するエドに、ハボックは笑いかける。
「埋葬して、花束まで供えたんだが、
実は、その骨はブラックハヤテ号が、
埋めたおやつの骨だって、後で分かって、
もう、焦ったのなんのって。」
ゲラゲラ笑うハボックに、エドは鳩が豆鉄砲を
食らったかのように、唖然となる。
「花束代を経費で落とそうとして、ホークアイ中尉に
見つかってさ、結局自腹切る事になったんだが、
俺ら、金ねえし。で、大佐が払ってくれたって訳。」
ハボックは肩を竦ませた。
「大佐の結婚説を否定しようとしたんだが、そうすっと、
どうしても、動物の骨を人骨に間違えた、間抜けな
軍人ってのがバレてしまうだろ?
人の噂も75日って言うし、黙ってたら、どんどん噂に
尾ひれがついて、で、大将達が来たって訳。」
分かったか?ん?とハボックが言うと、エドは、
泣きそうな顔で呟いた。
「でも、俺見たんだ・・・・・。」
ハボックは、エドの頭をグシャグシャに掻き回す。
「バーカ。そりゃあ、ホークアイ中尉だ。」
「ロイ、中尉と結婚するの・・・・・?」
見る見るうちに涙をポロポロ流すエドに、
ハボックはゲラゲラ笑い出す。
「そんな訳・・・・・・。」
「そんな訳ないでしょう?エドワード君。」
ハボックの声を遮る声に振り向くと、そこには、
ホークアイが呆れた顔で立っていた。
「あの日、私は午後からの出勤だったの。」
ゆっくりとエドに近づくホークアイに、エドは
居たたまれなくなって、顔を背ける。
「宝石店の中に、執務中であるはずの大佐の
姿を見つけて、強制連行していたところだったのよ。」
ホークアイは、エドの顔を覗き込むと、
にっこりと微笑んだ。
「でも・・・・・。」
やはり、指輪の件も本当だったのだ。ホークアイが
相手ではないことは分かったが、ロイの結婚疑惑が
消えた訳ではない。エドは、苦しそうに眉を寄せると、
小声でボソボソと呟いた。
「・・・・・・・俺、ロイにもう会えない。」
「エドワード君?」
てっきり誤解が解けたのだと思ったホークアイは、
エドの言葉に、眼を見開く。
「・・・・・・大将。」
暫く、じっとエドとホークアイのやり取りを黙って見ていた
ハボックだったが、落ち込むエドに声をかける。
「大佐を信じてやってくれ。」
その言葉に、ハッとエドは顔を上げる。
「大佐な、骨が見つかった時、真っ先に埋葬したんだ。」
ハボックは、穏やかに微笑みながら言う。
「そん時改めて思ったね。俺は、いや、俺達はこの人に命を
預けようってな。」
人の心の痛みが分かるロイだから、皆は着いて行く。
「大将だってそうだろ?」
愛されているから愛したのではない。ロイだから愛したの
だろうと問われ、エドはハッとした顔になる。
「エドワード君。」
「大将。」
ホークアイとハボックに促され、エドはコクリと頷くと、
意を決して、個室の扉を開いた。
「ロイ・・・・・。」
そっと声を掛けるが、まだ麻酔が効いているロイは、
静かに眠ったままだ。エドは、手にしたままの
ロイのコートを椅子の背に掛けると、
静かに横になっているロイの顔を、エドは恐る恐る覗き込む。
痛々しいまでの頭と左腕の包帯に、エドは顔を歪ませると、
俯いた。
「・・・・・ごめん。ロイ・・・・。」
そっと、左手を取ると、両手で握り締め、涙で濡れた瞳を
ロイに向ける。
「ロイに怪我させるなんて・・・・・。俺、ホントにガキで・・・・
ロイに・・・・相応しくない・・・・・。」
堪え切れず、エドの瞳から、一筋の涙が流れ、
ロイの左腕に落ちる。
「・・・・・・でも、俺ロイが好き・・・・・。」
例え、ロイに嫌われても、自分の想いを消す事は出来ない。
ぎゅっとエドはロイの手を握り締める。
「・・・・・私も、エディが好きだ。愛している・・・・。」
その声にハッと我に返ってロイを見ると、穏やかに微笑んでいる
ロイと目が合う。
「ロ・・・イ・・・・・。」
「エディ。泣かないでくれ・・・・。」
ロイは右手でエドの涙を優しく拭う。
「・・・・エディ。私のコートのポケットに入っているものを、
ここに持ってきてくれないか?」
ロイの言葉に、エドはコクンと頷くと、ロイのコートに手を伸ばす。
コートのポケットから、ラッピングされた、手のひらに乗る小さな
小箱を、ロイの枕元へ持ってきた。
「これ・・・?」
「ああ・・・・・。それを開けてくれないか?」
真剣な表情のロイに、エドは困惑しながらも、ラッピングを
外すと、小箱を開ける。
「ロイ!!これ!!」
中に収められた指輪に、エドは驚く。
「勿論、君のものだ。」
ロイは動く右手でエドの左手を握り締める。
「左の薬指に嵌めて欲しい。」
「それって・・・・それって・・・・・。」
涙を流すエドに、ロイは真剣な表情で告げる。
「ずっと、私の側にいて欲しい。愛している。」
「ロイ・・・・でも・・・俺・・・・・。」
眼を反らすエドに、ロイはさらに言葉を繋げる。
「勿論、賢者の石を探すなとは言っていない。
ただ・・・・、1年前、半ば罠にかけるようにして、
君と恋人同士になった。」
その言葉に、エドはキョトンとなる。
「何言って・・・・?」
ロイは苦笑すると、ぎゅっとエドの手を握り締めながら、
「・・・・それでも、私はどんな手を使おうとも、
君が欲しかった。」
「ロイ・・・・・。」
そんな事ないと、エドは首を横に振る。自分もロイが
好きだったのだ。ロイに告白されて、すごく嬉しかったの
だと言うエドに、ロイは嬉しそうな顔をする。
「だから、今年のバレンタインは、きちんと君に私の想いを
告げようと思ったんだ。」
ロイは指輪を手に取ると、器用に右手だけでエドの
左の薬指に指輪を嵌める。
「例え、身体は離れていようとも、何時でも私は君と
共にいる。その証だ。」
そして、指に嵌めた指輪に軽くキスをする。
「ロイ・・・・・。本当に、俺でいいのか?
俺、すごくガキで、1人で勘違いして、勝手に怒って・・・
それから・・・それから・・・・・。」
泣きじゃくるエドに、ロイはグイと掴んだエドの左手を
自分の方向へ引き寄せる。そして、自分の胸に
倒れ込むエドに、幸せそうな笑みを浮かべる。
「私には、そんなエディが必要なんだ。」
「ロイ・・・・・。」
「エディ、OKなら、君からキスをしてくれないか?」
その言葉に、エドの顔が真っ赤になる。
「なっ・・・!!!」
「駄目なのかい?」
悲しそうなロイの顔に、エドは顔を真っ赤にさせながらも、
ロイの望み通り、自分からロイにキスを贈る。
「ありがとう。エディ。」
「俺の方こそ・・・・・・・・・。あーっ!!!」
いきなりのエドの絶叫に、ロイは驚く。
「どうかしたのか?」
「どうしよう。俺・・・俺・・・・・。」
どんどん落ち込んで行くエドに、ロイはそっと
その身体を抱き締める。
「エディ?」
「俺、今年こそロイにチョコを贈ろうと思って・・・・。
荷物、アルに預けたまんまだ・・・・・。」
それに、バレンタインを過ぎてしまったし・・・・と、
しゅんとなるエドに、ロイは苦笑する。
「エディ。お互いの気持ちさえ通じ合えばいいと
思うのだが。でも、君がどうしても、気にすると言うのなら、
私が退院したら、もう一度やり直すと言うのは、
どうかね?」
「うん。・・・・・ごめん。ロイ。」
「エディ、こういう場合は、謝罪より、聞きたい言葉が
あるのだが?」
クスリと笑うロイに、エドは幸せそうな笑みを浮かべて、
ロイの頬に軽く唇を寄せる。
「ありがとう。ロイ。大好きだよ。」
それから、1ヶ月後、無事退院したロイは、エドと共に
イーストシティに戻った。そして、二人のラブラブ振りに、
東方司令部の面々が、毎日砂を吐くのは、
また別のお話。
FIN