Stay by my side 〜陽だまりの中で〜
第43話 愛の動物救済大作戦
「何でここに・・・・。」
呆然と呟くロイに、ブラッドレイは、ニヤリと笑う。
「実は、エドワードちゃんに、用があってな。」
「ふえっ!?俺!?」
いきなり名指しされ、エドは眼をパチクリさせる。
「ああ、君に我が軍の一大プロジェクトに参加して
もらいたいのだよ。」
大きく頷くブラッドレイと困惑気味なエドの間に、
ホークアイが立ち塞がる。
「大総統。お言葉を返すようですが、一般人の
彼女に軍の仕事をさせるのは、どうかと思います。」
場合によっては、絶対に許しません!!
軍最高責任者を相手に、一歩も引かないホークアイ。
両者の間で、バチバチと火花が激しく散る。
「一般人だからだよ。彼女の人気の凄さは、
君も知っているだろう?」
フッと笑うブラッドレイに、ロイはムッとして
椅子から立ち上がると、エドを腕の中に抱き締める。
「エディの人気に目をつけたというのか。
一体、エディに何をさせる気だ!!」
自分を睨みつけるロイに、ブラッドレイは眼を細める。
「マスタング大佐。君の意見は聞いていない。
これは、既に決定事項なのだ。それに、これは
最初エドワードちゃんから出された意見なのだよ。」
「エディ!?」
ロイは驚いて、腕の中のエドを見る。
「俺から・・・?もしかして!」
思い当たる事があるのか、エドはハッとなる。
「そうだよ。エドワードちゃん。漸く準備が整ったのだ。」
ブラッドレイは、ゆっくりとエドに近づく。対するロイは、
エドを離すまいと、ますます腕に力を込める。
「エドワードちゃん。君の力が必要なのだよ。
この・・・・。」
そこでブラッドレイは言葉を切ると、エドの眼をじっと見つめた。
「名付けて!【愛の動物救援大作戦V(はぁと)】には!!」
両手を広げて高らかに宣言するブラッドレイに、ロイと
ホークアイはあんぐりと口を開けて驚く。
「あ・・・愛の動物救援大作戦はぁあとぉおおおおおお!?」
何なんだ、そのネーミングのセンスのなさは!!
内心突っ込みを入れるロイとは対象的に、腕の中のエドは、
眼をキラキラさせて喜ぶ。
「すごーい!カッコイイ!!」
「エ・・・エディ!?」
思わず力が緩んだロイの腕から、エドは抜け出すと、
キラキラした眼でブラッドレイと手を取り合う。
「キングおじ様!俺でも力になれるの?」
「ああ!勿論だとも!いや!君にしか出来ないんだ。
一緒に可哀想な動物達を救おうじゃないかっ!!」
オーッ!頑張るぞー!!
握り拳を上げて賛同するエドの様子に、それまで
唖然として事の成り行きを見守っていたロイは、
ハッと我に返ると、コホンと咳払いをする。
「と・・ところで、一体何の話なんです?」
勝手に話が盛り上がっているブラッドレイ達に、
ロイは幾分面白くなさそうに、訊ねる。
「何、エドワードちゃんの発案なんだがね。」
クルリとブラッドレイは首だけロイに向ける。
「最近、セントラルはもとより、この国には、
捨て犬やら捨て猫、果ては動物虐待が横行して
いるのだよ。嘆かわしい事に。」
ハァ〜と溜息をついて首を横に振るブラッドレイに、
そういえば、うちの猫エドも被害にあったと、
当時の怒りを思い出し、ロイの機嫌が一気に下がる。
「なるほど。こんないたいけな動物達を虐待する
輩が、この国にいると・・・。」
「そうなんだ!だから、俺、そういうことが、
早くなくなるようにするには、どうしたらいいかって
思って・・・・。」
大総統に相談したんだというエドに、ロイは
穏やかに微笑む。
「エディ。君の優しい気持ちが、この国に溢れるように、
私も頑張るよ。」
「大佐・・・・。」
見詰め合う二人に、ウォッホン、ウォッホンとブラッドレイが
咳払いをする。
「そこでだ。軍を挙げての動物救済を訴えるキャンペーンを
考えていてな。エドワードちゃんに、イメージガールとなって
もらいたいのだが。」
ブラッドレイの言葉に、エドは飛び上がらんばかりに驚いた。
「イメージガール!?無理!絶対無理!!」
ブンブンと首を横に振るエドの横では、ロイが猫ミミ姿の
エディ・・・可愛い・・・と妄想して、ホークアイに殴られて
いた。
「駄目なのか?何でも協力してくれるって言ってくれたでは
ないか・・・。」
シュンとなるブラッドレイに、エドはウッと言葉に詰まる。
「俺はただ・・・スタッフの一人として・・・。」
「イメージガールも立派なスタッフだ!ということは、
やってくれるのだね!!」
自分の都合の良いように話を解釈するブラッドレイだったが、
それを指摘する人間は誰もいなかった。何故なら、エド以外の
人間は、全員エドがイメージガールになることを
望んでいたからだ。
「君なら、完璧にこなせる。この、写真家【ライト】が保証すると
言っても?」
それまで黙っていたライは、穏やかにエドに微笑みながら言った。
「写真家・・・【ライト】って・・・まさか!!」
【ライト】という名前に、エドはアッと声を上げる。そんなエドに、
近づくと、ライは右手を差し出す。
「改めて、初めまして。エドワード。この計画の責任者の【ライト】
だ。君と仕事が出来るのを、とても楽しみにしていたんだよ。」
可哀想な動物達の為に、頑張ろうねというライの言葉に、
エドは、オズオズと手を差し出す。しっかりと握手を交わす二人に、
ロイは嫉妬に狂った眼をライに向けるのだった。
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