Stay by my side 〜陽だまりの中で〜
             序章  猫エド編




気がつくと、俺はたった一匹だった。
あの優しい母親も何人もいた兄弟もいなくて、
俺は一匹で途方に暮れた。最初の2・3日は誰から
来てくれるかもと、じっと待っていたのだが、空腹で
動けなくなった頃、漸く自分は捨てられたのだと自覚した。
どうして・・・・。
どうして・・・・。
どうして捨てるんだよ・・・・。
俺、何かしたか・・・?
ねぇ。
誰か・・・。
誰か来てよ・・・。
お願い。
誰か側に・・・・。
運悪く降り出した雨に、急速に体温を奪われ、
俺はだんだんと意識が遠のくのを感じた。
ああ、このまま死んでしまうのかな?
でも、どうせ死ぬなら、こんな一人ぼっちじゃなくて、
誰か側にいて欲しかった・・・・。
お母さん・・・・。
怖いよ・・・・。

やばいな。だんだんと意識がなくなってきた。
これで・・・終わり・・・?
そんな時、ふと何かの気配を感じて、最後の力を
振り絞って眼を開けてみる。
何だ人間か・・・。
漆黒の闇のような黒い髪の毛に黒い瞳をした人間。
俺をこんなところに置き去りにしたのも人間。
人間なんて・・・・大ッ嫌いだ・・・・。
俺は悲しくなって眼を再び閉じると、次の瞬間、
暖かい腕に抱きこまれた。
ほえぇ?何だ?
でも、再び眼を開ける気力がない。
でも、この腕の中は温かい。・・・・大好き。
こんな温かい腕の中で死ねるなら、生まれてきて
良かったと思えるから不思議だ。俺をこんな状況に
追いやったのは人間なのに、その人間の腕が
心地よいなんて・・・・。俺って変だ。



それからが大変だった。何か熱い水に浸けられるは、
前足がチクリと痛むし、なんか色々なところを触られたりと、
グッタリとしたけど、最後に温かい手が頭を撫でてくれて、
それだけでどん底だった気分が上昇するから不思議。
本当に、なんて温かい手なんだろう。気持ちよくて、
安心する・・・・・。
「君は今日から私の家の子になるんだよ。」
夢うつつで、そんな声が聞こえた。
私の家の子?
それって、ずっと一緒にいてもいいってこと?
捨てたりしない?
聞きたいけど、人間の言葉が話せないし、
それにまだ眠い・・・・。
「エドワード・・・ではあからさますぎるな・・・。
エドでどうだい?」
エド?
それって俺の名前?
前にお母さんが言ってた。
人間に名前をもらえたら、その人間と一緒にいられるって。
じゃあ、俺はこの人と離れなくてもいいんだよ・・・ね?
もう寂しい思いをしなくてもいいんだよね。
すごく嬉しくて、人間に擦寄った。
「今日からよろしく。エド・・・・。」
うん!宜しく。まだ眠いから眼を開けられないけど、
起きたら真っ先に言うよ。大好き!これから宜しくって!!





**********************
ロイと猫エドの出会い編です。猫エド視点。