Stay by my side 〜陽だまりの中で〜 
     第28話  狼さんと狩人さんの秘密会議



 高らかに笑うロイの額に、ピタリと冷たい金属が
 押し当てられる。言わずもがな、ホークアイの
 愛銃がロイの額にピタリと押し付けられたのである。
 「大佐。エドちゃんをアメストリス学園へ入れたがっている
 本当の理由はなんでしょうか?」
 長年副官をやってはいない。
 ただ単にエドをイーストシティに居させるだけならば、
 何もアメストリス学園でなくとも、当初の計画通りに、
 普通校へ入れれば良いだけの話だ。
 この男、まだ何か隠している。
 そう直感したホークアイは、探るような目でロイを凝視する。
 そんなホークアイに、ロイはニヤリと笑うと、机の引き出しから
 書類を出す。
 「話が早くて助かる。この件に関しては、君の協力が是非とも
 必要なのだよ。」
 ロイの差し出す書類とロイを交互に見ていたホークアイは、
 促されるまま書類に目を走らせる。
 「!!これって!!」
 驚くホークアイに、ロイは真剣な顔で立ち上がると、深々と
 頭を下げる。
 「大佐!?」
 いきなりのロイの行動に、ハボックは驚いて口をポカンと開ける。
 「頼む!!私の恋の成就の為にも、君の力を貸して欲しい!!」
 懇願するロイに、ホークアイは厳しい目を向ける。
 「・・・・・私がそれを承知するとでも?」
 「頼む!君にしか頼めないんだ!!」
 縋るような目を向けるロイに、ホークアイはニヤリと笑う。
 「私が可愛いエドワードちゃんに、無能な男との仲を取り持つと
 思っているのですか?」
 随分見縊られたものですね・・・・。
 フフフ・・・と不気味に笑うホークアイに、流石のロイもムッとする。
 「君は、私のどこが気に入らないのだね?」
 「全部です!エドワードちゃんに相応しい所など全くありませんから。
 女癖は悪いし、仕事はサボるし、上から目をつけられて、左遷させら
 れるは・・・・・。」
 スパッ!グサッ!!ホークアイの容赦ない言葉は、的確にロイの
 急所を射抜く。だが、仮にも国軍大佐。持ち前の諦めの悪さを
 発揮しつつ、何とか気力を奮い立たせると、別方向から攻める事に
 した。これからのエドとの将来を考えると、この目の前の女帝を
 何としても味方につけなければならない。ロイは決意を新たに
 ホークアイをじっと見据える。
 「では聞くが・・・・・・・。」
 ロイは不敵な笑みを浮かべる。
 「君の言うエディの【理想の相手】というのは、どういったものなの
 かね?」
 「少なくとも、14歳年下に一目惚れする、雨の日は無能の
 普段はサボリ魔な変態ロリコン大佐ではないことだけは確かですね。
 まぁ、最低限、エドワードちゃんと年が近く、優しく包容力もあり、
 顔良しスタイル良し性格が素直で・・・・・・。」
 延々と続くホークアイのエドワードの【理想の相手】像を聞きながら、
 ハボックは、あまりにも高水準に、どこにそんな男がいるんだよと、
 内心ツッコミを入れる。
 「ふむ。君の言いたいことは良く分かった。」
 多少引き攣りながら、ロイはホークアイの話を中断させると、コホンと
 咳払いをする。
 「それでは、その【理想の相手】がエディの前に現れたとする。」
 ロイの言葉に、ホークアイはコクリと頷く。
 「それで君は素直にエディをその男に渡せるのかい?自分と全く
 接点もない男に?」
 ロイの言い方に、ホークアイは眉を顰める。一体、この男は何が
 言いたいのだろうという顔で、ロイを見る。
 「・・・・そうなれば、あまり接点のない君とエディの仲は疎遠になって
 しまうかもしれないね。」
 その言葉に、ホークアイは頭が真っ白になる。固まるホークアイに、
 ロイはもう一息だとばかりに、言葉を繋げる。
 「ああ、君の事だ。例え会う機会が極端に、もしくは全く無くなっても、
 エディの幸せを遠くから祈っているだろうね。しかし・・・・・もしも
 エディの相手がこの私ならば・・・・・話は違ってくるが?」
 弾かれたようにロイを凝視するホークアイに、ロイは内心掛かったなと
 クスリと笑う。
 「もしも私とエディが結婚したら、エディは君にとって、上官の妻という
 事になる。今以上に接点が増えると思うが?」
 ロイの言葉に、ホークアイの頭の中で猛スピードで計算が行われる。
 確かに、どこぞの知らない男に取られるくらいなら、この無能な上官と
 くっついてくれれば、自分はエドと一緒にいられる。しかし、だからと
 言って、この男にエドは勿体無い!!鬩ぎ合う感情の葛藤に、ロイは
 駄目押しとばかりにポツリと呟く。
 「私が大総統になった暁には、君をエディ・・・・大総統夫人の護衛官に
 任命しようと思っていたのだが・・・・・・。」
 君なら最愛の妻を守ってくれると信じているよ。とニッコリと微笑むロイの
 言葉に、ホークアイは落ちた。
 「・・・・・それで、私は何をすれば?」
 「君ならそう言ってくれると信じていたよ。」
 ニッコリと笑い合うロイとホークアイ。
 こうして、エドを狙う狼とエドを守るべき狩人は、お互いの利害の一致から
 協定を結ぶべく、握手を交わすのだった。
 (すまん。エド。兄ちゃんはこの2人の暴走を止められそうにねぇ!)
 悪巧みの片棒を担がされる運命にあるハボックは、心の中でエドに
 詫びるが、エドのロイへの恋心を知っている為、阻止しようとは
 思わなかった。ただ、これ以上被害が増えない事だけを祈っていた。
 
 


 
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そろそろヘタレ返上か?