Stay by my side 〜陽だまりの中で〜
      序章  犬のタイサ編




何かが光っている・・・・。
その光が何なのか、知りたくて、私はその光に近づいた。
最初は、ただの好奇心だった・・・・。
それが、私とご主人のエドワード・エルリックとの出会いだった。


「タイサ〜。今日も、大佐に出会えたよ〜。」
学校というものから帰ってきたご主人は、毎日の出来事を
私に話すのが、日課になっていた。それは、まぁいいことだ。
私のいない時間、ご主人が何をしているのか、気になって
仕方がないのだから。だが、一番気に食わないのは、
ご主人の口から「大佐」という言葉が出るたびに、
私にいいようもない不快感が襲ってくることだ。
明らかに、私の名前と同じなのに、違う響きで呼ばれる
「大佐」という言葉に、私は面白くもなく、フイと横を向いた。
「どうした?具合でも悪いのか?タイサ?」
途端、心配そうに私の顔を覗き込み、名前を呼んでくれる
ご主人に、心の中が暖かくなって、ペロリとご主人の頬を
舐める。
「ちょっ!くすぐったいよ!タイサ!!」
クスクス笑うご主人に、私は面白くなって、さらにペロペロと
舐める。私とご主人との至福の時間。だが、直ぐにそれが
破られる。
「姉さん〜。お帰り〜。一緒にオヤツを食べようよ!」
来たな。我が天敵、アルフォンス・エルリック!そう、
エルリックと、ご主人と同じファミリー・ネームを持つこいつは、
ご主人の弟だ。本当に、ご主人と血を分けた姉弟なのかと
思うほど、腹黒い。私を飼う事を真っ先に反対したのは、
この弟。そして、未だに反対しているのも、この弟なのだ。
「ほら〜。アルも一緒に食べたいって!」
アルフォンスは、そう言うと、自分の足元に纏わりついている
金色の毛並みの子猫を抱き上げて、ご主人の目の前に
差し出す。どうやら、私を離して、猫を抱けという事らしい。
私はご主人と離れたくなくて、ご主人の腕の中で縮こまる。
「アルフォンスに、アル、只今。」
ご主人は、右手で猫のアルの頭を撫でる。途端、猫のアルは、
うっとりとした顔でご主人に笑いかけた。
その顔を見て、私はますますご主人に身体を摺り寄せる。
私は知っている。この猫のアルも、私のご主人を好きだと
言う事に。隙あらばご主人の膝枕で眠っている事も、
何度も見た。もっとも、その度に、私はそれを邪魔しているが。
勝敗は、今のところ、私の方が若干勝っているというところか・・・・。
「さぁ、行こうね!タイサ!」
ニコニコと笑いながら、ご主人は、私を抱いたまま部屋を出る。
途端、悔しそうな顔をする猫1匹と人間1人に、私は勝ち誇った
笑みを向けた。フッ。私に勝とうなど、100年早い!
このご主人は、私のものだ。私が彼女を守る!
そう、心の決めたのだが・・・・・。
それから直ぐに、犬生最大の天敵と出逢う事になるとは、
思いも寄らなかった。



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今回は、犬のタイサ編です。一人称って、書きづらい。
それも、今回で終わりですけど。
さて、お待たせしました。いよいよ次回から第1話になります。
お楽しみに!!
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