Stay by my side 〜陽だまりの中で〜 
            第10話  青い空の下で



   「何なんだよ!あの犬はっ!!」
   猫エドは、怒りも露に部屋の中を歩き回る。
   「犬って、タイサのこと?」
   ここ数日、すっかりと猫アルと兄弟の絆を
   確かめ合った
   猫エドは、今日はアルフォンスの部屋で、
   猫アルとまったりと過ごしていた。
   「タイサ以外に犬がいるか!?第一、何で
   あんなに意地悪なんだよ!!俺、青色嫌い
   なのに、いっつも青色の玩具を俺に見せるん
   だぜ!!」
   猫エドの言葉に、猫アルはここぞとばかりに、
   悲しそうな顔をする。
   「そうなんだよ!ボクもいつも苛められて・・・・・。」
   演技かかった猫アルの言葉に、純粋培養の
   猫エドは簡単に引っかかる。
   「アル!なんて可哀想な!!よし!ここにいる間は、
   俺がアルを守るからな!!」
   安心しろと胸を張る猫エドに、猫アルは兄さん〜!!
   と無邪気な振りして業と抱きつく。
   「くすぐったいぞ!アル!!」
   クスクス笑い出す猫エドに、猫アルは、さらに猫エドの
   身体をペロペロと舐める。
   「・・・・・そこまでだ。」
   途端、不機嫌そうな声が振ってきたと思ったら、
   猫アルの身体が宙に浮く。
   「なっ!!タイサ!!アルを離せ!!」
   途端、猫エドが食って掛かるが、犬のタイサは
   小馬鹿にしたような笑みを浮かべると、猫アルを
   咥えたまま、部屋の外へと出て行く。
   「オイ!待てよ!!」
   慌てて猫エドが追いかけようとして、直ぐにその場に
   固まる。
   「なっ!!なんで!!」
   いつの間にか、猫エドを取り囲むように、青色の玩具が、
   所狭しと置かれている状況に、猫エド顔から表情が
   消える。
   「どうした?追いかけてこんのか?」
   猫アルを適当な部屋に放り込んで戻ってきた犬の
   タイサは、部屋の中でガタガタ震える猫エドに、意地の
   悪い笑みを浮かべて挑発する。
   「う・・・うっさい!い・・今行くから、そこを動くな!!」
   生来の負けん気を発揮するも、魂の奥底にまで刻まれた
   恐怖心が消し去る訳もなく、猫エドはただ震えて立って
   いるだけだった。
   「フッ。震えているだけか。あの時、血だらけになり
   ながらも、『死にたくない』と立ち上がる根性は立派だと
   思ったが・・・・。買い被りすぎたか。」
   そう言って、今度こそ本当に立ち去ろうとする犬のタイサに、
   猫エドは唖然となる。
   「なっ・・・・。どうしてそれを・・・・。」
   「・・・・お前は一生青色から逃れて俯きながら生きて
   いくのか、それとも、青色の恐怖に打ち勝ち、顔を上げて
   生きていくのか。選ぶのはお前だ。」
   そして、今度こそ本当に出て行った犬のタイサに、猫エドは
   恐怖を忘れて、慌てて後を追う。
   「待てよ!!」
   漸く犬のタイサに追いついた場所は、一階にあるサン
   ルームだった。日差しを背に受けて、犬のタイサの表情が
   見えない。その事に、一瞬猫エドに恐怖を感じさせた。
   「ほう。あの青色を飛び越えてきたか。」
   面白そうにクククと笑う犬のタイサに、猫エドはハッと
   我に返ると、困惑気味に犬のタイサを見つめる。
   「その様子では、恐怖を克服した訳ではないんだな。
   大方、何も考えていなかったんだろう。」
   図星を指され、猫エドは真っ赤になって威嚇する。
   「うっっさい!!見てろよ!絶対に俺は青色を克服
   してみせる!!」
   猫エドの宣戦布告に、犬のタイサはニヤリと笑う。
   「まぁ、せいぜい期待しないで待っていよう。」
   「イヤミな奴!!」
   憤慨して立ち去ろうとする猫エドに、犬のタイサは呼び止める。
   「オイ。空は大丈夫か?」
   「はぁ?何言ってんの?大丈夫に決まっているじゃん。」
   猫エドの言葉に、犬のタイサは穏やかに微笑んだ。
   「そうか。なら、一つクリアーだな。」
   「へ?」
   キョトンとなる猫エドに、犬のタイサはクスリと笑う。
   「青色を克服するのだろ?青い空はクリアー出来て
   良かったな。」
   犬のタイサの言葉に、猫エドはアッと声を上げる。
   「・・・・次は是非これにも慣れて欲しいものだ。」
   そう言って、猫エドに放って寄越したのは、犬の
   タイサの古い首輪だった。
   軍服と同じ青色に、猫エドの顔が引き攣る。
   「まっ、せいぜい私を楽しませてくれ。」
   そう言うと、さっさと部屋を後にする犬のタイサを、
   猫エドはボンヤリを見送る。一匹になった猫エドは、
   恐る恐る犬のタイサの首輪をポテポテと前足で触る。
   「こ・・・こんなもん、俺様に掛かれば大丈夫だ!!」
   何度か前足で突っついていた猫エドは、その内に、
   そろりと首輪を咥えてみる。
   「なんだろう・・・・。すごく安心する・・・・・。」
   緊張していた為か、早々に眠くなってしまった猫エドは、
   身体の下に首輪を置いて、丸くなって寝てしまった。
   「エド君?ここなの?」
   ご飯を作っていたエドは、猫エドの姿が見えなくなった
   事に気づき、慌てて家の中を探し回って、漸く見つけた
   時には、猫エドは幸せそうな顔でスヤスヤと眠っていた。
   「あれ?タイサの首輪・・・?」
   猫エドが大事そうに抱えている首輪に気づくと、エドは
   優しく微笑んだ。
   「そっか・・・苦手を克服しようとして・・・・。偉いぞ!
   エド君。」
   エドは猫エドを抱き上げると、その額に口付けする。
   「お休み。エド君。」
   自分の部屋のエド専用のベットに猫エドを寝かして、
   その傍らに、タイサの首輪をそっと置いたエドは、
   静かに部屋を出て行った。
   「ムニャア・・・・。どうだ!タイサァ・・・・・。」
   青空の下、犬のタイサと仲良く二匹で青い海を
   眺めている夢を、見るのだった。

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うわぁ〜。愛の力〜!!(BYシェスカ)
犬のタイサの愛の力はすごいです。ロイもこれくらい
見習って欲しいです。
猫エドさんが何故海を知っていたかと言うと、ロイの家の
蔵書に写真集があったからです。この写真集が、後に
重要な意味を持ってきます。
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