Stay by my side 〜陽だまりの中で〜
第40話 最強主婦
「?何故二人いるんだ?」
伸びている男達に、イズミの眉が潜められる。
「まぁ、いい。害虫は何匹でも、退治するに限る。」
そう言って、イズミは用は済んだとばかりに、
クルリと背を向けると、家の中へ入ろうとするが、
何かが邪魔をして、ドアが閉まらない。
「?なんだ?」
嫌な予感に、イズミが振り返ると、そこには、
先程吹っ飛ばした男が、必死の形相で
足をドアに挟んで、閉まらないようにしていた。
「おまえ!!」
まるで、しつこいセールスマンのように、
ドアの隙間から無理やり中に入ろうとする
男に、イズミは剣呑な目を向けると、男を叩き出すべく、
狙いを定めて男の腹を蹴ろうとするが、
流石に腐っても軍人。素早い身のこなしで、
イズミの攻撃を片手で受け止めると、イズミに
真剣な目を向ける。
「初めてお目にかかります。私はロイ・マスタング。
地位は大佐。東方司令部を預かる者です。」
「変態ロリコン大佐が何の用だ。」
イズミは、両手でドアノブを摑むと、無理やり扉を
閉めようと、力を込める。させじと、ロイは身体を更に
ねじ込んでくる。
「お願いです!エディとの交際を認めて下さい!!」
「ならん!!聞けばお前は国家錬金術師の上、軍人だと
言うではないかっ!!そんな男が姪を幸せに出来るかっ!!」
ギギギギとイズミが懇親の力でドアを引こうとする。
「いいえ!絶対に幸せにしてみせます!!」
ロイも同じくドアノブを摑み自分の方へ引き寄せる。
激しく言い争うイズミとロイの後ろで、ライがハーイと
片手を上げる。
「俺は、一般人の写真家で〜す。国家なんたらどころか、
軍人じゃなりませーん!!」
能天気なライの言葉に、ロイは一喝する。
「うるさい!お前は黙ってろ!!」
そこで、漸くイズミはロイの後ろにいる男が、目の前のロイと
そっくり同じだと気付き、目を細める。
「ほう。双子か。そうか。軍人でも国家錬金術師でもないならば、
お前でもかまわないな。」
まぁ、この際、年は大目に見てやろうと言うイズミに、
ロイはブ千切れる。
「・・・・エディの幸せを、何故あなたが決めるのですか?」
「何?」
低く呟くロイに、イズミは聞きとがめる。
「国家錬金術師だから?軍人だから?愛する人を幸せに出来ない?
ふざけるな!!」
ロイの一喝に、イズミの一瞬力が緩んだ。
それを見逃さずに、ロイは乱暴にドアを開けると、イズミを
押しのけて家の中に入る。
「エディ!!エディ!!いるのだろう?出てきてくれ!!」
声を張り上げるロイに、イズミはギョッとなり、慌てて
ロイを制しようとするが、その前に、ロイは声の限り
叫ぶ。
「エディ!愛しているんだ!!お願いだ。私と結婚してくれ!!」
ロイがそう言い切った時、家の奥からパタパタとスリッパの
音が聞こえ、ロイは目を輝かせる。
「エディ!!」
「あら、誰かと思ったら、やっぱり、マスタングさん。」
ニコニコと微笑みながら出てきたのは、トリシャだった。
「あ・・あの・・・お騒がせしてすみません。ところで、
エディは・・・・。」
つい頭に血が上って、大声でプロポーズをしてしまったが、
肝心のエドが出てこない事実に、ロイはショックを隠しきれない。
もしかして、デリカシーのない男と嫌われたのかと、
シュンとなるロイに、トリシャは申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさい。エドならマスタングさんに用があるって、
さっき東方司令部へ行ってしまったの。」
大人しく待っていれば良かったのにと、残念そうに呟く
トリシャに、ロイは慌てて頭を下げる。
「すみません!私はこれで失礼します!」
エドが東方司令部へ行ったのならば、早く追いかけなければ。
ふと、後ろを見ると、開け放たれたドアの遥か前方に、
既に豆粒くらいの大きさになっている双子の片割れの姿を発見して、
ロイは慌てて走り出した。
「一体、何なんだ。あれは・・・。」
砂埃を巻き上げて、走り去っていくロイの後姿を
呆然と見送っていたイズミは、深い溜息をつきながら、
ガシガシと頭を掻く。
「イズミ姉さん。」
そんなイズミに、トリシャは低い声で呼びかける。
その声に、慌ててイズミが振り返ると、トリシャが
ニッコリと微笑んで立っていた。しかし、二人きりの
姉妹だ。表面上は笑っているトリシャだが、
実は内心怒りに満ち溢れている事に気付き、
イズミは知らずゴクリと唾を飲み込む。
「エドの事で、姉さんにとっても、
すごく大事なお話があるの。」
聞いてくれるわよね?
にーーーーーーーっっこり。
全身怒りのオーラを纏って笑う妹に、
イズミは青褪めた顔で、コクコクと
頷く。
そんなトリシャ達の様子に、思わず傍観してしまった
ハボックはボソリと呟いた。
「もしかして、最強主婦はトリシャさん・・・?」
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ロイ超フライング告白。
そして、最強主婦は実はトリシャさんだというオチ。
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