Stay by my side 〜陽だまりの中で〜 

          第21話   繋がった心



 「何で・・・俺はここにいるんだろう・・・・。」
 気がつくと、猫エドは、エドワードの部屋にいて、
 しかも、先程から、犬のタイサがベッタリと
 引っ付いている。時折聞こえる、カリカリという音は、
 猫アルが、何とか部屋の中に入ろうと、賢明な
 努力をしている最中だった。
 「兄さん〜!兄さん〜!」
 ニャーニャー言っている猫アルの所へ行こうと、
 猫エドは、タイサから身を捩る。
 「離せ〜。タイサ〜。」
 トコトコとタイサから離れようとするが、その度に、
 猫エドは、首をタイサに掴まれて、引き戻される。
 「嫌だ。絶対に離さん!!」
 そう言って、ペロペロと猫エドの頭を舐める。
 「くすぐったい〜!!いい加減に!!」
 必殺の猫パンチをお見舞いしようと、猫エドが、
 後ろを振り返ったのと、タイサが猫エドの頭を
 舐めようとしたのが、同時だった。
 チュッ!
 猫エドは、唇をタイサに舐められ、思わず硬直
 してしまった。
 「積極的だね。エド。」
 そんな猫エドに、タイサは上機嫌で、スリスリと
 擦り寄る。
 「あの・・・さ・・・。タイサ・・・・。」
 ゲンナリとした顔で、猫エドはタイサを上目遣いで
 見上げる。
 「ん?何だ?エド?」
 蕩けるような笑みを浮かべるタイサに、猫エドは
 恐る恐る尋ねる。
 「俺をからかって楽しいの・・・か・・・?」
 「・・・・・・は?」
 ポカンと口を開けるタイサに、猫エドはプイと顔を
 横に背ける。
 さっきはその場の雰囲気で飲まれそうになったが、
 よくよく考えてみれば、この犬はいつも自分に
 対して意地悪をしている。きっとこれだって、新手の
 嫌がらせだ。
 そう思うと、猫エドはポロポロと涙を流す。
 「エ・・・エド!?」
 いきなり泣き出した猫エドに、タイサはオロオロと
 動揺する。
 「どうした?どこか痛いのか?」
 「エッ・・・クッ・・・・タイサなんか・・・嫌い
 だぁあああ・・・・。」
 猫エドの言葉に、タイサは驚きに目を見張る。
 「な・・!!どうして!!」
 あの好き嫌いをはっきりする猫エドが、大人しく
 自分の腕の中にいるのだから、はっきり返事を
 貰わなくても、タイサの中では、自分の想いは
 成就したと思い込んでいた。それが、いきなり
 最愛の猫が泣き出し、なおかつ、自分の事を
 嫌いだと言い出す。何がなんだかわからない
 タイサは、猫エドをギュッと抱きしめると、落ち着く
 までペロペロと身体を労わるように舐める。
 「嫌いだ〜。タイサの馬鹿〜。」
 猫エドは、エグエグ泣きながら、タイサの
 腕から離れようと試みるが、タイサの拘束力の
 前には、ただ縋っているようにしか見えない。
 「エド・・・・私が嫌いなの・・・・か・・・・?」
 一向に泣き止まない猫エドに、タイサは悲しげに
 言う。
 「嫌いだ・・・・。いっつも俺に意地悪するし・・・・。」
 「それは!お前の意識を私に向けて
 欲しくて・・・!!」
 慌てて弁解するタイサに、猫エドはプイと
 顔を横に向ける。本気で怒っている猫エドに、
 タイサはキューンと耳と尻尾が垂れる。
 「すまない。でも、これだけは信じて欲しい!
 私は君を愛している。」
 「嘘だ!!」
 即答する猫エドに、タイサは叫ぶ。
 「嘘じゃない!!何度言えば判るんだ!!」
 一向に自分の言葉を信じようとしない猫エドに、
 タイサもだんだんとイライラしてきて、つい
 怒鳴ってしまう。
 「・・・・だって・・・だって・・・・タイサには・・・
 恋人がいるもん!!」
 再びエグエグと泣き出す猫エドの言葉に、
 タイサは唖然となる。
 生まれてから猫エドに逢うまで、自分は
 主人であるエドワード一筋で、恋人など作った
 事がない。一体、何の事を言っているのかと、
 タイサは恐る恐る尋ねる。
 「エド・・・・?エドワード嬢は、私の主人であって、
 恋人では・・・・・。」
 「だれがエドワードさんの事を言ってるんだ!!」
 シャーッと猫エドに本気で怒られ、タイサは怯む。
 「では、何のことだ?私に恋人など・・・・・君以外
 考えられんのだが・・・・。」
 「ちょっと待て!!いつ俺とアンタが恋人同士に
 なったんだ!!」
 何ドサクサに紛れて、何言ってんだ!と憤慨する
 猫エドに、タイサは真面目な顔で言った。
 「私はそのつもりだ。」
 「・・・・タイサ・・・・。」
 真剣なタイサの表情に、猫エドはピクッと震える。
 「何度でも言う!私は君が・・・・君だけを愛して
 いる!!」
 どこまでも真剣なタイサの姿に、猫エドは再び
 ポロポロ泣き出すと、俯いて呟く。
 「嘘だ・・・・。じゃあ、さっきの・・・犬は・・・・。」
 「さっき?マリアの事か?」
 タイサの口から他の名前を言われて、猫エドの
 胸はズキンと痛くなった。フルフルと丸くなって
 震える猫エドに、タイサはもしかしてと、ニヤリと
 笑う。
 「マリアは、隣に住んでいる犬でね。生まれた
 ときから知っている。」
 猫エドはそれ以上聞きたくなくて、タイサから
 逃げようと試みるが、それよりも前に、タイサの
 腕の中に囚われる。
 「マリアは・・・・・・私の妹だ。」
 「ほえっ!?」
 耳元で囁かれ、猫エドは驚いて顔を上げると、
 嬉しそうなタイサの顔があった。
 「嬉しいよ。エド。嫉妬してくれていたんだな。」
 そう言って、ペロペロと猫エドの頬を舐める
 タイサに、猫エドは暫く放心状態で好きなように
 させていたが、やがて自分の置かれた状況に
 気づくと、真っ赤な顔で暴れる。
 「ぎゃーッ!!離せー!!」
 「照れ屋なんだな。エド!!」
 チュッと再びタイサに口付けられて、猫エドは
 真っ赤な顔で俯く。
 「嬉しいよ。エド。これで私と君は恋人同士
 だ!!」
 スリスリと自分に頬擦りするタイサに、猫エドは
 恐る恐る尋ねる。
 「な・・・何で恋人同士なんだよ。」
 その言葉に、タイサはクスクス笑う。
 「嫉妬するくらい、私が好きなんだろ?エド?」
 「なっ!!自惚れてんじゃねー!!」
 ふみゃああああ!!と日頃ロイを起こす為に、
 さらに磨きがかかった、猫パンチをタイサに
 繰り出すが、あっさりとかわされる。
 「くそーっ!!」
 憤慨する猫エドを、タイサはじっと愛しそうに
 見つめる。
 「愛している。私の恋人になってほしい。」
 「!!」
 真摯なタイサの態度に、猫エドは俯くと、
 ボソボソと呟く。
 「タイサなんか・・・嫌いだ・・・・。いっつも・・・
 いっつも・・・俺をからかって・・・。だから・・・・
 タイサの事考えると、胸がギューッと苦しく
 なって・・・・・他の犬と一緒にいるのを見ると、
 スッゲームカムカするし・・・・・。」
 「エド・・・・・。」
 だんだんと笑みが広がるタイサに、猫エドは
 キッと睨みつける。
 「いっつもタイサの事しか考えられなくなるし!!
 責任とれ!!馬鹿野郎!!」
 叫ぶ猫エドに、タイサは嬉しそうに笑うと、スリスリと
 猫エドに頬を摺り寄せる。
 「勿論!責任を取って、一生君を大切にする!!
 愛してる!!エド!!」
 タイサは、猫エドに優しく微笑むと、ゆっくりと唇を
 重ね合わせた。
 
 




 
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やりました!!とうとうタイサの恋愛成就〜!!
おめでとー!タイサ!!
お祝いの言葉を頂けると、すごく励みになります!!


長い間、ご愛読ありがとうございました。
無事タイサと猫エドが両思いになりましたので、
Stay by my side 〜陽だまりの中で〜は、
今回で最終回になります!!
本当にありがとうございました〜!!







・・・・・・と言ったら殺されますね。某焔の大佐さんに・・・・・。
嘘です。冗談です。
すみません。まだまだ続きます。ヘタレ人間ロイさんの恋愛が
成就するまでお付き合い下さい。(ああ、タイサの甲斐性を
半分人間の方に分けてあげたいです・・・・・。)